抜き身に気を付けて

□#17
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いつも通り遅刻ギリギリ、深いため息と共に着席した。
じんわりと浮かぶ汗をティッシュで拭き、テーブルの上に山積みの書類を手に取る。
汗と熱気で少し縒れるのも気にせず、目を通しては案件ごとにファイル分けしていく。


「この作業さえなければ1時間出社がずらせるのになぁ」


何度目になるかもわからないため息をついて、愚痴を一つこぼす。
けれどもこの業務をすることになった分、定時は一時間半ほど早まったのだ。
本丸を預かることになったからには、せめて"帰宅できる仕事"を選ばなければならないのも事実。
文句は出てきて止まないが、仕方の無いことでもあった。


「おー、お疲れさん〜」


出社してきた同僚に挨拶をして、彼からコンビニのコーヒーの差し入れをもらう。
熱々のコーヒーがじんわりと体を温める。


「カフェイン沁みるわぁ」


オッサン臭いセリフを呟き、また書類仕分けの続きをする。
朝礼まではあと15分。
続々と集まる同僚たちに挨拶しながら手早く作業を進める。
5分前に終わらせてそれぞれの分野ごとに同僚の机の上に配っていけば、始業のチャイムぴったりに事務仕事は片付いた。


「忍、悪いけど午前中にこの資料を雨響のファイルに追加しといて〜」


ヘナヘナと朝から疲れた様子の上司が手渡してきた視力に目を通しながら、言われた通り雨響という名の審神者のファイルにまとめる。
この本丸はまだ行ったことなかったな、なんて記憶を思い出しながら心の中で呟く姿は完璧に役人のそれ。
審神者が審神者と関わろうとする意識とは別のものだ。


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