抜き身に気を付けて

□#13
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戦地に行くため、ゲートの前に向かう。
しかしそこにはすでに忍が1人で行き先を設定するため待っていた。


「おお、早いね。そしたら早速よろしく」


玉砂利の擦れる音に顔を見ないままそう言った彼女。
不信感が募りつつある彼らは、そんな無防備な背中に斬りかかりたいとすら思った。


「中傷になったらすぐ戻って。どうしても進みたかったら要相談で、折れないでよ?…あと、斬りかかったらその瞬間に応戦するから。負けたら刀解だってこと、肝に銘じてかかっておいで」


底冷えするような声でそう告げて、ゲートを開ける。
ぐにゃりと歪んだ門の向こう側。
薄暗いそこにゆっくりと足を踏み出した加州率いる1番隊。
気をつけて、そう言ってゲートが閉じる。
こうなれば進むしか道はない。


「さーて、行きますか」


加州の言葉に彼らは警戒しながら歩き出す。
景色を見る限り、行き慣れた地であるし難易度も高くない。


「さっさと片付けて帰ろう。あやつはまだ信用ならん」


三日月の鋭い声に全員が依り代に手をかける。
忍と繋がっているのは部隊長につけられたインカムに似た通信機器だけで、そこから聞こえる声は今のところない。
その沈黙が不安に感じるのは、つい先日までブラック本丸で生活していた彼らには致し方ないことだ。


【敵軍はいない?】


ようやくインカムから聞こえた忍の声に加州の肩が跳ねる。
冷めたわけでも特別暖かいわけでもない機械音に、彼は平然を保ちながら簡単に様子を伝えた。


「今のところはいない。進軍するよ」


淡々とした、業務的な言葉だ。
しかしそんな言葉を選ぶ意味を知っている忍は特別その刺々しさを指摘することはなかった。


「そう。異変あったら繋いでよ?」


そう残してブツリと切れた通信に、加州は肩透かしをくらった気になった。


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