抜き身に気を付けて

□#07
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とりあえずという言い方は悪いが、まずやるべきことは彼らの手入れとこの廃れた本丸の再建だ。
自己紹介はそこそこに土足のまま本丸の中を歩き、さして使われていないのか埃をうっすら被った手入れ部屋に踏み込む。
資材がそこそこあることは確認済みだ。
無理矢理に彼ら全員をそこに詰め込み、ぽいっと相応量の資材も投げ入れる。
彼らの言葉にも返事をせず襖を音をたてて閉めてしまえば、ここからが自分との戦いだ。
襖越しに手をかざし、自分の神気を部屋に向けて流し込む。
中に放り込んだ資材が反応したのか部屋全体が明るくなって、様々な声が聞こえてきた。


「こんなもん?」


適当な頃合いを見て手を離し、そっと襖を開けた。
中にいた彼らは今はもう見た目も綺麗に揃っている。
血濡れもほつれもない彼らはやはり立ち姿さえも神々しい。


「いやー、成功してよかった」


カラカラとおどけて見せた忍は、内心胸を撫で下ろした。
なにせこんなやり方は正当ではない。
普通の審神者がやったなら命を落としかねない荒業だ。


「こんなやり方するなんてっ?!」


ガッと引きちぎるように肩を掴んできたのは歪んだ顔をした燭台切光忠だ。
ギリギリと肩に食い込むそれは痛くて仕方ないが、それでも彼の顔の方が痛みに歪んでいる。
なにが辛いのかと上から下まで燭台切の体を見つめるが、傷は大も小も見つからない。


「どこか痛い?」


見た目ではわからなかったためそう問うが、彼はやっぱり悲しい顔をするばかりだった。


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