抜き身に気を付けて

□#04
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彼らの主の罪は、なにぶん特殊だった。
ブラック本丸で多い違法行為は暴力や夜伽の強制だが、彼が行っていたのは刀剣男士同士の交わりを強制し、それを映像や写真に残し利益を得るというものだ。
所詮BLと呼ばれるジャンルに入るそれが、もしも利益目的や強制でなければ政府も目をつぶっていたものを、今回はそういったことではなかった。


「いやー、相変わらず忍君の神力はすごいね。彼、強制連行(神隠し)されたのに呆けた顔しちゃって!」


会社支給の携帯から聞こえる声は楽しそうに笑いながらのもので、まさか彼が最高職務であるとは到底感じ得ない。
ぽんぽんと投げ掛けられる褒め言葉はありがたいが、どうも彼とは調子が合わないようだ。
早々に相槌を打つだけになった忍は渦中の男の詳細資料に目を通していた。
中々にレベルの高い本丸であったために時の政府としても痛手だろう。
だが電話口の相手はそんな忍の心中を知ってか、唐突に予期せぬ提案を持ちかけた。


「そうそう、あの本丸なんだけど、忍君面倒見る気ない?」


あまりにもあんまりなその言葉に相槌さえも忘れて、沈黙が流れた。
電話の向こうでは聞いているのか確認するように何度も名前が呼ばれている。


「っぁあ、すみません。いきなりのことで頭が追い付かなくて」


頭の混乱を言葉にすれば、電話口からは納得の言葉とそれが当たり前だという優しいフォロー。
だがそれに続いたのは前向きに考えて欲しいという、暗に強制を意味する言葉だった。


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