抜き身に気を付けて

□#03
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忍は政府の中でも数少ない違法本丸解体部隊だった。
業務と言えば通報された本丸を訪れては話を聞き、対策を練るなどのカウンセリングが主だ。
だがそれはおおよその場合であり、ある意味一番の業務はカウンセリングを拒むもの、その余地がないものの強制的な権利剥奪であった。
相手の神気に負けないことが絶対条件であるこの業務は、審神者のスカウトよりも難易度が高い。


「まあ、君らは主を失ったわけだけど引き取り先はごまんとあるさ。それはまた、後日連絡するよ」


そう言ってあっさりと背を向けてしまった忍。
思っていたよりもずっと去り際の潔い彼女に残された小狐丸はその姿を追いかけることすら許されなかった。
急な理不尽に怒鳴り散らすこともできず消化不良の感情を抱くが、発散する相手はもういない。
審神者という大きな柱がいなくなった本丸はぎしぎしと音をたてて軋む。
もともと寂れた建物だったのであまり差異はないが、それでも、あんな主だったとしても寂しく思うのは刀としての本分があるからだろう。
いなくなった審神者の影を探すように彼の部屋へと踵を返した小狐丸。
道中出会った刀剣男子たちに事情を話せば、全員がなんとも言えない顔をする。
ともあれ、事情を聞くための相手はいない。
ぐるぐると不本意な現状を飲み込めないままでいると、ぽてぽてと軽い足音が響く。
全員が一斉に向けた視線の先には、ちょこんと居座るこんのすけの姿。
久しぶりのその姿はしゃんとしていて、手紙を器用にくわえている。
それは時の政府からのもので、そろそろと受け取った三日月宗近はゆっくりとそれを受け取った。


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