抜き身に気を付けて

□#02
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下着姿で現れた審神者は若い男だった。
その男は疲労感の漂う小狐丸を連れて、嫌悪するような視線を忍に向けている。


「おー、審神者。いてよかったよ〜」


不必要にフレンドリーな忍はギシギシと軋む床を悠々と進む。
手にも腰にも武器はなく、その表情も穏やかだ。
しかし、間合いに入ってきた彼女へ審神者は渾身の平手打ちをかますために腕を振り上げた。
男らしくないなよなよしい手が高くあげられたが、忍はそんなことさして気にせず、審神者の体に触れる。
金属のように固さを覚える冷たさに肩をはねあげさせた審神者。
だがすぐに彼の姿はその場から消え去ってしまった。
死んだというよりも消滅したようなそれはいっそ清々しい。


「帰れ」


消えていった彼に対して吐き出した言葉は、なによりも冷たい音だった。
ぽつりと立ち尽くす小狐丸は、自分よりも幾分も小さな彼女に驚きが隠せない。


「なにが…」


驚きの声をあげる小狐丸に、忍はにっこりと笑みを浮かべてた。
ぐいぐいとポケットのなかに押し込んでいたバッチとプレートを今さらにつけると、その笑顔のままにようやく名前を告げる。


「違法本丸解体(バラし)屋です。お初にお目にかかります」


演劇じみた言い方をした彼女に、彼は何一つ言葉を返すことができない。
ただ彼女の纏う審神者とも政府とも、もちろん歴史修正主義者とも違う雰囲気は存外心地いい。
けれども残念なことにバッチとプレートは政府の犬であることをまざまざと語っていた。


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