石楠花物語小学校時代

□小5時代
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⚪尖り石縄文公園
   麻衣、千里、紡、糸織。

紡「へー、せんちゃんと麻衣が同じクラスになったんかぁ。」
糸織「僕とつむが同じクラスだ。」
紡「あ、改めて私紡。宜しく、紡って呼んで。」
糸織「僕は糸織、しおって呼ばれてる。あーあ、」

   千里を見る

糸織「君が女の子だったらなぁ、僕君に初恋ってやつをしてたかもしれないのになぁ…」
千里「やーめてくれよ…」

   赤くなってもじもじ

千里「僕は男の子なの…」

   広場を飛び回って大きく深呼吸

千里「でもここって広くてすっごく気持ちいいね!!本当に縄文時代にタイムスリップしてきちゃったみたい!!」

   うっとり

千里「でもここって何で尖り石縄文公園って言うの?」
麻衣「あぁ…ここは茅野市5000年の地だもんでだに。」
千里「…?」
麻衣「つまり、縄文時代にはな、ここはうんと栄えてて土器とかあとぉ、ほーほー、国宝縄文のビーナスが出土されてんだに。」
紡「ほ、だもんで茅野市は国宝のある町として有名。」
糸織「なんか当時はここに大きな王国があったなんて歴史の伝説?てか、噂話もあるみたいだぜ?」
千里「へぇー…王国かぁ…」
糸織「確かぁ、アラセルバ…とか言ったかな?」

   少し考え深げ

糸織「まぁいいよ、茅野市の5年生っていったらほの内どっかで歴史の調べ学習の発表会とかがあると思うでさ、ほんときに色々と調べてみりゃいいんじゃないか?」
紡「あ、ほーね。なんかほれも面白そうだに!!」
千里「茅野市の歴史かぁ…僕も調べよっと。」
麻衣「私も。」
糸織「ならみんなで今からやってみますか?」
全員「イェッサァーッ!!せるりーぃっ!!」


⚪原村・上里
   麻衣、健司、磨子

健司「へー、で、お前以外にももう一人転校生が入ったんだ。」
磨子「名前は?男の子?女の子?」
麻衣「男の子だに、とっても可愛い物静かな子なの。宮川の小口千里君ってんだに。今度是非二人にも会わせてあげたいわ。」
健司「いいのか?ほいつ俺らにも会ってくれるかなぁ?」
磨子「私も、会えたら遊んでみたいな。」
麻衣「ん、覚えとらん?ほー、さくら組の!!」
磨子「さくら組?」
健司「さくら組のやつは全く俺は知らないなぁ?」
麻衣「ほ?とにかく、千里君も健司も磨子ちゃんも私の大切なお友達になっただだもん、会ってくれるさやぁ。喜んできっと会うに。ほしたらみんなで遊ばまい。な!!」
健司、磨子「イェッサァーッ!!せるりーぃっ!!」


⚪小口家のアパート・台所
   珠子が戻る。千里、おやつを食べている。

珠子「せんちゃんただいま、」
千里「あ、ママお帰り。」
珠子「ねぇ、せんちゃん?紡ちゃん、糸織君、麻衣ちゃんって三つ子のご兄弟と会った?」
千里「あ、知ってるよ。ついさっきまで一緒に遊んでた。麻衣ちゃんは僕と同じクラスだよ。でも…何で?」
珠子「実はね、ママが入った職場にその子達のお母様も来ていらっしゃるのよ。」
千里「え、そうなの?」
珠子「ええ、偶然ってあるものなのねせんちゃん。さっきまで遊んでたの?良かったわね、早速いいお友達ができて…仲良くするのよ。」
千里「うんっ。…くしゅんっ!!」
珠子「嫌だせんちゃん、風邪かしら?」
千里「嫌、大丈夫…多分違うと思うよ…」
珠子「それでも、用心に越したことはないわ。もし風邪なら早め早めに治しておかないとね…ママ、手を洗ってきたら今、リンゴかりんの葛湯を作ってあげるわね。だからあなたは早く葛根湯をお飲みなさいっ。」
千里「だから大丈夫だって、」

   珠子を見る。

千里「はーいはいっ、飲みますよ、飲みゃいいんだろ、飲みゃ…っ。」

   葛根湯を作って飲んでいる。そのあとに又おやつの続きを食べようとする。

珠子「これっ、せんちゃんっ!!もう葛根湯を飲んだのならおやつなんて食べては行けませんっ!!又明日ね。暖かくしていい子で安静にしていなさいっ。」
千里「ちぇっ、はーい。分かったよ、そーする。リンゴかりんの葛湯、僕の部屋に持ってきてね…宜しくぅっ。」

   台所を出ていく。しばらくすると、ピアノの音が聴こえてくる。珠子、静かに優しくフフっと微笑む。

⚪豊平小学校・教室
   翌日。千里、椅子に座って丸こまっている。

麻衣「ん、せんちゃんおはよう…どうしただ?」
千里「麻衣ちゃん…」

   苦しそうに

千里「何か朝からお腹痛くてさ…」
麻衣「まぁ、大丈夫?」
千里「うん…昨日ちょっと風邪っぽくてさ、葛根湯とリンゴかりんの葛湯を飲んだんだ…それが原因かもしれないってママが言ってたけど…」

   お腹を押さえる。

千里「うーっ、ちょっとごめん…僕トイレっ!!」

   教室を飛び出していく。


⚪同・男子トイレ
   千里がげっそりとして個室から出てくる。そこへ掛川

掛川「ど…したの?千里君…」
千里「お腹壊したぁ…」
掛川「はぁ?」
千里「下痢ピーだ…どうしよう、授業出たかないよ…」
掛川「授業中でもトイレ立っていいんだぜ、どうしてもって言うときは。」
千里「そう?でも…やっぱり僕、少しの間授業は休むよ…医務室いってる。何処?」
掛川「あぁ、案内するよ。一緒に行こう。僕が河原先生には言っておくからさ。」
千里「掛川君、ありがとう…」
掛川「堅いなぁ、もっと軽く呼べよ。」
千里「なら、かけちゃん。」


⚪同・教室
   授業が始まる。

麻衣「あれ?なぁかけちゃん、せんちゃんがトイレ行ったまま戻らんのよ。見てない?」
掛川「ん、見たよ。大丈夫、僕から河原先生に言っておいたから。」
麻衣「何を?」
掛川「千里、授業暫く休むって。」
麻衣「まぁ、どーかしただ?」
掛川「医務室いったよ、急な下痢ピーなんだってさ。」
麻衣「ほう…」  

   心配そう

   一方医務室の千里は定期的にトイレに立っている。丸茂優里先生。

丸茂先生「小口千里君だったわね、大丈夫?」
千里「先生…大丈夫じゃありません…」

   不安に泣きそう

千里「僕このままどうなっちゃうんでしょう?更に酷くなるのかな?」
丸茂「大丈夫よ、千里君、そんなに心配していちゃいけないわ。気を強くお持ちなさい。」
千里「はいっ、ううっ、」

   お腹を押さえて退室

丸茂「少し薬飲ませてカイロ張ったほうがいいかしら?」


   (三時間目)
   千里、ベッドに寝ているが少し落ち着いている。

丸茂先生「良かったわね、千里君少し落ち着いた?」
千里「えぇ、ありがとうございます。大分治ってきました…」
丸茂先生「トイレは、行きたくない?お腹は痛くない?」
千里「えぇ、ありがとうございます。」

   頬を赤らめて笑う。

千里「おならしちゃった…」

   丸茂先生、微笑む。

丸茂先生「良かったわね、お腹も健康になってきたわね。どう?給食は食べられそう?」
千里「えぇっ、お陰様で…」

   少し顔をしかめる。

千里「ううっ、」
丸茂先生「千里君?どうしたの?」
千里「先生、少し気持ちが悪いです…」

   胸を擦る。

千里「ごめんなさい、もう少し寝かせてください。」
丸茂先生「大丈夫、いいわよ、ゆっくりお休みなさい。」

   千里、横になって具合悪そうに目を閉じる。


   (軈て四時間目も終わる)
   そこへ麻衣。

麻衣「失礼しますっ、せんちゃんは?大丈夫?」
丸茂先生「あなたは?柳平麻衣ちゃんね。」
麻衣「はい。友達は?」
千里「あぁ、麻衣ちゃん…」

   麻衣、千里に近づく。

麻衣「せんちゃん、給食だに?食べられそう?」

   千里、ゆっくりと起き上がる。グーっとお腹がなる。

千里「…お腹空いた…」
丸茂先生「千里君、きっと君、お腹空きすぎてて気持ちが悪かったんじゃないの?」
千里「そうかも。じゃあ先生、ありがとうございました。僕はもう大丈夫だよ。」

   麻衣と共に小粋に出ていく。

丸茂先生「調子にのって食べ過ぎたらダメよ、よく噛みなさい。」
千里「はーいつーっ。」

   丸茂先生、フフっと微笑む。

丸茂先生「さてと、私もそろそろお昼にいきますかっと…」

   白衣を脱いで出ていく。


⚪同・教室
   麻衣、千里、掛川、タミ恵、恵美子、田苗、知晃が固まって給食をしている。

掛川「あ、千里君、君大丈夫か?治った?」
千里「うん、お陰様で!!みんなごめんね、ありがとう。」

   カツをつかんでいる。

麻衣「でもせんちゃん、ほんな油のもの食べて大丈夫?又お腹痛くなっちゃうわ。」
千里「そう?」

   残念そうにお皿に戻す。

千里「大好きなのに…」
恵美子「でも、治ってるんなら大丈夫じゃない?」
田苗「そうよ、あまり神経質になりすぎるのも良くないわ。」
知晃「私の弟なんて、下痢ピー最中にハンバーガー食べてたもん。」
タミ恵「いや、それ少しやりすぎじゃないかしら?」
掛川「でも、お前が大丈夫だって思うんなら食べろよ。心配ならもう一回トイレ行って確かめてから食べるか?」
千里「いや、いいや、大丈夫…いただきまぁーすっ!!」

   カツをキャベツと共に丸パンに挟んでかぶり付く。

千里「んーっ、美味しいっ。しゅあわしゅ。」

   両頬に手を当てて満面の笑み。ガヤガヤわいわいとしながら食べている。


⚪帰り道
   前景の人々、全員で帰っている。

知晃「そういえばさ、今年って臨海学習だよねぇ。」
千里「臨海学習?何それ?」
麻衣「あら、せんちゃん知らん?」
恵美子「臨海学習ってのはさ、海に行って漁師のことや潮干狩り、海の仕事を色々と学ぶ社会見学だよ。」
千里「何処に行くの?」
タミ恵「さぁね、確か…日間賀島だったんじゃなかったかしら?」
田苗「南知多とか。」
麻衣「何処ほれ?」
知晃「んもぉー、まいぴうまでほいこん言うっ!」
全員「愛知県なのっ!!」
麻衣「ふーぉーん。ほーだった、ほーだった!!」
千里「愛知県ってことは…何?それって泊まりってこと?」
掛川「勿論、」

   ウキウキ

掛川「何かはじめての長距離留まり旅行…ワクワクするなぁ。」
 
   千里、不安そうに肩を落とす。

掛川「ん、千里君…君どうしたの?」
麻衣「せんちゃん?」
千里「僕…僕…」

   言葉を飲む

千里「何でもない…」

   歩いていく。

千里「じゃあ僕んちこっちだから…お先に、失礼します…。」
麻衣「ありゃ?せんちゃん?せんちゃんってば…せんちゃーんっ!!」

   全員、顔を見合わせて首をかしげる。

麻衣「どうしちゃっただ?彼?」
全員「さぁ…」


⚪小口家のアパート・千里の部屋
   千里、机に肘をついてぼんわりとため息。そこへ珠子。

珠子「ん、せんちゃんどうしたの?ため息なんてついちゃって…」
千里「あ、ママ…」
珠子「何なの?悩み事?好きな女の子でもいる?」
千里「そんな子、僕にはまだいないよ…はぁ…っ」
珠子「どうしたの?ママに理由を話してごらんなさい。」
千里「臨海学習…」
珠子「臨海学習?あぁ、五月にあるやつね。来月ね、楽しみねせんちゃん。それがどうかしたの?」
千里「僕…行きたくない…」
珠子「え?まぁ、それは又どうして?」
千里「だって…遠いとこなんだもん…それに、それに僕は…」

   窓の外を見る。シミのできた布団が干されている。

珠子「分かった…あれね。」

   微笑む。

珠子「そんなの大丈夫よ、もしどうしても心配なら、夜先生におトイレ起こしてもらうか或いは、ママ、おむつ用意しておいてあげるわよ。」

   千里、真っ赤になる。

千里「おむつだなんて…やめてくれよママ…そんなのみんなに知られたら、たちまち僕は、笑われもんだ!!」
珠子「冗談よ、冗談。とにかく、この件に関しては恥ずかしいかもしれないけれど、先生にはちゃんと知っておいてもらわないといけないわ。だからママが連絡帳に書いておくわね。安心して。」
千里「ふんっぅ…」

   珠子、おやつを置く。

珠子「そうそう、ママおやつを持ってきたのよ。せんちゃん、これ食べて元気だしてね、いつものせんちゃんに戻ってね。」
千里「うん、ありがとうママ…じゃあ僕食べたらちょっと遊びにいってくるね。」
珠子「はーいっ、気を付けてね。」

   退室。千里は食べ出す。
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