石楠花物語中学生時代
□中2時代
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⚪小口家
千里「ママ、叔母さん、ただいま。」
台所に入る。
千里「はぁ、いい薫り…ママ、おやつ何?」
夕子、テーブルについてコーヒーを飲む。珠子は台所に立っている。
夕子「おや千里、帰ったのかい。」
珠子「お帰り、せんちゃん。今日はせんちゃんの大好きなシュークリームよ。」
千里「わぁ、やったぁ!!」
ランドセルを放り投げて手を洗いにいく。
夕子「これっ、千里っ!!おやつ食べる前に宿題しな!!」
千里「はーい…」
千里、むっつりとしてへやに入る。
夕子の声「ランドセルもちゃんと片付けなっ!!」
千里「ほーい。」
千里、再び部屋を出ていく。そこへ、珠子。
千里「ママ、何処行くの?」
珠子「よりちゃんとただちゃんをお迎えにいくのよ。」
千里「ふーん。いってらっしゃい。」
珠子「おやつ、宿題しながら食べなさい。テーブルの上に置いてあるわ。」
千里「わぁ!!ママ、ありがとう。」
千里、自分の部屋にランドセルを投げ捨てると台所に入り、おやつを乗せたプレートを持って再びへやに入る。
千里、机で食べながらうっとり。
千里(でもなぁ…夢みたいだよ……まさかあの、憧れの麻衣ちゃんがこの学校に来てくれるだなんて…このまま卒業までいてくれないかな…いてくれれば嬉しいな…)
⚪高橋家
裏庭には花梨の果樹園がある。そこに高橋房恵(55)が木の手入れをしている。
麻衣「叔母ちゃん、ただいま。」
房恵「あら、麻衣ちゃん帰ったかい?お帰り。」
麻衣「又花梨の木の手入れ?」
房恵「そうなのよ。今年は特にね…諏訪6の大イベントもあるだろう?だからね、私んとこもイベントをやるのさ。」
麻衣「イベントを?どんな?」
房恵「あんたを呼んだのはその為さ。」
麻衣「え?」
房恵、微笑む。
麻衣「ここで、レストランを?」
房恵「あぁ。この花梨の木の下でお客様に食べていただく…なかなか素敵だろう?」
麻衣「で、ほれと私はどういう関係が?」
房恵「大有りさ。お前、ここで看板娘をやって欲しい…」
麻衣「看板娘を?私が?」
房恵「あぁ。可愛い娘と素敵な見世物がありゃお客さんも喜ぶだろう?」
麻衣「えぇ、ほーですね。私はではどの様なことをやれば…」
⚪上川バイパス沿い
千里、後藤、小平
小平「で、ボチボチ話せよ。何なんだ?」
後藤「お前の思い人ってどんなやつなんだ?」
小平「なぁなぁ、」
千里、赤くなる。
千里「絶対誰にも言わないか?」
二人「うんうん、」
千里「約束だよぉ?…なら言う。」
少しためらう。
千里「今日転校してきた、柳平麻衣ちゃん…なんだ。」
シーン。
後藤「マジ?」
小平「柳平麻衣って…」
千里「うん…」
後藤「お前、彼女と知り合いなのか?」
千里「う、うん…まぁね。去年燃えドランのイベントで一緒になったりしてさ、幼稚園や豊平の小学校でも一緒だったことがあったから仲良くなったの…色々と彼女に助けてもらったりしたんだ。それから…そのぉ、えーと…」
後藤「ふーん、そうか。そー言う事だったんだな。」
千里「え?」
小平「だから今日一日を見てても、お前はあんなに柳平と親しかったんだ。」
千里「ごめん…?」
後藤、小平、立ち上がる。
後藤「何で謝るんだよ?別に謝ることないだろ?」
小平「そうだよ。お前別に悪いことしてねぇーんだし。…行こ、ヒデ。」
後藤「お、じゃな千里…」
二人、先に歩いていく。
千里「ちょっ、ちょっと待ってよぉ!!僕をおいていかないで!!ねぇ、怒ってるの?ねぇーってばぁ!!」
二人、立ち止まって振り向くと大きく笑って千里に駆け寄る。
後藤「バーかっ、誰が怒るもんか!!怒ってねぇーよ!!」
小平「千里ぃ、お前もついに恋か?このこのぉ、」
後藤「俺達、そのお前の初恋応援するぜ!!」
千里「ちょっと、恥ずかしいからそんな大声で言うなよっ!!」
後藤、大声で。
後藤「諏訪市内の皆さん聞いてくださいっ、この小口千里は柳平麻衣の事が…」
千里、真っ赤になってそれを止める。千里、逃げる二人を追いかけていく。
⚪小口家
千里「ただいまぁ、」
夕子「千里っ!!」
玄関に仁王立ちをしている。
夕子「先に宿題をしろと言っただろうっ!!遊びに行く前にやったのかい?」
千里「ま、まだです…でも後藤くんと小平くんと時間の待ち合わせが…」
夕子「言い訳はなしっ!!早くおやりっ!!」
千里「はい…」
夕子「終わるまで夕飯はなしだからね、」
奥から珠子が出てくる。
夕子「母さんに助けを求めてもダメだよ。」
珠子「そうよせんちゃん、あなたのために言っているんです。勉強に関してはママもせんちゃんの味方はしてあげられませんよ。叔母さんの言うことをちゃんと聴いてやりなさい。」
千里「はーい…」
千里、不貞腐れて部屋に入る。
⚪同・千里の部屋
勉強机に向かってノートを開くが心はここに有らず。部屋の中には鳥かご。一匹のインコが入っている。
千里(あぁ、麻衣ちゃん…僕の心は君の事で一杯なの…君の名前が頭から離れないんだよ…)
無意識にノートにはびっしりと麻衣の名前がかかれている。
⚪高橋家・果樹園
麻衣、房恵と共に木の手入れを始めている。
麻衣「くしゅんっ!!くしゅんっ!!」
房恵「あら麻衣ちゃん、どうしたの?風邪?」
麻衣「いえ、…大丈夫です。嫌だわ、誰かが私の噂をしているのかしら?」
房恵「二つの嚔は噂じゃなくて愛されているのよ。誰かに。」
麻衣「ほんなぁ、嫌ねフサ叔母様!!私はまだ中2だに。ある筈ないわ。」
房恵「さて、そうかしら?」
麻衣「もぉ。」
房恵、ふふっと笑う。
(数時間後)
房恵「よしっと、出来たわ。これでいいでしょう!!ありがとう麻衣ちゃん、助かったわ。」
麻衣「いえ、」
房恵「さぁ、ご飯にしましょうか。」
麻衣「えぇ、私へーお腹ペコペコ!!」
二人、家の中へ入る。
⚪岩波家・食卓
岩波茂、岩波幸恵、岩波悟、岩波健司が食事をしている。健司は何となく寂しそうに心ここに有らず。
岩波「ん、健司、どうしたんだ?食べんのか?」
悟「今日はお前の好きなエビフライとじラーメンだぞ。」
健司「…。」
幸恵「あーっ、分かった。さては麻衣ちゃんが転校しちゃって寂しいんだな?」
悟もニヤリ。
悟「そうか、そいこんか。なんだタケ、あの子の事が好きなのか?」
健司、真っ赤になる。
健司「ち、違っ、ほんなんじゃねぇーよ!!頂きまぁーす!!」
ラーメンを掻き込む。
健司「お代わりっ!!エビフライもちょうだい。」
家族、顔を見合わせてくすくす。
幸恵「はーいはいっ。」
幸恵、替えを作り出す。健司、ぼんわり。
健司(麻衣…お前今…どうしてるんだろ。)
幸恵「はいっ、健司。特大で作ったわよ。どーぞ、」
健司「サンキューお袋っ!!」
再び掻き込む。
幸恵「こらこら、ゆっくり食べなさい。」
健司「ぐふっ、ぐふっ、ぐふっ!!」
悟「バカだなぁ、ほれ水飲め、」
悟も笑いながら健司の背を擦る。
⚪諏訪中学校・教室
一ヶ月後。休み時間。麻衣、永田眞澄、北山マコ、鈴木真亜子。
麻衣「いよいよ、今年の夏ね…」
眞澄「大イベントのこと?」
麻衣「もっちろん!!」
眞澄「そうね。」
麻衣「凄くなんかワクワク。ほいだって私が大きくなってからは初めてだだもん、」
マコ「確かに…以前は私達、小学校の低学年だったものね。」
麻衣「北山の家は?確かカフェだら?何か出店するの?」
マコ「勿論よ、私はそこで看板娘として踊り子をやるの。良かったらみんなも来てみてよ。」
麻衣「是非!!私のところにも来てね。」
真亜子「あれ、あんたのところは何かお店だっけ?」
麻衣「えぇ、叔母様が花梨農家だだけどさ、今年はほの花梨の木下でレストランをやるだってさ。今は何かハンガリーブームでさ、叔母の甥っ子さんの彦兄ちゃんもハンガリー料理のオーナーやってるんよ。」
マコ「へぇー、その彦兄ちゃんって人、何歳?」
麻衣「えーっとねぇ、確か今年23歳って聞いたわ。」
真亜子「格好いい男?」
麻衣「私も大きくなってからは会ったことないで、小さいときの顔しか分からん…てかみんな、何か狙ってるなぁ?」
眞澄、興味なさそう。
マコ「眞澄、あんたは?何か冷めてるわね。」
眞澄「だって私にはチーちゃんがいるんですもの。他の男には興味ないわ。」
真亜子「未だ言ってるし…あんたも物好きだねぇ。あんな男のどこがほんなにいいのよ?」
マコ「あいつ、あんたに興味なさそうだし?いい加減諦めたら?」
真亜子「そうそう、しつこい女は嫌われるよ。」
眞澄「煩いっ!!見てなさいっ、今はダメでもきっとチーちゃんは振り向いてくれるわ。眞澄の事見てくれるんだから!!」
麻衣「チーちゃんって?」
眞澄「チーちゃんはチーちゃんよ。小口千里くん!!」
うっとり。
眞澄「眞澄はきっと将来、彼のお嫁さんになるのよ!!」
麻衣「あー、眞澄ちゃんってせんちゃんのこん好きなんだぁ!!フーフーッ!!」
真亜子「でも、あの子の方は眞澄に興味ないみたいだからいい加減諦めなって話よ。」
マコ「そうそう。」
麻衣「恋する女の子にほいこん言わんだ!!な、眞澄ちゃん。私は応援するに。」
眞澄「麻衣たん、ありがとう!!うんっ、眞澄頑張るっ!!」
マコ、真亜子、お手上げで呆れてやれやれ。