石楠花物語中学生時代

□中1時代
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⚪同・給食ホール
   麻衣、健司、並んで食べている。健司、そっと麻衣の皿に鳥の唐揚げを乗せる。

麻衣「どうしたの?これ、あんたの一番好きな物じゃないの。」
健司「いいんだ…さっきのお礼…さっきは、庇ってくれてありがとな。(照れる)嬉しかったよ。だで、…食べて。」
麻衣「ありがとう。」
   
   麻衣、笑って食べる。健司、セルリーを箸でつかんで香りを嗅ぐと、顔をしかめて避ける。麻衣、それを見る。

麻衣「あー!!あんた原村っ子だらに。ほれなんにセルリー嫌いだなんて!!村に対して失礼よ。」
   
   麻衣、大声はクラス中に聞こえ、みんなはクスクス。

健司「ほんな大声出すな、恥ずかしい!!」

   (廊下)
   健司と麻衣が廊下を歩く旅にみんなクスクス。俯く健司と睨み付ける麻衣。

麻衣「(小声)気にしちゃいけんに健司。無視、無視、」
健司「…。」
   
   前方からは小林先生

健司「…あ、」
麻衣「先生…」
小林「岩波君、柳平さん、ちょっと私に着いていらっしゃい。」
   
   二人、顔を見合わせる。


⚪同・会議室
   前景の三人

麻衣「先生、話って…」
小林「柳平さん、さっきはごめんなさいね。そして、ありがとう。」
麻衣「え?」
小林先生「大沼先生から聞きました。あなた、岩波君を庇ったのね。」
麻衣「え…」
小林先生「隠さなくてもいいの。岩波君、(健司を見る)本当は…トイレに行きたかったのはあなたなのね。」
健司「は…はい。」
小林先生「女の子に助けられるなんて…。どうしてあの時、私が言ったときにトイレに行きたいと言わなかったの?」
健司「ほ、ほれはぁ…」
小林先生「今度からは、授業中でもトイレに行きたくなったら言いなさい。その前に、休み時間のうちに済ましておくこと。分かりましたね。」
健司「はーい…」
小林先生「柳平さん、あなたもね。」
麻衣「私はほんなこんしませんよ。どいで私にまで…(不貞腐れる)」

   (下校のチャイムがなる)

⚪宮川商店街
   麻衣、健司、田中磨子(13)がソフトクリームを舐めながら歩いている。

磨子「ふーん、そんなことがあったの。(ニヤニヤと)へぇー、健司、あんたがおもらしねぇ。」
健司「な、なんだよ…」
磨子「別に。」
健司「俺だって人間だ!!トイレだって行きたいし、腹だって減る!!」
磨子「だからってわざわざ教室でする事ないでしょうに。」
健司「(恥ずかしそうに顔を真っ赤にして大声)俺だってしたくてしたんじゃねぇーよ!我慢が出来くなっちゃったの!!!」
磨子「どうして、」
麻衣「磨子ちゃん、へーやめな。健司、可哀想ずらに。」
磨子「ちぇっ。」


   (しばらくご)
   ソフトクリームを食べ終わった三人。公会所のベンチに座っている。

磨子「そう言えばさ、長峰中はもうすぐ山レクがあるんだけど…つまり登山。」
麻衣「ん、原中もだに。なぁ健司、」
健司「うん。うちは車山だ。磨子たちは?」
磨子「入笠。」
健司「入笠か、ふーん。いつ?」
磨子「夏休み前の25。」
麻衣「お、私達も!!」

⚪諏訪市・上川バイパス沿い
   その頃。小口千里、後藤秀明、小平海里、永田眞澄が草に寝転んでいる。

後藤「んいや千里、」
千里「んー?」
後藤「キャンプがあるのお前、知ってるか?」
千里「そりゃ知ってるさ。」
小平「車山なんだぜ、霧ヶ峰から登るんだって。」
千里「だからぁ?」
後藤「車山までだぜ?しかもそれから白樺経由で茅野から降りてくんだ。お前にできるか?」
   
   千里、ばっと起き上がって仁王立ちをして三人を見下ろす。

千里「バカにすんな!!僕は確かに痩せてるし、背も小さいし、便り無さそうに見えるかもしれないけど…これでも僕だって男だ!!それくらいの体力は…」
眞澄「大丈夫よん、

   千里にべったり

眞澄「眞澄のちーちゃんは弱くないもの。かっこいいんだから。」
千里「や、…やめろよ。」
   
   千里、少し逃げようとするが眞澄は千里にべったりとくっついている。

後藤「フー、フー、お似合いだぞぉ!!」
小平「そのまま結婚しちまえよ!!」
千里「冗談はやめろ!!早く助けてくれよ!!」



⚪白樺高原

   麻衣、健司、バンガローで勉強をしている。

男子生徒の声「おい、キャンプファイア始まるぞ。」
健司「お、キャンプファイアだって。麻衣、お前どうする?」
麻衣「ほりゃ勿論行くに!!」
健司「なら俺も。」
   
   二人、急いでバンガローをでる。

   キャンプファイアのサークルが出来ている。フォークダンスの音楽がかかり出す。

健司「お、初めはスイスのレントラーか。なぁ麻衣…

   赤くなって照れながら

健司「初めはまず…俺と踊ってくんねぇーか?」

   赤くなって下を向く

麻衣「勿論…いいに。最後まで…あんたと踊ってやってもいいけど…どうせお相手…おらんずら。」
健司「う、うっせーやい。でも…お前がどうしてもっていうんなら…」
   
   二人、一緒に踊り出す。野々子、西脇と組んでいるが二人から目を話さない二人。


   躍りも半ば。盛り上がっている。そこへ千里がキョロキョロとして迷い混んでくる。

健司「?(麻衣の気を引く)おい、見ろよ。誰だあいつ?」
麻衣「ふんとぉーだ。原中では見たことない子ね。…私、行ってくるっ!!」
健司「お、おいっ!!」
   
   二人、千里に近付く。千里、二人に気がつくとビクリとして神経質気味に目を反らす。

麻衣「あらっ、あんたって!!」
千里「ぼ…僕は…お、小口千里です…。…君達は?諏訪中の…?って…ありゃ?」
麻衣「せんちゃん?どいで?」
千里「君こそ…ってことは?ここは?」
健司「俺達は原中。キャンプでここに来た。何だ、お前は諏訪中…小口千里じゃん?どいでここにいるんだ?キャンプ?」
千里「うん…霧ヶ峰から車山高原通ってこれからこの白樺高原に泊まって明日帰るんですけど、トイレ行っている間にみんなとはぐれちゃったんだ…。」
麻衣「ほう…分かった。ちょっと待ってな。健司、小林先生呼んできて。」


   (しばらく)
   麻衣、健司、千里、小林先生。小林先生、電話を掛けている。

小林先生「小口君、これから君の担任の藤森明美先生、来てくださるって。良かった、連絡がとれて。」
千里「はい、ありがとうございます!!」
麻衣「ほれまで小口君、私達と踊りまい!!」
千里「え、僕もいいの?」
麻衣「勿論よ。…パタパタ、踊れる?」
   
   麻衣、健司、千里、一緒に踊り出す。健司、少しむくれる。千里、麻衣に一目惚れ。
千里(やっぱり麻衣ちゃんは相変わらず優しくて可愛いな…うちの学校にはこんな可愛い子はいないや…)

   『君はモナリザ』


   そのうち、藤森明美先生がやって来る。

千里「あ、」
藤森先生「小口君、小口千里君!!」
千里「先生っ!!」
藤森先生「もぉ、あなたって子は。一体何処に行っていたのです!?みんなも心配していますよ。」
千里「ごめんなさい先生、急にトイレに行きたくなったので行っていたらみんなとはぐれてしまって。」
藤森先生「そいこと…(呆れため息)トイレに行くのはいいですけど、次からは一言声をかけて行きなさい。いいわね。」
千里「はい…そうします…ごめんなさい。」
藤森先生「分かればいいの。…うちの生徒がお世話に成りました。ご迷惑をお掛け致しました、ありがとうございました。」
小林先生「いえいえ、とんでもない。小口君、良かったわね。」
千里「はいっ。」
   
   藤森先生、千里の頭を下げさせる。

藤森先生「小口君、あなたもお礼をしなさい。ありがとうございました。」
千里「ありがとうございました。

   麻衣と健司に

千里「麻衣ちゃんに…健司くん…だよね。君達もどうもありがとう…。又、何処かで会えればいいな。」
麻衣「勿論、きっと何処かで会えるに。同じ諏訪の子なんですもの。」
千里「そうだね。」
麻衣「えぇ。」
健司「きっとな。」
千里「うんっ!!又ねお休み。」
二人「お休み。」
藤森先生「ほら、小口君、戻りますよ。」
   
   二人、いつまでも手を振っている。

⚪白樺高原・バンガロー
   麻衣、茶目子、野々子、西脇、健司、岩井木、清水

茶目子「ところでまいぴう、さっきの子…誰?」
野々子「あの、タケちゃん以上に小さかった男の子、」
西脇「なんか挙動不審で、」
岩井木「よわっぽくて」
清水「女みたいな男の子…」
麻衣「あぁ。みんなみとったんね。何か、諏訪中の子。迷子になったんだって。」
健司「ほ、世話の妬ける小僧だぜ。」
   
   健司、鼻をふんっとならす。麻衣、健司をこずく。

麻衣「あんたもね。」
西脇「それもそうだ。」
   
   メンバー、笑う。健司、むくれて拗ねる。麻衣、笑いながらも健司を宥める。

麻衣「ほーやってすぐに、拗ねない、怒らない。」
健司「ほいだってさ、ほいだって…(河豚提灯)」
麻衣「ふふっ、河豚提灯…可愛いの。」
健司「うっせー、黙れ麻衣っ!!」
岩井木「まぁまぁ…」
   
   てメンバー。夜は更けていく。

   翌日、山を下る一同。
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