石楠花物語高校生時代

□高2時代
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⚪上諏訪駅
   呆然と歩く二人。

麻衣「ねぇ、せんちゃん…ほいじゃああれがまさか…」
千里「何も聞かないでくれよ…」
麻衣「ごめん…。でも、これで全てが良かったってことよね…。」
千里「あぁ、多分。でも、僕らの見てたことは…やっぱり」
二人「本当の事だったんだね…」

   千里、身震い。

千里「さぁ、もう言ってる間に夕方だよ。そろそろ帰ろうか?」
麻衣「ほーね。あんたのお陰で今日は楽しかった、ありがとな。辛い思いも忘れちゃう…。」
千里「いやぁ…てへへっ。僕もだよ。君のお陰で今日は楽しかった。思いがけずパパにも会えたしね。」
麻衣「ほーね。きっと、あんたみたいな男の子なら…今日一緒に過ごして分かったの。」

   にっこり。

麻衣「すぐに素敵な女の子が出来るに。へーあんた、誰かほーいう女の子いるだ?私になんてあんなプレゼントくれちゃって。」
千里「え、えぇ、それはぁ…」

   紅くなりながら

千里(だからさっきいったじゃんかぁ…)

   少し拗ねて剥れる。

麻衣「あれ、おーい…せんちゃん?どーった?」
千里「別ーに、何ーにもっ?」
麻衣「何すねてんのよ?あんたって、へんなの。」

   二人、改札を入っていく。

   電車の中、お互いに口も聞かず、黙って乗っている。

⚪茅野駅・西口
   麻衣と千里。

千里「それじゃあね、麻衣ちゃん。今日は本当にありがとう…又ね。」
麻衣「えぇ、私も…又遊ぼうな。ほーいやせんちゃん、あんた学校はどうするだ?長野にも少なからず音楽専門はあるで、せんちゃんだったらほいとこいけばいいに。」
千里「あぁ…うん。」

   口ごもる。

千里「ところで?君はどうやって帰るの?バス?」
麻衣「いえ、とりあえず私まずいかなくちゃならないところがあるもんで…」
千里「そっか…ならここでとりあえずはお別れだ。」
麻衣「そうね。でも又メールとかするな。」
千里「僕も。」

   麻衣、千里に小粋に手を降って小走りに西口広場を出る。

   
⚪ビーナスライン
   麻衣がせっせせっせと歩いて上っている。千里の乗ったバスが走る。千里、何気なく携帯を弄っているが府と窓の外を見て目を丸くして窓に顔をくっ付ける。

千里「あ?」

   麻衣を見る。

千里(う、嘘だろ、あれってまさか…麻衣ちゃんか?何処行くんだろう…。)

⚪白樺高原・湖岸
   麻衣、まだかなり雪の残る湖岸の雪の上に腰を下ろす。

麻衣「なぁ、健司に磨子ちゃん…私、麻衣だに。早いな、へー今年ももうすぐ新学期だに。MMC、行ってきたに…。私、ピアノの部では泣いちゃっていけんかったけど…でも、ほれで充分。ほいだって私、あんたとの約束果たせた…。きっとあんた、喜んでくれたわね。何かな、弾いててもずっと、あんたが見に来てくれてるような気がしてならんかったの。今日はせんちゃんと会ったんだに。彼な、気は弱いけどとても素敵で優しい子なの…私は大丈夫よ。だで安心してな…。私、頑張る。」

   涙を脱ぐって笑って立ち上がる。

麻衣「ほいじゃあ…健司に磨子ちゃん、私へーぼちぼち行くな…。でも必ずよ、又必ずここに来る。」

   麻衣、踵を返してかけていく。
   『春に寄す』

⚪茅野中央高校・校門
   麻衣が生き生きと目を輝かせて歩いている。

麻衣【私の名前は柳平麻衣。ここ、茅野中央高校の3年生…。今年は一体どんな一年になるのかしら、ワクワクドキドキで一杯です。私、今年も一年、頑張ります。みんな、応援してなぁ…】

   ルンルンと校舎へと入っていく。

   数分後、千里がスキップしながらかけていく。

千里【僕の名前は小口千里。今年からここ、茅野中央高校に転入することになった3年生…。今年は新しい土地、新しい学校で、一体どんな一年になるのかな、ワクワクドキドキで一杯です。】

   前方には女子学生。女子学生は、ビデオカメラを構えながら後退りし、千里はルンルンと歩いており、お互いに気が付いていない。

千里「うわっあっ!!」

   北山マコにぶつかって尻餅をつく。

千里「いったたたたた…」

   お尻を擦る。

マコ「ちょっとあんた、何やってんのよ、大丈夫?」
千里「大丈夫じゃないよぉ、ちゃんと周り見て歩けよな。」
マコ「なんですって?」

   千里をにらむ。

マコ「てかあんた、見ない顔ね。何年生?」
千里「僕は、今年からここに転入することになった…3年生の小口千里です。」
マコ「ふーん、転校生か…。転校してきたからって浮かれて歩いてんじゃないわよっ!!ま、今日のところは許してやるけど…?」
千里「先にぶつかってきたのは君の方だろうに…」
「何ですって?何か今言った?」
千里「い、いえ別に…」
マコ「でも、今度この私を怒らしたら、ただじゃおかないんだから。覚悟なさい。じゃ、」

   悪戯っぽく。

マコ「同じ学校なら又会うかもな。その時は又、宜しく頼むわ。」

   校舎へと入っていく。千里、お尻を擦りながら立ち上がって女子学生の後ろ姿を見つめる。

千里「ふーっ、怖っ。あんな女の子もいるんだな…嫌だ、絶対会いたかないや。出来ればもう、卒業まであんな子と二度と関わりたくないや…。」

   千里も校舎へと入っていく。

⚪諏訪実業高校・校門
   健司が清々しい表情で歩いている。

健司【俺の名前は岩波健司。ここ、諏訪実業高校の3年生…。今年は一体どんな一年になるのかな。ワクワクドキドキで一杯です。俺も、今年も一年、うんと頑張ります。みんな、だで応援してなぁ。】

   後ろから海里がかけてくる。

海里「おーいっ、いっちゃんはよーん!!」

   健司、立ち止まって振り向く。

健司「お、海里はよーんっ!!」
海里「お前今日も早いな。」
健司「まな、」
海里「んなら早いとこ、教室入ろうぜ。」
健司「うんっ!!」

   二人、走って校舎へと入っていく。

   其々に、教室の窓の外を見つめ、それぞれの新学期の春が始まろうとしている。

   窓からは、未だ蕾もついていない桜の木が雪を被り、寒そうに風で揺れているが、どことなく少しずつ春の訪れを感じさせている。

ED『お前のチョコレートケーキ(ポルトガル語バージョン)』
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