石楠花物語高校生時代

□高2時代
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OP『想いは伝書鳩に伝えて』


『石楠花物語、高2時代。』

⚪岩波家・客間の和室
   卓袱台を挟んで、岩波と岩波健司(17)が向かい合って座っている。

健司「はぁーーーーーっ!?????」

   震えながら卓袱台を叩く

健司「ナポリだとぉ?何だよ、親父ほれ…」
岩波「だから健司、今言った通りだよ。ナポリに行くのだ…」
健司「バカか?冷静になれよ…だったら?俺は?兄貴は?お袋はどうすんだよ…第一、酒・IWANAMIはどうなるんだ!?俺は絶対にイタリアなん行かねぇぞ!!」
岩波「健司…」
   悪戯っぽく健司を見つめる。

岩波「大丈夫だ、ナポリには父さん一人で行く。だからお前たちは日本にいなさい。」

   健司、安心のため息をつく。

岩波「よって、…健司、次男のお前には9月より酒・IWANAMIに研修に入ってもらう。」
健司「は、はぁ!?(乗り出す)ま、待てよ…俺が研修にって?どいこんだ?」
岩波「つまり、お前に岩波の酒の後継者を任すと言っているのだ!!」
健司「後継者って親父…バカ言うなよ!!俺、まだ17にもなってないんだぜ!!てか俺、会社継ぐなんて嫌だからな。こいこんは、兄貴に頼めよ。普通、長男にやらせるだろ、こいこんは!!」

   岩波幸恵がお茶をもって入ってくる。

幸恵「ダメよ、悟は医大生だもの。そうなると健司、あなたしかいないでしょう…」
健司「お袋まで…(ため息)てかさ、どいでわざわざ日本酒会社の社長が、今度はワインに手ぇ出すんだよ!!俺には意味わかんね。」
幸恵「父さんにもお考えがあるのよ。さ、健司、だから父さんの言うこと聞いてやるのよ。」
健司「俺は絶対に継ぐなんて嫌だからな!!てか、俺へ…行くよ、麻衣を待たせてんだ。」
幸恵「そう言えばそんなこと言ってたわね…慰安旅行に連れてってあげるんでしたっけ?」
健司「そうだよぉ、ったく…」

   健司、大きな鞄を持つと部屋を出ていこうとする。幸恵、健司の座っていたところに座る。

幸恵「でもそうなるとあなた、後取り問題もありますねぇ、」
岩波「そうだなぁ…今年は健司に岩波の将来のため、見合いでもさせてみるか?」
幸恵「いいですね!!」

   健司、吹き出してずっこける。


⚪茅野駅・東口
   麻衣、石のベンチに座っている。そこへ健司。

麻衣「あ、健司!!(立ち上がる)遅かったんね…どーゆーだ?」
健司「あ、麻衣…わりぃな。」
麻衣「いえ、謝らんで。何かあった?」
健司「あ、あぁ。実は親父と…喧嘩してきた。」
麻衣「喧嘩ぁ!?又なぜ!?」
健司「ちょっとな、話すと長くなる…又後で話すよ。」
麻衣「分かった。とりあえず、駅舎入る?」
健司「そうだな、」


   二人、駅舎へ入っていく。

麻衣「何処連れていってくれる?」
健司「いいとこ、まだ内緒だよ。」


⚪小口家・玄関
   夕子がカートを持った千里を見送っている。

千里「じゃあ、夕子叔母さん、僕行ってくる。」
夕子「行くんだね。本当に一人で大丈夫だろうね?」
千里「うん、勿論。大丈夫さ。」
夕子「トイレは我慢出来なくなる前に行くんだよ。」
千里「叔母さん、僕はもう高2だよ。小さな子供じゃないんだ。それくらい分かってるさ。」
夕子「酔い止めは持ったかい?」
千里「僕、乗り物酔いはしないもん。」
夕子「万が一の時のために、安心だで持ってきな。」

   千里に何かが入った袋を渡す。

千里「何これ?」
夕子「ビニール袋とトラベル緊急バック、そして携帯トイレに紙おむつだよ。」
千里「だからいらないってば!!てか、紙おむつって何?僕がおねしょでもするとでも?」
夕子「あんたのこんだからいつ何があるか分からないじゃないか。持ってりゃ安心だろ。駅のトイレでおむつ付けときな。」
千里「お断りします。じゃあね…」

   千里、飛び出ていく。夕子、心配そうに見送る。

夕子「あの子、本当に一週間大丈夫かね?私しゃ心配だよ。」

⚪軽井沢駅
   麻衣、健司、千里、小松清聡(17)、小野海里(17)、永田眞澄(17)、が降り立つ。全員、顔を見合わす。

全員「あーーーっ!!!!」
麻衣「小口君に小松君!!」
健司「海里に、眞澄!?千里!!」
千里「麻衣ちゃん、健司君に、小松君、眞澄!?」
小野「に、キヨにいっちゃん、」
眞澄「千里にター坊じゃないの!!」
小松「海里に、麻衣ちゃん、小口君じゃないか!!」
全員「どうしてここにいるんだぁ?」


小野「ふーん、でお前は彼女を慰めるために旅行デートに誘い出したって訳か。」
健司「ほいこ…ん、」

   言った後にしまったとばかりに口を押さえる。

麻衣「健司…あんた、私のために…?」
健司「あ、…あぁ…まぁ。」
小野「でもいっちゃん、お前にまさかこんなに可愛い彼女がいたとはな…驚きだよ。」
眞澄「本当に、ま、あんたは無駄にハンサムだしね。ナンパでしょ、どうせ。流石、女捕まえるのも上手いわ。」
健司「おい、眞澄!!無駄にハンサムとはなんだよ、無駄にハンサムとは!!てかさ、こいつはナンパで捕まえたんじゃねぇーよ。俺、ナンパとかしないもん。こいつは、俺の幼馴染みなの。」
眞澄「ふーん。」
千里「何だ…君達結局、お付き合いすることになったんだね。」
健司「あぁ…だでさ、早いとここいつを両親に改めて紹介しなくちゃな。」
小松「君達、美男美女で…とってもお似合いだよ。」


   麻衣、健司、テレる。

小野「んで?お前らは何処行こうとしてんだよ?」
健司「俺?俺は麻衣と、“ドールフランス・オフェリーの家”に行くんだ。」
小野「まじか…俺もだ。キヨと一緒に。」
眞澄「私も。」
千里「実は僕も…。今叔母さんと暮らしているんだけどさ、窮屈過ぎちゃって…耐えられないから、息抜きに家出してきた。」


   そこへバス。昔からの田舎バス。

小野「お、このバスじゃねぇーか?みんな乗ろ。」


   全員、バスに乗り込むとギシギシと走り出す。

⚪バスの中
   6人のみ。
   『トロリーソング』

眞澄「何かね、私たちが泊まるホテルはとても昔からの格式あるホテルらしくて、築500年なんですって。」
麻衣「へぇ、眞澄ちゃんよく知ってるね。」
眞澄「まぁね、ター坊知ってた?」
健司「知るかよ!!ター坊って呼ぶなっ!!」
麻衣「何?眞澄ちゃんと健司って、幼馴染みとか?」
眞澄「いえ、私達は従姉弟なのよ。」
麻衣「え、従姉弟!?初めて知った…」
眞澄「ん?昔言わんかったっけ?」
麻衣「えぇ、初耳よ。」
健司「ほ。あんま関わりたくない従姉弟の姉。同い年なんだけどな。誕生日が半年早いんだよ。」
千里「でもさ、名前がなんか可愛いよね…ドールフランス・オフェリーの家って…何か意味、あるのかな?」
小野「そーか?何か俺には意味深な響きに聞こえるな。」
小松「確かに…何か不気味…。」


   千里、固まって顔色が変わる。

千里「ど、どういう風にさ…」
小野「つまりは…俺は、こんな感じに解釈する。」

   小野、咳払いをして立ち上がる。が、バスは砂利道に入ってガタガタと激しく揺れる。麻衣、段々に気分悪くなっていく。健司、麻衣に気がついて体を抱き、背をさする。他の人々も揺れて頭ばかりぶつけている。


⚪ドールフランス・オフェリーの家
   バス、庭に止まる。辺りは鬱蒼とした森の中、暗くて家の外観もよく見えないが洋館である。6人はフラフラしながらバスから降りる。健司は麻衣を支えて降りてくる。

健司「麻衣、大丈夫か?」
麻衣「えぇ、ありがとう…」

   6人、屋敷を見上げる。

小野「暗くてよく見えねーな。」
眞澄「私あの運転手さんから家の鍵、貰ったわ。」
千里「家の鍵?」
眞澄「そう…考えると、どうもここに泊まるのは私達が初めての様ね。」
千里「お、おい…それってどいことだよ?嫌だよ…僕、やっぱり帰るっ。」

   バスはいない。

千里「…あれ?」
眞澄「残念。一週間したら迎えに来るって。それまで6人、ここで仲良く生活を…と言う事です。」
千里「そんな、じゃあママに迎えに来て貰うんだ!!」
眞澄「あんた、ここまで来た道とか覚えてんの?」
千里「うーっ…」
小野「いいじゃん、とにかく俺たち仲良くしようぜ。」
小松「そうだね、折角こうして知り合ったんだ。仲良くなろうよ!!」
健司「ほーだな。」

   空気を吸う。

健司「しかし、まぁ普段から八ヶ岳に育てられてるけどさ、山の空気はいいよ。」

   バイオリンを取り出す。

健司「俺、バイオリン持ってきたし…こんなところで思いっきり弾けるなんて最高だ!!」
麻衣「私も、思いっきり歌っちゃいたいわ。」
千里「バレエも思う存分踊れそうだし…こんな大きな屋敷…ピアノあるかな…あればいいな…。」

   6人、家の中へと入っていく。
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