石楠花物語中学生時代

□中3時代(バージョン1)
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⚪小口家・寝室
   2003年12月31日、大晦日。小口千里がすっかり熟睡している。朝の3時半。目覚まし時計がなる。

千里「んーっ…」

   薄目を開ける。

千里「何ぃ?もう朝ぁ?」

   時計を見る。

千里「何だよ…まだ3時半じゃん…」

   そこへ小口珠子が飛び入ってくる。
 
珠子「せんちゃんっ!!起きた?起きたわねっ!!」
千里「あー?ママ、何だよこんな時間にぃ…まだ夜じゃん…」
珠子「今日はなんの日か忘れたの?大晦日でしょ?大晦日と言えば?」
千里「大晦日と言えば…あぁ。」

   うとうと

千里「丸高鮮魚店の朝市か…」

   再び寝入る。珠子、千里を叩き起こして布団を剥ぎ取る。

珠子「こらっ、又寝るなっ!!」

   千里、寒さに震えて縮こまる。

珠子「今年も…」

   不気味にニヤリ

珠子「勿論、行ってくれるわよね?」
千里「えーっ?」

   嫌々眠そうに欠伸をし、起き上がる。


⚪丸高鮮魚店・駐車場
   4時。すでに沢山すぎる人々が並んでいる。千里、震えながら買い物かごをもってやってくる。

千里(ふーっ、寒い…。何で毎年こんなこと僕にやらせるんだよぉ…僕が一年間のなかでこの日は…大晦日なんてもっとも大嫌いな日なんだ…。)

   千里、列に並ぶ。

千里【そして、必ず…この大晦日の寒空の下で何もせずにぼさーっと待っていると僕はいつも】

   震えながらもじもじ。

千里【トイレに弾んじゃうんだよな…。これ、毎年のこと。そして、5時開店と同時に店に雪崩れ込む人の波に乗って僕も入り…買い物前におトイレを借りるためにダッシュ。】

    腕時計を見る。まだ4時半。

千里【あと、30分か…。でも、僕にはここに参加する一つの楽しみもあった。ママも無償で僕にこの朝早く出掛けろといっているわけではない。ご褒美に僕の好きな食べもの何でも買ってきていいんだって。だから僕はいつも…】

   そのうち開店時刻になり、雪崩れ込みが始まる。千里も人の波に押されて入っていく。

千里「ーっっ。」

   トイレへと駆け込む。


   暫くして出てくる。

千里【はぁ…サッパリ。で、僕の好きなものというのは?】

   店の中に入る。

   オードブルセットを手に取る。

千里【これこれ。これが僕の大好物。この時期限定の丸高名物。マグロ料理のオードブルセットさ。これがすっごく美味しいの。】

   他の買い物をしながら

千里【僕が初めて諏訪に来た四年生になる年の大晦日…パパが初めてこれを買ってきてくれたときから僕の大好物で楽しみとなっているんだ。】

   しばらく買い物をしてからレジにいく。

千里「お願いしまぁーす!!」


⚪小口家・台所
   夜が明ける。

千里「ただいまぁ!!」
珠子の声「あ、せんちゃんお帰り。ご苦労様。朝ごはん出来てるわよ。」
千里「はーい、うーっ寒いっ。もーママ!!大晦日くらい、ゆっくり寝坊させてくれよ。」

   欠伸。

千里「二度寝する…」

   台所を出ていく。

珠子「こらっ、せんちゃんっ!!…んもぉっ。」

   鼻を鳴らして食卓に着く。

珠子「いただきまぁーす…。」

   朝七時。

⚪同・千里の部屋
   千里、再びベッドに入って気持ち良さそうに眠っている。


⚪高橋家・麻衣の部屋
   麻衣、布団で目覚める。

麻衣「んーっ、よく寝たぁ。いま何時ぃ?」

   時計を見る。

麻衣「七時か、ぼちぼち起きようかや…」
 
   布団を出てネグリジェを脱ぐ。

麻衣「ふーっ、寒っ。」

⚪同・台所 
   房恵が食事の支度をしている。

麻衣「おば様、おはよう。」
房恵「あら、麻衣ちゃん今日も早いわね。おはよう…学校ないからもっと眠ってても良かったのに。」
麻衣「いえ、何かへー目が覚めちゃった。ご飯食べます。」
房恵「そう?なら私もこれからなの。一緒に食べましょ。」
麻衣「はい。」

   二人、食卓に着く。食べ出す。

房恵「でも麻衣ちゃん?大丈夫なの?」
麻衣「何がです?」
房恵「寂しくない?お正月くらい、ご実家に帰って良かったのよ。」
麻衣「いえ、いいです。ほいだって、おば様といるのは楽しいしほれにおば様、私がいなくなったらお寂しいでしょ?」
房恵「麻衣ちゃん…。」

   笑う。

房恵「お味噌汁のお代わりは?いる?」
麻衣「あ、ありがとう。お願いしまぁーす!!」


   食事が終わり、二人、お茶を飲んでいる。そこへ、電話が鳴る。

麻衣「あ、」
房恵「いいわよ、麻衣ちゃん。私が出る。」

   出る。

房恵「はい、高橋にございますが?あら、まぁ。はいはい、おりますよ。ちょっとお待ちくださいね。」
麻衣「誰から?」
房恵「麻衣ちゃんのお母様よ。」
麻衣「うちの母さん?なんだら?こんねに朝っぱらからどーしたっつーだら?」

   代わる。

麻衣「はーいっ、おはようございます。代わりました、麻衣です。」

   柳平紅葉が電話の相手

紅葉「あ、麻衣?はーるかぶりね。」
麻衣「母さん、どーしたんです?何?」
紅葉「あのね麻衣、急で又申し訳ないんだけどね…」
麻衣「はい?」

   話を聞いている。


   麻衣、電話を切って台所へと戻る。

房恵「あ、麻衣ちゃん。お母さん何だって?」
麻衣「おば様、ふんとぉーにごめんなさい。ほれがな…」

   話をする。

房恵「え?まぁ!!又あんた転校かい?」
麻衣「えぇ。諏訪地域で決められている事ですので、転校はどうしても仕方ないんです…こういう場合…。」
房恵「で?次はどこへ?理由は何なんだい?」
麻衣「あぁ…原村のアパートの期限が切れるもんでこれを期に、金沢のおば様の家でおいでといって下さったので金沢へ行くんですよ。」
房恵「まぁっ!!金沢ってあんた…今度は北陸まで出ちまうんだねぇ。寂しくなるよ。」
麻衣「おば様、何いっているんですか。違うに決まっています。金沢地区ですよ。茅野市の。ですから私は、今度からは、茅野市の東中に行かなくちゃ行けないんです。」
房恵「何だ、ビックリしたよ。茅野市か。私ゃ、麻衣ちゃんが今度は県外へ出ちまうかと寂しくてしょうがないと思っていたんだが、それなら良かったよ。又会えるね。いつでも遊びにおいで。」
麻衣「嫌だわおば様。ほれじゃあへー別れの挨拶みたいじゃあ!!私はまだ、今すぐにいくって訳じゃないんですから。」
房恵「ごめんごめん、それもそうだね。で、いつからだい?」
麻衣「まぁ、多分きっと春休み明けでしょう。春休みまでに荷を積めて引っ越しと言う形になるんだと思います。でも今度は」

   嬉しそう。

麻衣「私一人じゃないから嬉しいんです。家族がね、花蒔に家を建てるっていって、ほの繋ぎまでに金沢のおば様の所へ居候として置いていただくの。金沢のおば様の家はかなり広いもんで、私達家族は全員入るわ。」
房恵「まぁ、新築か、剃りゃ良かったねぇ。あんたも楽しみだ!!」
麻衣「ええっ、はいっ!!」

   二人、笑って語り合っている。
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