石楠花物語中学生時代

□中2時代
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『石楠花中2時代』

⚪小口家
  
小口珠子の声「これっ、千里っ!!いつまで寝ているのっ!?」
小口千里「んー…」

   珠子、千里の部屋に入ると布団を丸めて千里を床に出す。

千里「んー、寒いよママ…おはよう…」
珠子「寒いよじゃありませんっ!!今何時だと思っているの!?」
千里「んー?」

   時計を見て慌てる。

千里「うわぁーーーーっ!!!」


   千里、急いで着替えて、トイレに入り、歯を磨きながら顔を洗い、キッチンに入る。

   夕子、二人の妹、珠子が食事をしている。

珠子「せんちゃん、早くしなくちゃ。」
千里「う、うん。」

   コップにレモンティーを二杯飲む。口に食パンをくわえて学校鞄を背負う。

千里「い、行ってきまぁーす。」
源夕子「おい、姉さん。」
珠子「せんちゃん、体操着は?」
千里「あ、そうだ。忘れてた。」
夕子「姉さんってば!!」

   珠子、千里、ドタバタ。

頼子「ママ、」
忠子「千兄ちゃん、」
珠子、千里「何っ!!」
夕子「時間、」
珠子「だから急いでいるんじゃないの!!」
千里「よりちゃんにただちゃん、君達もぼさーっとしてると遅刻するぞ!!」
夕子「冷静になって!…時計を見な。」
珠子、千里「ん?」

   二人、時計を見る。まだ7:30

珠子、千里「え?」
夕子「何慌ててんだい、まだこんな時間じゃないか。そんねに急ぐことないよ。」
千里「本当だ…」
珠子「ご、ごめんなさい…せんちゃん、」

   千里、気抜けしたように学校鞄を下ろして食卓につく。

千里「なーんだ。急いで損した…いただきまぁーす!!」

   朝食を食べ始める。レモンティーを何杯もコップに入れて飲む。

   8:15。千里、時計を見る。

千里「や、やばい!今度こそ遅刻するぅ!!」

   頼子、忠子はもう玄関。

頼子、忠子の声「行ってきまぁーす。」
珠子「はぁーい、気を付けなさぁーい!!」
千里「僕も行かなくちゃ!!」

   ランドセルを背負って立ち上がるが、少し前屈みになる。

珠子「せんちゃん、ご飯食べたなら早く学校へ行きなさい。」
千里「そ、その前に…トイレぇ!!」

   台所を出ていく。

   千里、トイレのドアをドンドン。

千里「叔母さん?叔母さんだろ?早く出てよ、僕学校に行かなくちゃいけないんだ!!」
夕子「もう少し待ってな。」
千里「叔母さんーっ!!」

   珠子が洗濯かごをもって出てくる。

珠子「どうしたのせんちゃん、まだいたの?」
千里「叔母さんがちっとも出てくれないんだ。」
珠子「だったら学校へ早くお行きなさい。近いんですから、その方がずっと早いでしょう。」
千里「我慢できないもんっ!!」
珠子「朝からレモンティーをがぶ飲みするからよ。ほらほら、早く行ってらっしゃい。」
千里「んー、」

   恨めしそうに

千里「途中でおもらししちゃったら、ママと叔母さんのせいだからね」

   千里、小走りに出ていく。

   通学路を前を押さえて走る。

⚪諏訪中学校
   千里、校門を入る。チャイムが鳴る。

千里(やばっ、もう始まるの?)

切羽詰まりながら靴を履き替える。

千里(このままトイレ行ってたら、トイレには間に合うだろうけど、到底授業には間に合わないし…かといって、このまま教室に入ったら、授業には間に合うかも知れないけど、確実にトイレは間に合わないよ…どうしよう…)

   おもらしを想像する。

千里(嫌だ、それだけは絶対に嫌だっ!!いいや、先生に起こられること覚悟でトイレ行こう…授業に遅れようが、おもらししちゃおうが…どっちにしろ怒られるんだ…)

   千里、苦しそうに前を押さえて廊下を歩き、階段を登っていく。

⚪同・男子用のトイレ
   千里、少しためらうが急いで駆け込む。

千里「…」

   男子便器の前。

千里(はぁ…良かった…なんとか間に合った…。)

   個室は七つある。一つがしまっており、カチャカチャと音がする。

千里「?」

   水を流したりする音。

千里(こんな時間に…誰かいるの?)

   時計を見る。

千里(それとも…お化け!?)

   そわそわ。

千里(うわーん、嫌だよ、早くしてよ…怖いよぉ!!)

   個室が開く音。

千里(うわーん、ママぁ!!)

   柳平麻衣が出てくる。千里を見る。

麻衣「あれ?」
千里「おりょ?」
麻衣「あ、あら…ごめんなさい…ここ、男の子用だったのね…私、間違えちゃった…」
千里「い、いや…大丈夫って…ありゃ…」

   ばつが悪そうに頬を染める。

麻衣「あんた、せんちゃんよね。私、今日からここへ転校してくることになったの。改めて、柳平麻衣。宜しくな。じゃね。」

   小粋に出ていく。

千里「ま、…麻衣ちゃん…?」

   麻衣が去ると、顔は真っ赤になる。

千里「か、か、か、…彼女がまさかここに…しかも彼女に…」

   頭を抱えてヒステリックになる。

千里「おしっこしてるとこみられたぁーーーーーーっ!!!」


   肩を落としてトイレを出る。

   廊下を歩く千里。

千里(んー、きっと藤森先生かんかんだろうなぁ…また廊下に立たされるんだろうなぁ…)

   しゅんとして教室に入る。

⚪同・教室
   2-1。千里、ドアをそっと開けてそろそろ。クラスメート、千里に注目。

藤森明美先生「小口君っ!!!」
千里「はいぃっ、」
藤森先生「君と言う子はっ、また今日も遅刻ですか!!」
千里「ごめんなさいっ。でも…今日はどうしても…トイレに…」
藤森先生「言い訳はよろしいっ。君は、新学期早々遅刻とは…バケツをもって廊下に立っていなさいっ!!」
千里「はい…」

   千里、しゅんとなってバケツを二つ持って廊下に行く。クラスメート、クスクス。

   千里、水のたっぷり入ったバケツを両手に持って廊下に立っている。

   暫くして。藤森先生が顔を出す。

藤森先生「小口君、君ももう入ってきてよろしい。全員にお話があります。」
千里「はい…」

   千里、教室に入る。
藤森先生、一旦退室。

⚪同・教室内
   しばらくして

藤森先生「それではここで、みなさんに発表があります。今年度より、このクラスに転校生が一人、入ることとなりました。」

   クラス、湧く。

藤森先生「静かにっ。それでは、紹介致します。…入ってきて。」

   麻衣が入ってくる。

千里「!!!」
藤森先生「柳平さん、自己紹介をして。」
麻衣「はい。原中から参りました、柳平麻衣と言います。宜しくお願い致します。」

   男子たち大盛り上がり。

藤森先生「しーずーかーにっ。はいっ、それでは柳平さん、あの男の子の隣の空いている席に座ってね。小口千里って言うバッチをつけた子の隣ね。」
麻衣「はいっ。」

   千里の隣に座ると、優しく微笑みかける。千里、ドキリ。

藤森先生「はい。それではみんな、授業始めますよ。」


   休み時間。男子たちが麻衣によってたかってる。千里は中には入れずにおどおど。

小平海里「ねぇ君、メガネっ子なのに可愛いね。俺、小平海里宜しく!!」
後藤秀明「原中から来たんだ、いいよなぁ原村。俺もたまに行くよ。あ、俺、後藤秀明!!」
丸山修「僕、丸山修。仲良くしよっ。」
麻衣「えぇ、こちらこそ。私、柳平麻衣。宜しくなして。」

   笑う。微笑んで、隅で小さくなっている千里を見る。

麻衣「せんちゃん、何やっとるだ?」
千里「あ、あ…えぇ。」

   麻衣、千里も輪の中に入れる。男子たち、千里を睨む。千里、それを見て、叉もしゅんとなる。


⚪同・給食ホール
   ランチをしている。千里は後藤、小平の間に挟まれている。

後藤「千里、今日はお前の好きなカツカレーとプリンだぞ。」
千里「うんっ。」

   千里、牛乳を飲んでいる。

小平「あれ?千里、お前って牛乳飲めたっけ?」
千里「大っ嫌い!!でも、やっぱり嫌いなもの終わらせて、後で好きなもの食べたいし…それに、」

   からだを見る。

千里「僕って小さいだろ?男の子なのに、135しかないんだ。だから…カルシウムとって大きくならなくちゃ…。せめて、中学卒業までには、後、25pは伸びればいいな…」
小平「頑張れ千里っ!!」
後藤「ファイトだ千里っ!!」
千里「うんっ!!」

   カツカレーを書き込む。

千里「ん、僕もう一杯お代わりもらって来よっと。」

   ルンルンと行く。

後藤「あいつは、ちびの癖に…」
小平「よく食うぜ…。」

   間もなく。再び食べ始める千里。

千里「よーし、ミルクは終わったし…後は好きなものを食べるだけだ。」
小平「なぁ、ところで千里、」
千里「んー?」
小平「確かお前、俺らに相談事があるとかって…」
千里「あぁ…うん。」
後藤「何だ?言ってみろよ。」
小平「言ってみろ、何でも聞くぞ。」

   千里、赤くなって手を止める。

千里「ここではちょっと話しにくいよ…。学校終わってからでもいいかな…」
小平「あ、勿論いいよ。」
後藤「じゃあ、あのいつもの上川バイパス沿いでな。」
千里「うん。ありがとう。」

   二人、両側から笑って千里の肩を叩く。千里、ビックリして噎せ返る。二人、再び笑って千里の背を擦る。
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