石楠花物語中学生時代

□中1時代
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⚪柳平家
   麻衣、紅葉、柳平。

麻衣「え、又転校?」
紅葉「ごめんね麻衣、でもね諏訪のおばさんがどうしても泊まり込みであなたに来てほしいって!」
麻衣「なら、転校なんてしなくてもおばさんのところに通えば…」
柳平「通いは大変だよ。知っての通り、父さんも母さんも仕事があるから送り迎えは出来ないんだ。」
麻衣「なら、おばさんちから今の学校へ!」
紅葉「城南から原村へ、どうやって毎日通うの?」
麻衣「ほれはぁ…」
柳平「そう言うことなんだ、ごめんな麻衣。」
麻衣「(つんっとする)分かったわよ…つむとしおは?」
柳平「つむは、辰野へ交換授業で数ヵ月、ホームステイ。」
紅葉「しおはこのままここに残るわ。」
麻衣「ちぇっ、私一人か。で?どこへ転校させんの?」
紅葉「諏訪中よ。」
麻衣「ふーん、諏訪中ね。…ん、諏訪中?」

   少し考える。

麻衣「諏訪中っ!!」

⚪(回想)

千里「僕、…諏訪中でキャンプに来たんだけど…」

   (終わる)
麻衣(せんちゃんと一緒になれるって訳か…ビックリするだろうな…彼…)

千里「(自宅で勉強をしながら)クシュンッ…風邪かな…?」

麻衣「いいわ、私転校してあげるに。」
紅葉「そう、ありがとう。本当にごめんね。」
麻衣「いえいえ、でも今度は何の用事なのかしら…?」

⚪白樺高原
麻衣、健司、磨子

健司、磨子「え、転校っ!?」
麻衣「ほーなんよ。急にしろって。」
健司「折角一緒になれたのになぁ…寂しくなるよ。」
麻衣「何よぉ、転校ったって諏訪の内だだもん。いつだって遊べるらに。な。」
磨子「そうよ…てか、今度は何処なの?」
麻衣「諏訪中よ。」
磨子「ふーん、諏訪か。」
健司「諏訪中…諏訪中だとぉ!?」
麻衣「ほ、ほーよ…。」
健司「まさか、お前…あの、千里と一緒の学校か!?」
麻衣「ま、ほいこんなるわね。」
健司「ほいこんなるわねって…(やきもき)」

   健司、立ち上がって石を湖に投げ入れる。

磨子「どうしたんよ、健司!!」
健司「ベーつーに…」
 
   麻衣、伸びをする。

麻衣「ほれにしても…早いんね…へー2月…。2月?あ!」

   麻衣、健司にプレゼント包みを渡す。

健司「な、なんだよ。」
麻衣「まいぴうからのバレンタインだに。」
健司「は、バレンタイン?」
麻衣「ほーだに。ギりで。」

 『バレンティーノの義理チョコを』

健司「ほ、ほんなの分かってらぁ…。開けていいか?」
麻衣「いいに。」

   健司、開け出す。麻衣、クスクス。

麻衣「ごたっち。やっぱりB型さんね。」
健司「おぉっ!!!」

   健司、包みを開けてうれしそうに目を見開く

健司「お、チョコレートケーキじゃん!!ひょっとしてこれ手作り?」
麻衣「勿論!!」
健司「わぁー、サンキュウ。俺、これ大好き!!いただきまぁーす。」

   健司、一切れを手で持って豪快に食べ出す。

磨子「あんたさぁ…みっともないからやめなさいよ。」
麻衣「ほーほー、ほれが御曹司の食べ方ぁ!?」
健司「(食べながら)うっせぇーなぁ、こういう風に食べた方が旨いんだよ!!」

   健司、次々とケーキを食べていく。磨子、麻衣、呆然として見つめている。

  
   健司、ワンホールを完食して満足気。

健司「んー、食った食った…」
麻衣「呆れた人!!ワンホールを一人で一度に食べちゃうだなんて。」
磨子「人間じゃないな…」 
健司「人間じゃなくて結構。磨子、お前からは何もないのか?」
磨子「あーりーまーせんっ!!誰があんたなんかにあげるのよ。ギりでもお断りよ。」
健司「ちぇっ、さーてと。なんか腹へったな…カツカレーでも食いに行こっと。」

   麻衣、磨子、健司をこずく。

麻衣、磨子「健司つ!!!」
健司「いたっ!!」


⚪上諏訪駅・キオスク
   千里、後藤、小平、眞澄がジュースを飲みながら話をしている。

後藤「で?千里、先日のテスト何点だった?」
千里「最悪…又もや赤点さ。」
小平「教えろよ、」
千里「嫌だよぉ、恥ずかしい…まだママにも見せていないんだ…。何て言われるか…。」
眞澄「チーちゃんのママ、怒らすと恐いからね…。ま、勉強しないチーちゃんもチーちゃんで悪いんだけどさ…」
千里「うっさいなぁ…」
後藤「いいからさ、な、教えろよ。秘密、な。誰にもチクらねぇからさぁ。」
小平「悪いなら悪いで、俺たちお前に勉強教えてやるよ。」
千里「本当に?」
二人「うん、うん。」
千里「なら…」

   鞄の中から答案を取り出す。

小平「なんだお前、答案用紙持ってんじゃんか。」
千里「ママに見つからないようにいつも隠し持ってんだよ。パパがいなくなってから勉強に関してはママが鬼になったからね。」

   千里、二人に答案を見せる。眞澄も覗き込む。

千里「…。」
小平「音楽…満点。理科、60点…英語、89点。なんだ、いいじゃねぇーか…」

   千里、赤くなって下を向く。

後藤「で?…何?国語、10点…数学、5点、社会科…0点っ!?…嘘だろ!?」

   小平、後藤、顔を見合わせて大笑い。眞澄もクスクス。

後藤「こりゃ俺たちよりも悪いや。」
小平「千里らしい。」
眞澄「ダメね、千里は。」

   千里、答案用紙を持って泣きながらキオスクを出ていく。三人、まだ笑っている。
⚪小口家
   千里、家に駆け込む。玄関には珠子。

千里「(ギクリ)マ…ママ…ただいま。」
珠子「お帰り千里。なんかママに隠していることがあるわね?」
千里「…え?」
珠子「とぼけても無駄よ。この間のテスト、見せなさいっ。」
千里「…はい。(シュンとなる)」

   珠子、千里からテストの答案を取り上げてみる。千里、強く目を閉じる。

珠子「100点、60点、89点…いいじゃないの。10点、5点…0点ですって!?」
千里「ひぃーっ!!!」
珠子「千里ーーーっ!!!」


   (千里の部屋)
   千里、しくしくと泣いている。そこへ小口頼子(5)

頼子「千兄ちゃん、どうしたの?又、ママに叱られたんか?」
千里「頼子か…何でもないよ…。」
頼子「千兄ちゃん、元気出してね。これ…

   焼きそばカレーパンを手渡す

頼子「私んのだけどあげる。」

   頼子、戻っていく。千里、焼きそばパンを手にとって泣きながら食べ出す。電話。

頼子「はい、小口です。はい、はい、はい。千兄ちゃんですね。お待ちください…。千兄ちゃん、後藤さんって人から電話だよぉ!!」
千里「後藤君?…はーい。」

   受話器を変わる

千里「はい、千里です。何?」
後藤「いや千里、さっきはごめんな。どうだ?」
千里「どうだ、じゃないよ。あれからママにこっぴどくお説教喰らった。で、何?」
後藤「や、千里あのな。さっきお前帰っちまったからさ、話せなかったんだけど…今度うちの学年に転校生が来るらしいんだ。」
千里「転校生が?」
後藤「あぁ、でな?偶々小平がスーパー・コットン1/2の前を歩いてたらさ、ほの近くの家に見た事ない子がいたんだって。もしかしたら彼女がそうかもしれないぜ。」
千里「へぇ。女の子?男の子?」
後藤「女の子だってよ、すっげー美人らしいんだよ、な!!見に行こうぜ千里、な!!」
千里「美人の女の子かぁ…どんな子かなぁ。(デレデレ)」
後藤「お前って…気分の切り替え早っ。単純なやつ。」
千里「乗った!!見に行こう。」
後藤「よしっ、決まり!!」

   千里、家を飛び出す。

千里「行ってきまーすっ!!」

   『転校生の女の子』

⚪高橋家
   コットン1/2の近くの家。麻衣が中年の高橋房恵と共に庭にいる。

麻衣「よしっと、終わった。」
房恵「麻衣ちゃん、御苦労様。いつから来るんだい?」
麻衣「新学期直前。ほいじゃあねおばさん、宜しくなして。」
房恵「えぇ。楽しみにしてるわ。こちらこそ宜しくね。帰るの?」
麻衣「はい。」
房恵「そう、気を付けて。」

   麻衣、元気よく手を降って帰っていく。房恵も家に入る。

   そこへ、千里、後藤、小平。

後藤「小平、何処だよ?」
小平「あの家だよ、あれ…もういないや。」
千里「残念、」
後藤「なぁ小平、どんな子だったんだ?詳しく教えろよ。」
小平「や、僕もよくは見ていないけど…確か小柄で、痩せてて…三つ編みで、眼鏡をかけてたな。如何にも大和撫子って感じの子だったよ、」
後藤「あの、永田眞澄とは大違い!!」
小平「その通り。」

   二人、笑う。千里、固まる。

千里「…。」

   三人の後ろに眞澄がいる。

眞澄「私が?何ですって…?」
後藤・小平「ん…(恐る恐る振り向く)」
眞澄「ちょっと、三人ともこっち来なさいっ!!」

   眞澄、三人を引きずっていきぼこぼこにする。
千里「僕、何も言ってないのにぃーーーっ!!冤罪だぁー!!」

   眞澄、三人をぼこぼこにすると手をパンパンと払って鼻を鳴らし、去っていく。三人、目を回してくたばっている。

⚪原中学校
   卒業式のあと、麻衣のお別れ会をやっている。麻衣、色々な人から花束やプレゼントを貰っている。

麻衣「(泣きながら)ありがとうみんな、ふんとぉーにありがとう。」
清水「寂しくなるな、柳平。」
岩井木「又、原村にも遊びに来いよ。」
西脇「僕らも諏訪に遊びにいくからさ、又遊ぼうよ。」
茶目子「諏訪でいじめられんじゃないわよ。」
野々子「手紙とか電話してよね。」
麻衣「ありがとう、あんたらも元気でな。そして、岩井木、西脇、清水、あんたらはへー決して健司を虐めないこと。みんなで仲良くな。ほして健司、あんたは懲りずに何度も同じ手に引っ掛かっちゃあいけんに。虐められても立ち上がれる、強い男になること。泣いちゃだめ。」
健司「麻衣、色々ふんとぉーにありがとう。転校してからも、磨子と又三人で遊ぼうな。」
麻衣「えぇ、勿論。先生、今までありがとうございました。さようなら。」
小林先生「柳平さん、向こうに行っても頑張って。立派な人になるのよ。さようなら。」

   麻衣、泣きながら送り出される。

⚪柳平家
麻衣、柳平、紅葉、紡、糸織。

麻衣「つむとしおとは、離れ離れんなるし、母さんも父さんもいない…寂しくなるわ。私一人でおばさんちでやっていけるかしら?」
紅葉「大丈夫、麻衣、あなたなら大丈夫だわ。」
柳平「あぁ。何かあれば近くなんだ、すぐに飛んでいくさ。」
紡「ほーだに。学校が違うったってさ、私達遠く行くわけじゃないだだもん、会いたくなりゃ電車でディンディーンと、な。」
糸織「ほーだに。僕はこのまま原村にいるしさ。」
麻衣「みんな…」
紡「何泣いてるんよ、あんたは。この泣き虫麻衣!!」

   そこへ房恵。

紅葉「あ、おば様ね。」
けいと「おぉ、これはこれは…今日から麻衣がお世話になります。どうしようもない娘ですが、面倒見てやってください。」
房恵「いえいえ、麻衣ちゃんはとてもいい娘さんですわ。それでは数ヵ月、お借りいたしますわね。では、麻衣ちゃん…」
麻衣「はい、おばさん…」
紡「気を付けてなぁ、まーい!!」
糸織「辛くなったらいつでも戻ってこいよぉーーーっ!!」
紅葉「くれぐれも、体には気を付けて。おばさんの言うこと、きちんと聞くのよ。いい?」
麻衣「勿論よ。」
柳平「それでは…」
房恵「はい、では…さぁ麻衣ちゃん。そろそろ参りましょう…。」
麻衣「えぇ、宜しくお願いします。」
   麻衣、婦人、車に乗り込むと車は動き出す。家族と麻衣、互いに見えなくなるまで手を降っている。

⚪岩波家・健司の部屋
   健司、バイオリンを弾いていたが止めてぼんわりと考え事をするように。

健司(麻衣…俺、今気がついたんだ。ひょっとして俺ってお前の事…好きんなっちまったかもしれないんだ。お前が俺を庇って助けてくれたあの日から…。)

   フット笑って再びバイオリンを引き出す。

   ED『初恋のメロディー』
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