石楠花物語中学生時代

□中1時代
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OP『燃えドランの歌』

⚪元木マンション・イベントホール
   元木優一(52)を始め、多くの大人たちがイベント会場の準備をしている。

スタッフ「社長、これでいいでしょうか?」
元木「あぁ、完璧だ。これで行こう。」
スタッフ「しかし、こんな田舎のマンションに本当にあの燃えドランが来てくれるんですね。あれって、子供たちに大人気じゃないっすか。あんな有名なものがこんなひなびた田舎町に。」
元木「あぁ大丈夫だ、アポはとってある。やぁね、ここも若いもんが少なくなって老朽化もしてきたから化け物マンションとか、変な噂がたっちまったからね。少しでもそのイメージを消したいんだよ。」
スタッフ「そうですね。でも、大丈夫でしょうか?」
元木「どうした?何かあるか?」
スタッフ「いえ、ここも少し古いので…色々と危険がないかと…」
元木「なぁーに、それにゃ心配ない。一部屋一部屋メンテナンスさせてある。」
スタッフ「しかしねぇ、なんてったってここは100世帯も住める諏訪圏最大級のマンションですが50年以上の木造ですからね。」 
元木「お前、疑ってるな。元木は昔から完璧なマンションだと名高いんだぞ!!私の父から数えてこれで私で二代目だ!!」
   元木、笑う。

⚪原中学校・一年一部
   4限目、国語の授業中。柳平麻衣(13)、岩波健司(13)も後ろの方に座っている。

健司「…。」
   
   時計ばかりを気にしたり、体を小刻みに揺すっているが、きちんとノートを取っている。

健司(くそっ…)
   
   麻衣を横目で見る。麻衣は真面目にノートを取っている。
健司(ううっ…あと、40分もある…)

   (十分後)
   シーンとした教室。緊迫した空気の中、清水千歳(13)が手を挙げる。担任の小林由美(35)は呆れ顔をして腰に手を当てる。

小林先生「清水君、又君ですか?」
清水「先生、トイレ!!」
小林先生「全く、早く行きなさい…」
清水「はーい。」
健司(くそ、チーちゃんのやつ先に行き上がって…)
   
   清水、悪気もなく小粋に教室を出ていく。

小林先生「他に、トイレ行きたい人いる?」
   
   シーン。

小林先生「大丈夫ね。なら授業続けますよ。」
   
   田島茶目子(13)が手を揚げて、ニヤニヤして意地悪っぽく健司を見る。

茶目子「先生、岩波君がさっきから変です。」
健司(てっめー…)

   恨めしそうに茶目子を睨む。茶目子、嫌みっぽくつんっとする。

小林先生「本当に?岩波君、どうしたの?」
健司「い、いや…別に何も…。」
小林先生「そう?ならいいわ。(教室を出る)では、先生は少し職員室に行きます。自習なさい。」
健司「じ、自習かよ…」
小林先生「学級長の矢部川さんは、サボる人がいないか確りと見張ること。」
矢部川野々子「はいっ。」
健司(依りにも寄って学級長が、あの性悪女とはな…)


   (時間が立っ)
   男子たち、健司を見てひそひそ

岩井木徹「おい、岩波のやつ絶対小便我慢してるぜ」
西脇靖「あの顔はかなりヤバそうだぜ。」
名取未央「その内絶対もらすな。」
菊池秀一「俺、もらすに一票!!」
平出望美「俺も、俺も!!」
健司(M)「くそ、みんなして笑いやがって…自分達も同じ状況んなってみろってんだ。」
   
   健司、ノートをとっているが左手を机の下に下げて下腹を押さえる。

健司「ううっ…」
   
   麻衣、健司の様子に気がついて心配そうに健司を見る。健司、態と麻衣を睨む。

   (残り15分)
   健司、ノートを取るのをやめ、両手で苦しそうに下腹を押さえ込んだまま固まってしまう。

麻衣「(小声)健司?健司、どうした?」
健司「な、何でも…ねぇーよ…」
   
   目立たぬように足腰を動かしている。

麻衣「(小声)具合悪い?」
健司「だで何でもねぇーんだって…」
   
   苦しそうに歯を食い縛り、小刻みに震える健司。

   (数分後)
   クラス全員、一斉に健司の方を見る。

健司「…。」
   
   健司も椅子に座り、机に向かったまま。黙って下を向いている。ズボンは濡れ、足元まで水浸し。

菊池「ほれやった!!俺、絶対もらすと思ってたぜ。」
西脇「おーい、岩波健司がもらしたぞ!!」
岩井木「普段から威張ってる、このハンサムボーイがな。」
名取「まさか、お前みたいなやつがおもらしするなんてな。」
平出「どうしたんだ、岩波健司君、」
   
   健司、椅子に座ったまま泣き出してしまう。麻衣、机を強く叩いて立ち上がる。クラス全員、びくりとして麻衣を見る。

麻衣「これっ、やめな!!健司、泣いてるらに!!」
   
   健司、まだ俯いて真っ赤になって者繰り上げている。

麻衣「大丈夫だに、健司。誰にだってあるこんよ。」

   男子たちをきっと睨み付ける

麻衣「もしあんたらが同じ状況になったときにこんなこんされたらどうすんのよ!?」
   
   麻衣、バケツを出して水を汲む。男子たち、キョトンとしてみている。麻衣、バケツを床に置くと履いていたスカートを脱いでバケツの中に付ける。

全員「?!!」
   
   麻衣、黙って下着を脱ぐ。男子たちは麻衣に釘付けになり、女子たちは目を丸くして麻衣を見る。健司も泣き止んでキョトンとしているが、おどおどと目のやり場に困っている。下着を水浸しにすると、再び下着とスカートを身につける。

麻衣「ほら、これでOK。…私、おもらししちゃった…なんか文句ある?」
   
   男子たち、呆然と黙っている。そこへ小林先生が戻ってくる。麻衣、一気に健司の頭からバケツの水をかける。健司、びしょびしょのまま固まっている。

小林先生「みんな、自習なさいって言ったでしょ!!何やってるの。」

   麻衣を見る

小林先生「柳平麻衣さん!!あなたは一体何をやっているのです!」
麻衣「私、おもらししちゃったんです!!それを岩波君が笑うもんで…」

   そっと健司にウィンク

小林先生「あなたはもう少しまともな子と思っていました。こんなことをするなんて!!早く医務室へ行きなさい!!岩波君も連れていってあげなさい…。そしてあなたは、午後の授業は廊下にたってなさい!!」
麻衣「はい。…健司、行こ。」
   
   健司の手を引いて教室を出る。



⚪同・廊下
   歩く二人。麻衣はそっと健司に綺麗に畳んだスラックスを渡す。

麻衣「はい。」
健司「?」
麻衣「何か役に立つときのためにと思って学校に置いておいたの。良かった、役に立つときが来て…」
健司「俺…に?」
麻衣「ほいだって、午後もあるんよ。体操着のズボンとか履いてたら又、“あいつもらした!!”ってバカにされるら。だでこれ、履いて。健司、男子用のスラックスは大きすぎて履けないって言って、スラックスだけは女子用を履いとるら。だで、サイズ私と同じだでピッタリ。な。」
健司「麻衣…(涙笑い)ありがとう…。ほれにお前が…」
麻衣「(恥ずかしそうに)良いってこんよ。友達だら。これくらいして当然。」

⚪同・医務室
   大沼奈保子(45)がいる。そこに前景の二人。

大沼先生「どうぞ。」
麻衣「先生、私おもらししちゃいました。着替えさせて。」
大沼先生「分かりました、いいですよ。ちょっと待ってね…サイズは?」
麻衣「Sです。」
   
   大沼先生、麻衣に体操着のズボンを渡す。

麻衣「ありがとうございます。」
大沼先生「いえ…ん?」
   
   健司を見てから麻衣を見る。

大沼先生「おや、本当は…トイレ間に合わなかったのは君ね。」
健司「あ…いや…」
麻衣「…(下を向いて小声)どうして…」
大沼先生「分かるわよ、何年保険の先生やっているの。で、あなたは、彼をカバってあげたのね。」
健司「ほーです。麻衣は俺をカバってくれたんです!!(健司、事を話し出す)ほれなのに、小林先生に怒られて、午後は廊下に立たされる…」
麻衣「いいんよ健司、私は…」
健司「いや、ダメだ!!お前は何も悪くないのに…俺が先生に。」
大沼先生「そういう事情なら、二人共大丈夫よ、先生が小林先生に話してくるわ。二人とも、着替えたら教室にお戻りなさい。」
   
   大沼先生、部屋を出ていく。麻衣、不貞腐れて斜め上を向いて鼻を鳴らす。

健司「?」
麻衣「ケッ、折角授業サボれる絶好のチャンスだっただに…。」
健司「は?」

   やれやれとお手上げのポーズ
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