石楠花物語中学生時代

□中1時代
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⚪白樺高原
   麻衣、健司、磨子。

麻衣、磨子「え、燃えドランのイベント?」
健司「あぁ。どうだ?」
麻衣「私行きたぁーい!!」
磨子「私も。てか、珍しいわね。あんたがそんなの誘うだなんて。」
健司「いいだろ、別に。」
麻衣「ほーと決まりゃみんなで行きまい。嬉しい、健司、ありがとう。とても楽しみ!!」

   健司、照れ笑いをする。

⚪小口家
   千里、駄々をこねている。

千里「ね、ママお願い。行かせてよ!!ね、ね。」
珠子「お友達と?」
千里「僕一人。」
珠子「行けませんっ!!もし一人で行ってて何かあったらどうするの!?」
千里「いいじゃない。僕だってもう中学生なんだ。それに、すぐ近くなんだよ!!それくらい行かせてくれよ!!」
珠子「パパがいいっていったらね。」
千里「どうしてさ!?」
珠子「お友達と一緒でないのから、パパとママと一緒でないと行けません!!」 

   千里、頬を膨らめる。

   夕食の席。小口、珠子、千里。

小口「え、燃えドランのイベントに?」
珠子「そうなのよ。せんちゃんがどうしてもって駄々をこねるのよ。」
小口「いいじゃないか、行かせてあげよう。」
千里「本当に!?やったぁ、パパありがとう!!」

   千里、小口に抱き付く。

小口「おいおい…やめなさい千里。」

   珠子もクスクスと嬉しそう。

⚪諏訪市・元木グループマンション
   多くの子連れがエントランスにいる。麻衣、磨子、健司、千里もいる。しかし中は薄暗く、不気味。

麻衣「楽しみね、今日の夜…諏訪湖花火を見ながら、そのあとは燃えドランのファンミーティング。」
健司「あぁ。」
磨子「あんた、昔は燃えドランなんて全く興味なかったくせに。ぎょぴちゃんのパンツはもう卒業ちまちたか?」
健司「うっせぇーやいっ!!!ほれを言うな、ほれをっ!!」
麻衣「んじゃ、磨子ちゃん、健司、遊びに行こう。」
健司「ほいじゃあ、磨子に麻衣、行こっ。」
二人「うんっ!!!」
   
   麻衣、磨子、健司、走り去っていく。

小口珠子(「せんちゃん、おしっこは?」
千里「やめろよ、僕はもう赤ちゃんじゃないんだ。」
小口「そうだよ、珠子。少し千里を過保護にし過ぎだぞ。」
珠子「そうかしら…」
千里「うん。じゃあ僕、時間まで遊びにいってくるね。」
珠子「分かったわ。でもあんまり危険なところにいってはダメよ。怖かったらママのところにすぐ戻ってきなさい。」
小口「珠子っ!!」
千里「ありがとう、でも僕は大丈夫さ。いってきまぁーす。」
   
   千里、走り去っていく。

   時間がたつ。麻衣、健司、磨子、千里がそれぞれ同じ場所で花火を見ている。うっとりと。

それが終わると、イベントホールでミーティングが始まる。四人と他子供たち、大興奮して見ている。

   終わる。

健司「ふぇー、楽しかった。」
麻衣「ふんと、健司ありがとな。」
磨子「本当によかったわ。健司、なかなかジェントルマン!!」
健司「でへへ、やめろよ。照れるじゃねぇーか。さ、帰るか。」

磨子、麻衣「えぇ。」

   麻衣、健司、磨子、エレベーターに乗り込む。

⚪マンション・エレベーター内

麻衣「なぁ、変える前にさ、ちょっと最上階行ってみない?」
健司「お、いいねぇ。何回だっけ?」
磨子「確か、15階じゃない?」
麻衣「高っけ…。」
   
   エレベーターはどんどん上っていく。

   千里は階段をへなへな登っている。
千里「一階までまで…階段を降りようと思ったけど…もう無理だ…エレベーター乗ろう…。」
   
   千里、エレベーターのところに行く。エレベーター、間も無く開いて千里は乗り込む。

麻衣「…あ、君!!」
千里「あ!!(赤くなる)麻衣ちゃん…」
麻衣「覚えとってくれたんね。嬉しいわ!!」
健司「…誰?」
麻衣「嫌ね、分からん?ほれ、せんちゃんだに。」
 
   ぶっきらぼうに

健司「あぁ…」
磨子「ふーん。あんた諏訪中の子か。可愛いじゃん。名前は?」
千里「小口千里です。この間は、どうもありがとう。」
麻衣「いえいえ、ひょっとして…今日はあんたも?イベントにきてただ?」

   (恥ずかしそうに)

千里「そ…そう…。」
磨子「燃えドラン…そうだわね、今世界中で大人気だものファンも多いわ。だから、何も恥ずかしがることなんてないわ。折角会ったんだし、あんたこれから時間ある?」
千里「うん…あるけど…」
麻衣「私達、これから最上階まで探検に行こうってんの。あんたも来る?」
千里「いいのぉ!?」
三人「勿論っ!!」

   嬉しそうに

千里「ありがとう!はいっ!!」
健司「でもここ…15階だよなぁ…。」
麻衣「ほーいえば…」
磨子「自棄に遅いかも…」
千里「何が?」
磨子「何がって…このエレベーターよ。」
麻衣「へー特区に最上階についていい頃だだに…」
健司「故障か?」
千里「や、やめろよ、…縁起でもない…」

   ガタンっ。四人、びくりとなる。エレベーターの電気、点滅する。千里、泣きそうな顔。

健司「これ…なんか、やばくねぇーか?」
麻衣・磨子「うん、うん、…」
   
   健司、緊急ボタンを押す。千里、泣き出す。外では火災ベルの音。

健司「やべぇぞ、これ…火災だ…。」
千里「そんなぁ、僕達どうなっちゃうの?」
健司「さぁ…とにかく助けを呼ぶしかないだろ、方法を考えよう。」
磨子「(千里を見る)ん?」
麻衣「どうしたの、せんちゃん?」
   
   如何にもと言うポーズで駆け足。

千里「僕、お、おしっこ!!」
健司「はぁ…(呆れる)お前…こんなときに…もっとましなこと言えよな!!」
千里「だってぇ…」
健司「だってもすってもねぇ!!我慢しろ!!」
千里「パパぁ…ママぁ」
   
   エレベーターは蒸し暑い。千里は泣き声。


   (時間が経過)
   麻衣と健司はややぐったり。千里はトイレも限界に近いといった感じ。

千里「アサちゃん、今何時?」
磨子「今は…24時ね。あるからもう3時間も経ってる…。トイレは?まだ大丈夫?」
千里「もう大丈夫じゃないよ、」
磨子「どうしてエレベーターに乗る前に済まさないのよ。」
千里「違うの…僕さ、緊張やプレッシャーに弱いの。特にこう言った状況になると猛烈にトイレしたくなっちゃうんだ…パパぁ…」

   エレベーターの外。大火災が起きており、もはや人一人いない。人々はマンションの外。 身を按じた麻衣、健司、磨子の両親がやって来る。

紅葉「私の娘が、娘がいないのです!!きっとまだあの中ですわ!!」
田中悦「私の娘もいませんの。きっと柳平さんの娘さんと一緒にいますわ!!」
岩波幸恵()「私の息子もです。どうか探してください、私は医者です!!お役にたてることあらば…」
柳平「私は警察です。事件性がないか調べましょう。」
小口「私は消防士ですから、仲間と共にお子さんの救出に入ってみます。」
柳平「小口さん、大丈夫ですか?」
小口「お任せください。大切なお子さんは、必ず救い出します。」
紅葉「宜しくお願い致します…」
小口「では…」
   

   しばらくして。小口、消防服を着てマンションの中にはいる。

   (エレベーターの中。)
麻衣、意識を失う。健司、蒼白になって揺する。
健司「おいっ、麻衣っ!!麻衣!!しっかりしろ!!麻衣っ。…くそぉ…」
   
   エレベーターの扉が半分くらい自然に開く。外は真っ暗。磨子、千里、健司、悲鳴をあげる。

健司「焦るなっ!!」
磨子「どうすんのよ、これで傾きでもしたら…私達、ここへ真っ逆さまよ!!」
千里「もうダメっ!!!」
   
   エレベーターと扉付近まで行く。健司、千里を止める。

健司「バカっ、何するんだ!!やめろっ!バカなことは考えるなっ!!!」
千里「仕方ないだろっ、こうするしかないんだよっ!!!」
   
   千里、闇に向けて空いたドアから用を足し始める。健司、頭を抱える。

健司「…何だ…ほいことか…気を付けろよ、落ちるなよ!!」
千里「そんなこと分かってるよぉ、」
磨子「いゃん、エッチっ!!!」
   
   麻衣、意識がない。エレベーター、前へ傾く。外には赤いもの。

四人「うわぁーっ!!!」
健司「ヤバイ…火が回ってきたぞ…。麻衣、麻衣、!!おいっ、しっかりしろよ。死ぬなっ!!おいっ。」
麻衣「…。」
   
   健司、目を固く閉じる。涙が流れる。

磨子「健司、千里、捕まれるところに捕まって!!」
   
   三人、確りと捕まる。健司、麻衣を片手で支えているが、麻衣は健司の手を離れて滑り落ちる。

健司「麻衣っ!!!」
   
   麻衣、エレベーターの闇の中へと落ちていく。

磨子「麻衣ちゃん!?」
千里「麻衣ちゃんっ。」
健司「麻衣ーっ!!」
  
   三人、蒼白になる。 健司、泣き叫ぶ。磨子、千里は泣き崩れる。 健司は決心したようにエレベーターから飛び降りる。

千里「健司君っ!!」
磨子「バカっ、あんたまでなにやってんのよ!!」

   (更にしばらくご)
   小口、力尽きそうになりながらも火の中探し回っている。次第に千里、磨子の体力も失せていく。

   そこへ小口。

小口「やっといた!!おいっ、おいっ、!!千里に、磨子さん、」

   うっすら目を開ける

千里「パパ…?」
小口「千里、しっかりしろ!!分かるか?」
千里「パパ…エレベーターの下に…友達が…?大切な友達の女の子が…そして、彼女を助けるために健司君までもが落ちちゃったんだ…」
小口「分かった千里、その子の事も必ず助ける。待っていなさい…」
   
   小口、千里をまず抱き抱えて連れ出す。

   次に磨子、千里は意識が戻りつつある。

千里「パパ、パパぁ!!!麻衣ちゃんが、麻衣ちゃんが。」
小口「大丈夫だ、千里。分かっている。パパが必ず麻衣さんの事も助けるからね。千里はいい子で待っていなさい。もうすぐ救急の人も着くだろう。」
   
   小口、千里を助けると、エレベーターの下にロープで降りていく。千里、狂乱。

千里「パパぁーーーっ!!!」



⚪諏訪湖病院・病室
   千里が目を覚ます。側には珠子がいる。

珠子「良かったせんちゃん、気がついたのね。」
千里「んー…何処…ここ?僕、死んじゃったのかな…。ここは?あの世?黄泉の国かしら…」
珠子「何言ってるのせんちゃん、あなたは死んでなんていません。ここは、病院よ。分かる?ママよ、分かる?」
千里「ママ…?」

   (弱々しく微笑む)

千里「僕…生きてたんだね…良かった…

   ハッとする

千里「麻衣ちゃんは!?健司くんは!?アサちゃんは!?」
珠子「安心して…みんな無事よ。パパがね、麻衣ちゃんの事もちゃんと助けてくれたわ。」
千里「(安心して涙を流す)良かった…ありがとう…パパ…ん?…

   はっとする

千里「パパは!?僕のパパは何処にいるの?パパは大丈夫なの!?」
珠子「せんちゃん…(深刻な顔をする)」
千里「(表情が曇る)…ママ…?」
珠子「パパね、何処にいるか分からないんですって…見つかっていないのよ…」
千里「え…」
   
   珠子、千里を抱き寄せる。

珠子「火の中でね…麻衣ちゃんと健司君だけを託したけれどね…見つかってその後、パパの姿だけが見つからなくなっちゃったのよ…」
千里「そんな…火の中って…それってまさか…」
珠子「(悲しげに首を降る)分からないのよ…生きているか…亡くなってしまったか…」
千里「そんなぁ…やだっ。やだよ、パパ…パパぁ!!!」
 
   珠子に顔を埋めて泣き出す

千里「僕のせいだ!!僕のせいなんだ!!イベントなんか行かなければ、パパは、パパは、無事だったのに…」
珠子「なに言ってるのせんちゃん、あなたのせいなんかじゃないわ。」
   
   そこへ磨子、麻衣、健司がパジャマを着て点滴を付けながらやって来る。

麻衣「せんちゃん、」
磨子「千里君、」
健司「千里、」
   
   千里、涙目で三人を見る。

千里「麻衣ちゃん…アサちゃんに…健司くん…。

   再び涙が込み上げる

千里「良かった、良かったよぉ!!又あえて良かった!!」
   
   麻衣の両手をとる

千里「麻衣ちゃん、君に又あえて、僕は本当に嬉しいよ…ありがとう、ありがとう…生きててくれて。」
麻衣「何よ、急に。」
磨子「麻衣ちゃん、あなたには本当に心配したんだから。」
麻衣「はぁ?」
健司「(涙笑い)ったくほーだよ。…でも、お前って女は、ほんな状況になってもしぶとく生きてんだもんな。…大した女だぜ…。」
磨子「エレベーターの下に転げ落ちたときは私達…(泣き出す)へー本当にあなたがダメだと、もう助からなくて、死んじゃうと思ったんだからね!!!」
麻衣「エレベーターの下に?私が?…知らんにぃほんなこん。」
健司「知らん人は罪だよな…」
磨子「そうそう、こっちはこんねに心配してるっつーのに。てか健司、あんたもそうなのよ。」
千里「そうだよぉ、全くもぉ。」
健司「でもこの一件のせいで俺達…」

   赤くなって口ごもる

健司「何でもない…」
磨子「何よ、話しかけたことくらいちゃんといいなさいよね。」
   
   全員、笑う。麻衣、状況が分からずにキョトンとしている。磨子、健司、千里、泣きながらも其々に笑い会う。麻衣もつられて次第に笑い出す。もらい涙をする。
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