リクエスト作品

□中×乱
1ページ/2ページ

「あっつい、」

乱歩の両手にはまだ湯気を上げる鯛の形の焼き菓子が握られていた。


毎週決まった曜日に公園へ来るたい焼きの移動販売車。

(…実は誰にも言ったことないけど、何気楽しみなんだよね。)


ふふふ、と喜びの余り頬が緩む。

いただきます、と聞こえるか聞こえない程度に口にし、あーんと口を開けた刹那、


「あ、」


「…あ?」

目の前に居たのはポート・マフィアの幹部の1人、中原中也だった。

食べ損ねた、とへそを曲げた乱歩は嫌味気味に話し掛けた。

「何?素敵帽子君もたい焼き食べに来たの?」

(だとしたら是非たい焼き友達になりたいなぁ)

「んなわけあるか!…取引だよ。」

ケッと吐き捨てる様に中也は答えた。


「…なるほど、取引ね。んぐ、おいひぃ。」

「…食いながら喋ンなよ。」


その一言の後、二人を包む空気がしんと静まり返った。


「ねぇ素敵帽子くん、」

「中原だ。」

「…中原、…中原はたい焼きって何処から食べる?」


なんだ?そんな質問。と訝しむ中也を横目にもくもくとたい焼きを頬張る乱歩。

「俺は断然尻尾からだな。」


へぇ…。


「たい焼きを尻尾から食べる人って"ロマンチスト"らしいよ。」

ついでに、「ごちそうさま」と言い残し乱歩はベンチから立ち去った。


(…ロマンチスト?俺が!?)

滅多に言われない言葉に唖然する中也。


「…んだよ、」


そういやアイツ、さっきたい焼きを頭から食ってたな。


「ま、…どうでもいいか。」

次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ