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□リップ
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「さやかちゃん唇カサカサやで」

「なんや急に」

ニコニコしながらやってきたと思えば
唇の乾燥を指摘してきた。

「女の子なんやから
 唇はぷるぷるにしとかな」

「今日はもう帰るだけやし」

「あの子、唇めっちゃ乾燥してるやんって
 すれ違う人に思われながら帰ることになるで」

「いやいや。
 すれ違う人の唇そこまで見ないやろ」

「私やったらみる」

不意に美優紀の人差し指が私の唇に触れる。

くすぐったい。

「可愛い唇やのに可哀想
 ぷるぷるの方が美味しそうやし」

「マズそうで悪かったな。
 いつまで触ってんねん」

「さやかちゃん避けへんから
 触ってていいんかなと思って」

「よくないわ」

「怒らんとって。
 私の唇触らしたる」

目をとじて唇をきゅっと結ぶ。

美優紀の唇はぷるぷるのつやつやで
美味しそうかは別として魅力的やなと思う。

「アホか。さっさと帰る支度すんぞ」

「さやかちゃんのへたれ」

不機嫌そうな声でつぶやく。

「ちゅーしよって言ってるんとちゃうのに」

「いいから、さっさと支度しろや」

「ちゅーしよって言ってるんとちゃうのに」

2回言わんでも聞こえてるわ。

ああ、もう。

手を掴んで引き寄せて、美優紀の唇に触れる。

「さやかちゃんのえっち」

「キスしただけやろが」

「ちゅーしていいって言ってへん」

機嫌が直ったのがすぐわかる。

ニヤニヤしやがって。

帰り支度をしながら
思い出したようにリップクリームを出してくる。

「リップ使う?」

「いらへん」

もうすでにリップクリームはしっかりと
私の唇についている。

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