短い夢

□ハッピーバースデー
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いつもと変わらない日常
いつもと変わらない風景
だけど少しだけ違う事があるとするなら―・・・




「くっろさきくーん!!」
いつも通りの朝。
いつも通りの風景。
いつも通りの日常。

『ン?嗚呼,井上おはよ。』
遠くから手を振りながら駆け寄ってくる見慣れた仲間の姿。
そんな相手に挨拶をした。
「おはよ!黒崎君これ」
そう云ッて差し出されたのは綺麗にラッピングされた袋。
不思議そうにすれば苦笑いを浮かべ乍
「今日は黒崎君の誕生日でしょ?」と返された。
『あ・・・』
その言葉に思い出した様に携帯の日付を見る。
其処に記された“7月15日”の文字。
『(そうか・・・今日は俺の誕生日か・・・)』
井上に言われなければ絶対に思い出さなかったであろう己の誕生日。
憶えていてくれた彼女に少し嬉しく思い乍,差し出されたプレゼントを受け取る。
『有難うな,井上』
そう云うと嬉しそうに彼女も笑った。



その後も啓吾や水色,たつき達やクラスメイトも誕生日を覚えていてくれたようで皆から祝いの言葉やプレゼントを貰った。
学校が終わり家に帰れば五月蝿い親父が相変わらずの出迎え方をする。
それを蹴り飛ばし手洗いし食卓の席に着けば、遊子が豪華な手料理を用意してくれていた。

「お兄ちゃん」
「一兄」
「一護」
「「「誕生日おめでとう!!!」」」

そう云って祝ってくれた。
親父は酒を飲んでいて酔っ払い,遊子や夏梨はその雰囲気に呑まれ・・・宴会のようになっていた我が家は23時頃には,親父が酔いつぶれた事によりお開きとなった。

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『疲れた・・・・』
酔いつぶれた親父たちを寝床に連れて行き自室へと戻ってきた頃にはもう直ぐ日付も変わるという時間だった。
『あっという間だったな...』
色んな人からお祝いしてもらい,忘れられない誕生日だったが・・・
『・・・アイツは覚えてくれてンのかな・・・』
一番祝って貰いたかった想い人。
自身の一番近くに居るアイツ。


『白・・・』
小さく己の想い人を想い呟く
《呼ンだか,王よ》
その呟きに答える様に囁かれる声
『ッ白ッ・・・!!!』
突然の想い人の登場に思わず目を見開くも直ぐに平静を装うように顔を逸らす。
『何してンだよ。・・・出てきてて良いのかよ』
早鐘を打つ己の心臓に気付かないフリをしながら,眼前の相手に問い掛ける。

《用が無けりャ出てきたらいけねェのか?》
そう問い掛けてくる相手に小さく“ンな事ねェけど・・・”と呟けば,白は己の懐に手を突っ込んだ。
そしてこれまた綺麗にラッピングされた袋を取り出し,己に投げ付ける様に寄越した。
『うおッ!?おまッ,物を投げンな・・・!!』
慌てて受け取り,非難の声を上げれば五月蝿そうに頭掻く仕種をする。
《五月蝿ェ,黙ッて受け取ッてろ》
そう冷たく言いながらも彼の顔は紅く染まッていた。
『ンだよ・・・』
軽く睨みながらも投げ渡された紙袋をゆっくり開けていく。
すると小さな箱が出てきた。
『箱・・・?』
キョトンとしながら白を見ると
《良いから開けてみろ》
そうそっぽを向きながら云う。
何なンだと思いながらも箱を開けると中には指輪。
驚いて白を見れば真剣な眼差しで己を見ていた。


『白・・・これ・・・』
《俺の傍にずッと居ろ。嫌だッて云ッても離してなンてやらねェからな。》
照れながら言い放つ相手に俺は思わず抱き付いた。
《うおッ!?》
慌てて俺を抱き止めるも勢いが強くそのまま二人でベッドへと倒れこんだ。
《何しやがる,王!!》
非難の声を上げる白を無視する様に,その唇を己の唇で塞いだ。
驚いた様に目を見開くも嫌がる素振りは見せず,寧ろ自身から再度唇を重ねてくる白。
暫くしてから離れた唇に少し寂しさを覚えるも
己の胸は熱く鼓動は高鳴っていた。
『こんな俺で良いなら・・・絶対ェ離れねェ』
そう真剣な眼差しで答えた。
そして力強い腕の中へと導かれ,再び口付けを交わした。
お互いを確かめるように―・・・。





いつもと変わらない日常
いつもと変わらない風景
だけど少しだけ違うことがあるとしたら・・・








―俺の隣にはいつも君が居てくれること
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