おそ松さん

□いえないよ
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 「っ、くそっ...」

ぎゅぅっと手を握りしめる。

好きだよ、言えないよ。

「う、...どうすれば...」

カラ松に...どうしたら、素直になれるの?
と声を出す。

ああ、嫌になってきた。こんな自分が。

目から涙が零れてゆく。

小さな嗚咽は空気の中に混じっていく。

駄目だ、下にはカラ松がいるのに。止まれ止まれ、こんなの見られたら死ねるよマジで。

「ひ、う...」

寝るときに、抱きしめてくるのも半殺しみたいなもの。

耳元に掛かる息。声はもう本当に駄目になるからやめて欲しい。

「...ッす...好きだよ...っう」

「どうしたんだ、一松ぅ!?」

え...と硬直する。

「な、な、なんで...!!」

「ちょっと、忘れ物を取りに行こうと思って...なんで泣いてるんだ?」

「ちょっと話を聞いてしまったんだが...誰が、好きなんだ...?」

「や、やだ...忘れろ...!!」

やめろ、やめて忘れて。

こんな僕なんか見ないでよ、嫌われちゃうじゃん。

まぁ、暴力振るった時から既に嫌われてたかもしれないが。

ずっ、と近づいてくるカラ松。ほんとやめてよ、干渉しないでよ。

「そんなに、言えないことなのか?」

「ひ、ぅ!?あ、ぁ耳元で喋らないで...ッ」

「なんでだ?」

「だ、駄目だって...言ってるだろ...ッ」

「何かやましいことでもあるのか?」

「ひ、」

「なぁ、どうしたんだ?」

ぎゅっと抱きしめてくる。

体が頭が沸騰しそうだ。

「好きな奴がいるのか?」

「っ、あそう、だけど...何」

どっどっど、と鼓動が激しく唸る。

その中でカラ松はポツリとつぶやいた。

「...残念だな。」
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