落ちてきたら猫だった

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「こんにちは」

と笑いかける目の前の男は、笑顔を崩すこと無くこちらを見ている。目線が刺さる感じだ。それに血なまぐさい。この姿になって鋭くなった嗅覚にはキツイものだ。

「おや、無視ですか。あなたの様な妖の類いは人の言葉が分かると思っていたのですがねえ」
「うるさい。聞こえてる。いくら妖と言えどそんなに血の臭いがする奴と話しはしたくない」
「...これは失礼。何度も洗っているんですけどねえ。取れていませんか」
「人には分からなくても動物には分かる」
「それもそうですね。ところで、あなた名前は?」
「...話しかけてきたのはそっち。自分から名乗って」
「吉田松陽といいます」
「.........海琴っていう」
「そうですか。では海琴、私の塾においでなさい。寝床と食事くらいは用意できますよ?」
「なんで、いきなり、わからない」
「...私は生き物が好きなんです」

そう言って慣れたように私を抱き上げ歩き出した。言ってくれれば人の姿になることも出来るのに...


この、突然で、この世界のことを理解するのには充分で、未来のことを考えると頭痛がするような出来事が私と吉田松陽との出会いだった。

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