*中編・長編

□Birthday Girl
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side 優子



朝からの仕事をすべて終わらせ家に着く。



疲れでいつもより重く感じる体がソファーに沈んでいく。



時計を見ると陽菜の誕生日まであと1時間を切ったところ。



毎年0時ぴったりにお祝いしてる。
今年も絶対1番にお祝いしてやる。



だから今日は絶対寝落ちできない。



苦手なブラックコーヒーを飲んで目を覚ます。



LINEで送る長文を考えてひたすらスマホで文字を打つ。




メッセージができあがってあとは送信するだけ。






あと10分だったの。




最後に時計を見た時は。







つけっぱなしだったテレビの音で目が覚めた。




ベッドに行こうとして立ち上がった時、はっとした。




視界に入った時計は短い針がもうすぐ1のところにたどり着こうとしていた。




嘘だ。これは夢だ。
まだ夢から覚めてないだけ。



そう願うけど何回見ても針は進んでいくばかりで戻ってはくれない。



やっちまったー。



陽菜のトークを開いて書いておいたメッセージを送信する。すぐに既読がついたから電話をかけた。



コール音が鳴る。




あーもう。



自分に腹が立つ。



「・・・」



出たけど無言の陽菜になんて切り出していいかわからなくなる。



『…陽菜?』



「・・・」



『ほんとにごめん!!』



「…やだ」



『だよね、ごめん』



「うん、最初の言葉はおめでとうがいい。」




予想外の言葉にびっくりした。




『え?』



「早く!」



『陽菜お誕生日おめでとう!』



「ありがとっ」



『…怒ってないの?』



「んー、怒ってないけど悲しい…」




1番つらいやつ。




『ごめんね、ほんとごめん』



「…許す」




意外とあっさり許してくれて戸惑った。




『え?ごめん…』



「…今から会いに来てくれたら」




そういうことね。
条件を付けてくるところが陽菜らしい。




『今から?ほんとに言ってるー?』



「来ないと許さないよっ」




かわいい。でも今日は疲れてて明日も1日仕事が詰まってる。




『私の明日のスケジュール知ってんのー?』



「8時から撮影で午後が稽古でしょ?」




完璧。大正解。




『え、きいたの?』



「うん、マネージャー」



『さすが(笑)』



「だから来て?」




1番可愛い声でそんなことを言ってくる陽菜は釣り師だ。




『うん、起きて待っててね』



「うん」




*To be continued…
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