短編小説

□聖しこの夜
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夜中、お母さんが入ってきた。
「お母さん」
ぼくがそう呼ぶとお母さんは少し驚いたような顔をして
「まだ起きてたのね。だめよ、サンタさんが来てくれないわよ」と言った。
「お母さん」
ぼくはもう一度呼ぶ。声が少し震えた。…だめだ、ぼくが泣いたらお母さんまで……
「ぼく、幸せだったよ。お母さんのもとに生まれて。お母さんは幸せだった?」
お母さんは何か悟ったような表情をして、横たわっているぼくの手を握った。…暖かい。
「お母さんも幸せだよ。」
「よかった。それだけ、最期に聞きたかったの…ぼくね、もういかなきゃいけないみたい。」
お母さんから溢れ落ちた涙がぼくの頬を濡らす
「いかないで…」
「…大好き、お母さん。泣かないで。ぼくはお母さんの笑顔が大好きだから、笑って、ぼくを…お見送りして」
お母さんは涙を必死に堪えて、ぼくの手を強く握った
「…私も大好きだよ。」
それを聞いて、ぼくは微笑み
ゆっくりと瞼を閉じたーーー。
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