幸せの蒼

□【6】名前
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朝食を食べ終え再度医務室へ入ると、治療は一通り終わったようで付き添いのエマが一人器具の片付けをしていた。



「様子どうだい?」と尋ねると



「あ、お疲れ様ですマルコ隊長。様子も何も酷いですよ。栄養失調でかなり衰弱してました。外傷は見ての通りですし。致命傷にはならないですけど、精神的にかなり辛かったと思います……」



どうやら長いこと食事を与えられてなかったらしく、エマは説明しながら悲しそうに眉をハの字に下げている。



「そうか……お前もご苦労さん。しばらく俺が付いてるから少し休むといいよい。」


「ありがとうございます。じゃぁお言葉に甘えて」



エマは軽い会釈をして医務室を後にした。



まだしばらく目は覚まさないだろうと、軽く出来るデスクワークの資料を持参した俺はベットに眠る彼女を見つめた。



まるで人形のよう。



安定した呼吸の動きに安心したとこで、ふと彼女の腕に光るブレスレットに目が行く。よく見ると何か文字が刻んであり、ゆっくりと彼女の腕を持ち上げる。



”親愛なるモナへ”



そう彫られてたブレスレットは少し年期が入っている様に見える。



ーーーーーーモナ



恐らくこれが彼女の名前なのだろう。そういえば俺は彼女の名前すら知らなかったのだと。名前すら知らないのによく船へ乗せようと思ったな何て自嘲気味に笑いが零れる。



桃族という特殊な生まれからきっと今まで計り知れない苦労を負ってきたのであろう。



「モナ……」



返事など返って来るはずもなく、俺は手元の資料へと目を向ける。その晩、彼女が目を覚ます事は無かった。
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