book -創作-
□episode of force 4
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「言ったでしょ,私は元マフィアの幹部なんだって」
「だからって私を殺す訳じゃないでしょー?」
「…あんたかなりのしつこさね」
「これでも風使いだよ!」
「いやそういうことじゃ無くて…」
紫の少女が自分は罰せられるべき殺人鬼だと何度も何度も言ってるにも関わらず,
後ろをついてくる風使いは笑みを崩さないままとことこと紫の少女の影を踏み続ける。
__なによ,このままじゃ…__
過去の自分と決別し,罪を償おうと海を目指していたのに
なぜかまとわりついてくる暖かな風のせいで決心が鈍ってしまいそうだと紫の少女は息を吐いた。
「海に出るってことは“海賊”になるって事でしょ?」
「そうとは限らないじゃない」
「え,じゃあ何かの海賊団に所属するの?」
…駄目だ,話にならない。
どうやら風使いは自分が海賊になると思い込んでいるのだ。
紫の少女は止まらないため息を隠すこともなく,風使いに同じ答え同じように答える。
「だとしてもあなたは私の仲間にしないってば」
風使いは「そんな硬いこと言わないでよ」とニコニコしながら笑う。
なぜこれほどまでに自分に執着するのか…。
紫の少女は訳が分からず,ただただため息をつくばかりであった。