でぃばげ
□The Poor boy and girl
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可哀想な子。みんな死んでしまった。可哀想な子だと。
レイニィの周りはみんなそう言った。レイニィは悲劇のヒロインぶるつもりは無かったが、いつまで引きずってるのと、立ち直ることは到底不可能な状態にいた。
「おい、大丈夫か」
フラフラ歩いていたのが目に付いたのだろう、輝く金髪を揺らして、背の高いスラッとした青年が駆け寄ってきた。
「大丈夫....では無いな。熱がありそうだ」
美しい青い瞳が一瞬不安そうに揺らぐ。その瞳がかつての仲間の1人に見えて、安心したのかレイニィは気を失った。
「おい、おい!しっかりしろ!」
肩を揺らす人がいる。心配する声が聞こえる。それらを全て放棄して、レイニィの世界は一時的に暗転した。
目が覚めたら知らない天井。見慣れない部屋。そこら辺に水槽があり、魚たちが気持ち良さそうに泳いでいる。それらから興味無さそうに目を逸らすと、ベッドの脇に座って本を読む金髪の青年が目に入った。
「!?」
「あ、起きたか」
目を白黒させているレイニィを他所に、本を閉じて青年がレイニィの額に手を当てる。
「熱は無いな、よし」
「えっと、あの」
ん?と不思議そうに彼がレイニィを見る。そして、ふわりと微笑んだ。
青年は水属性のアオトといった。ペットは大量の魚たちとミズポックルン。野生のミズポックルンと違って、アオトの手伝いをしていたり、お掃除をしていたり、色々気の利く可愛いペット...らしい。
そして、レイニィの仲間を惨殺した主犯、アリトンの実の兄だった。
他に行くところも無いだろうと、アオトはレイニィに此処に暫く住むように勧めた。レイニィは迷った。あのアリトンの兄だ。信じていいのか迷ったが、弟とは違って、綺麗に澄んだ水色の瞳を見て、彼を信じようと決めた。
お互い恋愛感情があるのは分からなかった。アオトは美少年だし、レイニィも綺麗な顔立ちをしていた。どこか病んでそうな雰囲気の割には真面目に物事を考えており、決してお喋りではないが寡黙で慎ましい少女だった。
「アリトンのことをどう思ってるの」
ある日、ミズポックルンを撫でながらレイニィはアオトに聞いた。アオトは一瞬目を細めてから、「何にも」とだけ言った。
「何にも、って何?」
「無関心ってことだよ」
「でも、まぁ、ウンディーネを殺した事は許さないけど」
俺は兄貴だから、弟の面倒見なくちゃいけないんだ。簡単には関係を断ち切れないよ。
優しいのね。レイニィはそれだけ言った。本当は優しすぎてどうしようもないと思った。「優しい」ではないと思うが、彼の瞳に激しい憎悪が漂い始めている事は火を見るよりも明らかだった。そしてレイニィも、もう届かない仲間に想いを馳せながらフッと笑う。
可哀想ね。わたしたち。