でぃばげ

□幸せのお菓子
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ぴょんぴょん。まだ浮き立つのは早いぴょん。オーブンの中を覗き込む天才とその助手。

今日はなんのお菓子ですか。コガネは尋ねる。カルネアデスは紙を引っ張ってくる。これだぴょん。
紙に所狭しと書かれているもの、
「(´・ω`・)」。

つまり、クッキーですね。コガネはワクワクしてカルネアデスを見上げる。そうだぴょん。アタリだぴょん。一体どんな方法で彼女の文字を「クッキー」と判断したのかは分からないが、それでもコガネは嬉しそうだった。

でも、ちょっと砂糖入れすぎかな?まぁいいか。オーブンを見つめるカルネアデス。コガネはキッチンに散らかった器具を片付け始める。こんなに作って、どうするんですか?監獄の子達にあげるんだぴょん。そうですか。お前は獄卒だぞ。ぴょん。聞こえなかった振りをした。

幸せとは、誰かの悲しみを材料にして成り立っているんだよ。彼女は焼きあがった美味しそうなクッキーを、ケーキクーラーに乗せながら言った。私たちの幸せを完成させるために、いったい幾つの悲しみが必要だろうね。コガネは、難しいことはよく分かりません、と言った。カルネアデスはそれを見て優しく笑うと、お前はそれでいいぴょん。そう言って笑う。

みんな幸せな世界なんて、無理だ。できっこない。コガネは監獄の中の頃から、ずっとそう思っていた。監獄時代、コガネが被験体から助手に格上げされるとき、コガネがカルネアデスの手により牢獄を出た後、泣いた者がいた。自分が幸せになると、誰かが悲しむ。一生幸せになれない人もいる。ああ、あの人もそうか。ひとりぼっち、大きな城で、バカみたいに生物を治療し続ける女王がいたな。

監獄は静かだった。みんな光を抜かれたはずなのに、どこかみんな幸せな顔をしている。光の代わりに、幸せを身体に注入しているからか。なら、その幸せはどこから持ってきたんですか。コガネは尋ねる。カルネアデスは答えなかった。黙々と、二人はクッキーを配り続ける。

この世界の正体が分かったとき、幸せとは何たるかが分かるんだぴょん。カルネアデスは残ったクッキーを齧りながらいう。私たちは、幸せを研究し続ける偽善者だと思ってくれて構わない。あの女王とは違う。

ああ、この世界も、このクッキーと同じぐらい、甘かったらいいのに。一口齧って、甘すぎると手を止める。あぁでも、こんな直ぐに飽きる世界はいらないかな。

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