うたプリbl

□一ノ瀬トキヤの悩み
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ある日、レンが寮内を散歩していると、ブツブツと呪文のようなものが聞こえてきた。

声がする方に行くと、トキヤが熱心に何かを唱えていた。

ト「…くよ…いす…きょう…くに…うか…くふ…」

トキヤの周囲には本が山積みになっていた。

レ「(イッチ―、勉強でもしてるのかな?)」

レンは何故か柱のかげに隠れながらその様子を見ていた。

ト「…こんなもんですかね。次は…」

トキヤは持っていた本を山積みになった本の上に置き、次の本を手に取った。

そしてまた、呪文のように唱え始めた。

レンはトキヤが何をしているのか気になり、そっと近づいた。

トキヤまであと3歩というところでレンは立ち止まり、何かを唱えているトキヤに声をかけた。

レ「イッチ―、何してるの?」

すると、トキヤは飛び上がって悲鳴を上げた。

レ「…そんなに驚く?」

レンがそう言うと、トキヤはやや睨みながら言った。

ト「驚きますよ!あなただって、聖川さんに突然後ろから抱きつかれたら驚くでしょう!?」

レ「そりゃあ、驚くけど…」

それとこれとは違う気がする。思ったが、レンは言わなかった。

レ「…ところでイッチ―、さっきから何してるの?」

レンが聞くと、トキヤは持っていた本を魅せながら、勉強だと言った。

レ「…なんで?」

トキヤの頭は決して悪くない。

むしろいい方だ。

あんなに必死に勉強する必要はないはずだ。

何かほかに理由があるのだろうか。

そう考えたところでレンはあることを思い出した。

以前、トキヤがかまってくれない、と音也が泣きついてきたことがあった。

その時はトキヤは忙しかったため仕方がなかったが。

あの時は面白かった、とレンが思い出し笑いをしていると、トキヤが怪訝な顔でレンを見ていた。

レ「ああ、ゴメンゴメン。…で、なんで勉強なんかしてるんだい?」

レンが話を戻すと、トキヤはため息をつきながら言った。

ト「…今度、クイズ番組に出ることになったんです」

レンは納得したようにうなずいた。

レ「なるほど。馬鹿だと思われたくないってこと」

ト「…否定はしませんよ」

トキヤは手に持っていた本をテーブルの上に置き、背もたれに寄り掛かった。

ト「私はそういうキャラではありませんから」

確かに、トキヤは頭がいいイメージがある。

レ「(聖川の場合は馬鹿というより、アホの方が近いのかな…?)」

大した違いはないが。

トキヤと真斗でどちらがより頭がよく見えるか、と聞かれたらトキヤの方だとレンは思う。

偏見かもしれないが。

ト「…音也やHAYATOだったら、間違えても可愛いで済みそうですね」

レ「2人ともそういうキャラだから」

では他のメンバーだったらどうなるのか。

レ「おチビちゃんは早押しクイズとか得意そうだよね」

ト「聖川さんは、案外珍回答をするかもしれませんね」

レ「お坊ちゃんだから」

…では、自分たちは?

ト「…あなたは、何でもスマートに答えそうですね」

レ「イッチ―は完璧に答えそうだよ」

2人は沈黙した。

ト「…。そんなことができたら、こんなことしてませんよ」

よく考えてみればそうだ。

だが、トキヤならできそうな気がする、とレンは思った。

すると、トキヤは小声で、本当に小さな声で言った。

ト「…自身が、なくなっているんです…」
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