長編U

□第2話
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新選組の屯所に着くと、私たちは総司ってやつにぐるぐる巻きにされた。
「君はうるさいから口も塞いじゃおっかな」
「…私は構わないが彼女はやめておけ。どうせ逃げられないんだから。」
「はいはい。…よしっ!じゃあ呼びに来るまでそこで転がっててねー」
結局、口もタオルで巻かれて私たちは狭い部屋に2人で放置された。
(はぁ…面倒なことになったなぁ。ん…?この気配は…)
意識を集中させると屯所内に先程の“悪”の気配があることがわかった。
(それに隣からも人でない気配…この子は私と同じ人外、か。)
ここに“悪”があるとすればここで抹消すれば私の役目も終わる。
(まぁ朝まで眠れないにしても少しは休みますか…明日になれば処遇も決まるだろうし)
結局考えることを放棄し、身体を休めることにした…

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どのくらいの時間が過ぎたのだろうか。
(もう朝、か。彼女は起きただろうか…?)
ちらりとそっちを見ると、彼女はちょうど身じろぎをして目を覚ましていた。
「ん…?あれ、ここは?」
何やら理解していないような彼女は辺りを見渡し、私と目が合った瞬間とても驚いた。
「あ、あなたは確か…昨日助けてくださった…」
口を塞がれているため仕方なく首を縦に振って肯定の意を示す。
「昨日は本当にありがとうございました…それになにやら巻き込んでしまったみたいですみません…」
再び彼女が考え事を始めた時、ゆっくりと襖が開いて、人の良さそうなおじさんが顔を出した。
「ぁあ、目が覚めたかい?」
その優しそうな男の人は井上と名乗り、手の縄以外を解いてくれた。
「ありがとうございます。」
彼女とお礼を言うと、彼は少しだけ笑い、話があるから広間までついてきて欲しいと言った。
彼は物腰の柔らかい言い方をしているが、私たちに断るという選択肢は存在しないのだろう。
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