main

□68:君の表情が読めない
1ページ/1ページ


新年を迎えてダラダラしてたらすぐに冬休みは終了した。いや、課題はちゃんとやりきったけど。
今日から待ちに待った新学期だ。何故待ってたのかは言わずもがな皆からプレゼントされたピンクの薔薇のチャームを付けた鞄を使用できるから。
朝から機嫌の良い私を見た母が珍しがるのも仕方ない程朝の私はテンションが低い。長期休み明けを楽しみに待ってるなんて初めてなんじゃないだろうか。
歩く度にユラユラ揺れる薔薇を暇さえあれば見てしまう。
学校も近づき少しだけ気を引き締めた。見知った人達に挨拶を交わしていってクラスに入れば花宮君の姿が視界に入る。山崎君は居ないみたい。

「花宮君おはようございます」
「おはよう」
よそいきの笑顔で挨拶を返すとすぐに読んでいた本に視線を戻す。教室での彼は基本的にこのスタイルだ。私も自分の席に着いた。
その数分後に山崎君が友達と一緒に教室に入って来た。私と目が合い此方に来てくれる。
「みょうじおはよっ」
「おはよう。初詣以来だね」
「何か久しぶりだよな」

そうね、と頷きふと山崎君のエナメルバッグに付けられた物に気づく。
「それ、付けてくれてるんだ」
「ん?…っ! あ、当たり前だろ。みょうじがくれたもんだし」
「ふふっ。私も付けてるよ、ホラ」
机に置いたまんまの鞄から薔薇のチャームを軽く持ち上げて山崎君に見せる。
「本当に可愛くて写真も撮っちゃった」
「それ一つ買うのに男5人で…いや、花宮は見てただけか、買う時に店員がクスクスしてて恥ずかしかったぜ」
「しゅ、シュールな光景、ははっ」
買う場面を想像して思わず笑ってしまって山崎君が照れ笑いした。

「朝っぱらからイチャついてるとリア充撲滅委員会に通報するぞー」

カッチン君もとい梶山君が山崎君の耳元で話しかけて来た。
「っんだその物騒な委員会」
「はい確保ー」
「話はあちらで聞かせてもらおうか」
「ちょ、引っ張んなっ」
あれよあれよという間に彼らの席まで連れて行かれてしまった山崎君。そんな彼らを眺めていたらすずちゃんが登校して来たので挨拶もそこそこリア充撲滅委員会に気をつける様に言っておいた。


***

始業式も済み、冬休みの課題も提出して下校時刻になった。
すずちゃんは部活初めの為陸上部へと向かったので私は1人廊下を歩く。

「みょうじさん」

声を掛けて来たのはバスケ部の顧問だった。
「はい?」
「これ、バスケ部の備品。部室に運んで置いてくれんか」
「え、あの」
「それで最後だから。頼んだよ」
ダンボール箱を渡され思わず受け取ってしまった。顧問は腰を拳で叩きながら去って行く。
…仕方がないので部室まで備品を運ぶ。たまたま私が通りかかったので頼んだのか?まあ、元マネージャーだし丁度いいと思ったのだろう。



久しぶりに部室に足を踏み入れた。
凄く懐かしい。掃除が行き届いてないのか所々散らかっている。ドアの端に同じダンボール箱が置いてあるのを見つけてそこに持って来たダンボール箱を置いた。用は済んだので部室から出ようと踵を返す。
「あ、みょうじ先輩!」
「わっ、…沢君?」
「お久しぶりですね!どうしたんですか?」
「顧問に備品を運ぶの頼まれちゃってね、…何か沢君背のびた?」
「はい、7cm伸びました!」
嬉しそうに答える彼を見上げてそれでも可愛いなぁとしみじみ思う。
「沢君1人?」
「あ、はい。俺今日、当番で…でももうすぐ他の部員も来ると思います」
「そう……」

それなら、私は早く退散した方が良さそうだな。
鞄を持ち直し一歩前に進む。
「みょうじ先輩はマネージャー復帰するんですか?」
「え?」
「退部まだ保留って聞いたから、」
「保留…?誰がそんな事」

「花宮部長です」






……どういう事?

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ