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□67:新年の抱負〜山崎side〜
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何を聞いてんだ俺はと後悔した。
高橋が変な気を利かしてみょうじと2人にしてくれたが、キセリョとか…どーでもいい話題を振ったせいで微妙な雰囲気になったじゃねえか。
みょうじが他の話題に花宮達の事を聞いた後も俺はまた地雷を踏みそうになった。
正直、またマネージャーやってくれたら嬉しい。でも決めるのは彼女自身だ。俺がとやかく言う事じゃない。
みょうじはきっと俺が言おうとしたのに気付いたはず。
俺はみょうじに気を使わせてばっかりだ。情けねぇな。
隣に座るみょうじをチラ見する。

「山崎君」
「な、何だ?」
「一発芸、タバコ」
いきなり何を言い出すんだと思ってると人差し指と中指を口に持って行き指を離すとフーっと息を吐いた。そこから白い煙が薄く出る。いや、煙じゃねえけど。

「ぶはっ、それ俺も子供ん時やった事あるわ」
「寒い日限定です」
恥ずかしげに小さく微笑むみょうじ。
何だこの生き物!可愛すぎるだろっっ。ニヤけそうになる口元をグッと噛み耐える。
「あ、戻って来た」
みょうじの発言に前を向くと原と高橋が紙コップを2つずつ持って此方に歩いて来る。原の姿を見て平常心を取り戻す。

「なーに怒ってんの?」
「怒ってねえけど」
「俺の事睨んでたじゃん」
「平常心だよっ」
「はぁ?イミフ〜」
「はい、なまえちゃん甘酒」
「ありがとう」

高橋から甘酒の入った紙コップを受け取ったみょうじは息を吹きかけながらチビチビと飲む。
俺も原から受け取り冷ましながら飲む。まあまあ美味い。
「なまえチャン、スマホ鳴ってるよ」
「メール…親からかな………古橋君だ」
「え」
思わず声が出た。古橋はみょうじに対して好意を隠すつもりはないのでどんな行動を取るのか気が気じゃない。
スマホを操作するみょうじの表情が少し弛んだ。

「あけましておめでとうだって」

スマホから目線を俺達に移し、そう伝える。
古橋の奴前はそんなんした事ないのによ。
「今、ザキと初詣中って返信してあげて(笑)」
「原と高橋もだろ!」
このチャラ原っ、余計な事すんじゃねぇよ。
「皆と初詣に来てるってちゃんと送ったよ、…あ、もう返信きた」
「はやっ」
「帰りは送ってもらえって」
「イケメンだ」
「余裕があるね〜。好きなコが他の男と夜中に一緒に居るってのに」
「好きなコ?何それ私聞いてないよなまえちゃん」
「いや、それは、」
「古橋マジすげぇよ?堂々とアピってるから。恋愛スイッチ入っちゃってるから」
「ちょっと原君」
「おい原、人の好意をそうやって変にからかうなっ」

本人の居ない所で盛り上がるのはよくないから原をたしなめた。
みょうじも困ってるし。
「さすが古橋君。女見る目あるわ。私が男だったらなまえちゃんと付き合いたいもん」
「私もすずちゃんが男なら立候補する」

……高橋が女で良かった。
女子のこういうノリに着いていけず残りの甘酒を飲み干し紙コップを適当に潰した。
「あ、親から帰るよってメッセ来た。なまえちゃんウチの叔父さんが迎えに来てくれるから送るね」
「えぇ!?いいよいいよ、家方向違うし。私もお母さんに迎えに来てもらうし」
「遠慮しなさんな。家族になまえちゃん紹介したいから!さっ行こ」
「ありがとう、すずちゃん」

高橋がみょうじの手を取って立ち上がる。
「あんたらもさっさと帰れよ!」
「えー、送る役目は俺達じゃないのー?」
「残念だったね。なまえちゃんは私のものだ。はい、ザキ捨てといて」
空になった紙コップを2つ俺に手渡す高橋が小さい声で囁いた。

「ザキ、モタモタするな」

その言葉の意味を理解して奥歯を噛む。

「あ、山崎君原君またねっ」
「おう…またな」
「メールするね〜」

高橋に連れられてみょうじは人混みに消えて行く。姿が見えなくなってから溜め息が出た。
「……モタモタするなっつってもなぁ…」
「ザキは告らないの?」
「いや、俺は…」
「怖い?」
「せっかく友達として関係築き出してんのにいきなり告白したらみょうじが…困る、だろ。古橋の事もあるしよ……」
「古橋を好きになったらお前どーすんの?」
「………それは、それで、仕方ねぇ」
「こんの恋愛ビギナーめ」
「うるせ」

今の関係を大事にしたい。
友達以上を求めたら駄目だ。
アイツには笑ってて欲しいから。

「あーさっみー。今日ザキん家泊めて?……ザキ?」

「…………一発芸、タバコ」

「…………………」
「…………………」
「あーさっみー。今日ザキん家泊めて?」
「おい、なかった事にすんな」
「いや、痛々しくて」
「もういいわ…。俺ん家行くか」
「朝までゲームしようぜ」



今年もみょうじが許す限り隣に居させてくれよな。

あけましておめでとう。今年もよろしく。

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