main

□66:まだ踏み出せない自分がいる
1ページ/1ページ

誠凛が優勝をしたウィンターカップ。
私は観に行ってはいないけど、花宮君達は観に行ったらしい。
山崎君から話を聞いた時は何だか感慨深いものを感じた。
秀徳は3位で心の中でおめでとうとお祝いの言葉を述べた。
「なまえちゃん!」
すずちゃんと待ち合わせをした今日は年の瀬。一緒にカウントダウンをするのと旅行のお土産をくれるという事で久しぶりの再会だ。
「すずちゃん久しぶり。沖縄どうだった?」
「楽しかった!はい、お土産」
あまり荷物にならない様に小さめにしましたと告げたお土産はバッグに入りやすい大きさで彼女の気遣いに頬が緩む。お礼を言ってバッグに入れ2人で並んで歩く。
「補導されない様にしないと」
「大丈夫大丈夫。ウチの家族も来てるから」
「本当?後で挨拶しなきゃ」
周りをキョロキョロと見回したが人が多過ぎて分からない。と言うか、すずちゃんの親御さんに会った事ないので居ても分からないし妹さんは文化祭の時に遠目でしか見てないのであまり覚えてない。神社行こー、と少し前に進んだすずちゃんに手招きされ足を動かす。神社に向かう途中で年を越してしまった時は歩きながらおめでとうと言い合った。周りも盛り上がってる。
人混みの熱気で寒さがいくらか穏和される中神社に着いた。
参拝客の列に並んでお賽銭の準備をする。すずちゃんと談笑してると順番が来たので参拝のマナー通りにして1年間の願い事をした。
健康祈願はもちろんの事、友達との事。…後はこの生活が続けば良いなという小さな願いだ。

「なまえちゃんおみくじ引く?」
「うん」
参拝も終えて、2人でおみくじを引いたら中吉だった。すずちゃんは大吉を引いて大喜びだ。お守りも買うと言うので人酔いした私は近くの休憩スペースで待ってる事にした。

「なまえチャンじゃん」
「え、原君?」
「うわー偶然!あけおめー」
「あけましておめでとう。1人?」
「そうだよ〜。なまえチャンは?」
「すずちゃんと一緒だよ。今お守り買いに行ってる」
「んじゃ、高橋さんが戻って来たら3人で遊ぼっか!」

「何で3人なんだよコラッ」
「ッテ」
原君の後頭部を叩いたのは山崎君だった。
「山崎君と来てたんだね。あけましておめでとう」
「おう。おめでとう!みょうじ疲れた顔してんな、大丈夫か?」
「人混みに酔っちゃって。休憩しとけば平気」
「あんま無理すんなよ?」
「うん、ありがとう」
「あらまぁザキと原君、あけおめことよろー」
戻って来たすずちゃんが棒読みで新年の挨拶を省略する。
「高橋さん沖縄のお土産ちょーだい」
「新学期にクラス分のお土産配るから余ったらあげる」
「それ絶対余らないヤツじゃん」
「んな事はどーでもいいから、原君あっちで甘酒配ってるよ。飲みたい?」
「へ?いや、別」
「飲みたいの?私も飲もうかなー。なまえちゃんとザキの分も入れたら4つか、よし、行くよ」
「え、ちょ待って、」
「じゃあ二人共そこで暫く待っててね!」
原君の腕を引っ張りながらすずちゃんは足早に甘酒が振る舞われてるテントの方へと向かって行った。
人混みでも背の高い原君のお陰でどの辺にいるか何となく確認出来た。

「すずちゃんと原君って何かお似合いかも」
「は?嘘だろ…」
「原君を振り回す感じで」
「高橋はキセリョしか興味ないだろー。みょうじは…キセリョとか興味、ある?」
「……うーん、前に話した時はそんなに、」
「前に?」
「試合会場で…ね」
「…何か言われたのか?」
「誠凛は強いから油断するなって花宮君に伝えてって」
「そっか…」
苦い出来事を思い出し山崎君に悪いなと感じ違う話題を探す。

「あ、今日は花宮君達は?誘わなかったの?」
「あー、花宮は面倒だからって断られて瀬戸は三が日は寝て過ごすって断られて、古橋は親戚んとこだって」
「それぞれ、だね」
「まっ、冬休み明けたら学校で嫌でも会うしな。また部活も始まるしよ」
「そうだね」
「みょうじは、また一緒に……」
「え?」
「いやっ、何でもない」

山崎君が言いかけた言葉は、多分また一緒に部活をしようなんじゃないかな。そう思ったがそれ以上は聞かなかった。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ