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□65:プレゼント
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なりゆきで私の家まで来る事になったので折角だから全員を家に上げた。
原君に引っ張られ花宮君や瀬戸君も居る。急いでコタツとストーブを点けて適当に座ってと促した。

「お前の親は?」
「温泉旅行。商店街の福引き当てたから」
「え?!じゃあなまえチャン1人?」
「今夜はね。あ、待っててプレゼント持って来るから」
「オケマル〜」


自分の部屋に入り机の隅に置かれたプレゼントを発見してそれを手に取り再びリビングに向かうと皆がコタツで暖を取っていた。
……みかんがあれば最高だったかな。
「お茶淹れるね」
「あ、いーって。さっきコンビニ寄って色々買ったんだから。みょうじも休めよ」
「そう?じゃあ…」
私はバッグから残りのプレゼントを出して空いてた山崎君と花宮君の間に座り一人一人に手渡した。

「皆お揃いになっちゃうけど」
「へー、可愛いね〜。アリガトーなまえチャン」
「マジで嬉しい!ありがとな!」
「ありがとう。一生大切にする」
「ありがとねー」
「……ふはっ。被ってるし」
「え?」
チャームを眺めながら花宮君が呟く。
「うん?だからお揃いになっちゃうけどって、」
「違ぇよ、おいヤマ」
「おう。何かまとめてで申し訳ないけど、コレ」
山崎君が小さい包装紙を渡して来た。
「え?私に?」
「俺達からみょうじにクリスマスプレゼント」
「気に入るといいんだが」
「あ、開けるね」
ドキドキしながら包装紙を開くとピンクの薔薇を型どったチャームが入っていた。
「可愛い…」
「気に入った?気に入った?」
「うん、ありがとう!」
まさか自分に貰えると思ってなかったので嬉しさのあまり顔がほころぶ。
「みょうじさんが気に入ってくれて良かった」
「おい、用事も済んだし帰るぞ。健太郎寝んな!起きろっ」
「んー〜…コタツ最高」
すっかりコタツの誘惑に負けた瀬戸君は横になってしまった。家まで我慢しろと山崎君が揺さぶる。原君はマイペースにお菓子を食べ始める。花宮君はさっさと上着を羽織り帰り支度をしてる。

「みょうじさん」
皆の行動を眺めていたら古橋君が隣に移動して来て話し掛けてきた。
「何?」
「面白い本があるからみょうじさんに勧めようと思って持って来たんだ」
側に畳んで置いてた上着の内ポケットから小説を取り出して私に差し出してくれた。それを両手で受け取る。
「ありがとう。読んでみるね」
「ああ」
「…あ、古橋君の好きな作家さんの新刊読んだ?新シリーズの、」
「まだ…っ!…読んでない、な」
「?、私読んだよー。今回のも良作。勿論読みますよね…?」
「読みます」
即答する古橋君が何だか可笑しくて短く笑う。持って来るねと告げて部屋へと向かう。
そんなに読みたいなんて本当に好きなんだな。


本を持って階段を降りた時、玄関前で靴を履いてる花宮君が居た。
リビングからはまだ話し声がしている。
「花宮君1人で帰るの?」
「アイツら待ってんのめんどくせぇ」
「そう。寒いから気を付けて帰ってね」
「じゃあな」
玄関を開けると冷たい風が室内に入って肩が震えた。花宮君は首をすぼめながら暗い道を歩き出す。私はそれを見送ると静かに玄関を閉める。

リビングに戻ると瀬戸君が眠そうな顔で上着を着てた。山崎君と原君と古橋君も立ちながら瀬戸君の支度を待っていた。
「花宮は?」
「帰ったよ」
「マジで先に帰りやがった」
「古橋君、はい」
「ありがとう。借りて行く…」
「返すのはいつでもいいからね」
「俺のもいつでもいいよ」

「ふわぁ〜……。準備終わったよ」
「遅せぇよっ。んじゃ、帰るか。みょうじ悪いなダラダラしちまって」
「全然気にしないで」
「なまえチャン1人で危ないから俺一晩中一緒に居てあげようか?」
「リビングの電気付けっぱなしで今夜は寝るから大丈夫」
「もし万が一空き巣が現れたらすぐに110番して外に出るんだ。絶対自分で倒そうと思ってはダメだ」
「う、うん」
「外に出る前に捕まったらどーすんだよ」
「…見つからない様に隠れる手もあるな」
「さ、細心の注意を払うから!心配してくれてありがとう」
話の終わりが見えそうにないので無理矢理切り上げさせる。
古橋君は心配症みたいだ。

「じゃあみょうじ!戸締りしっかりしろよ!」
「はい」
皆と一緒に外に出たが寒い…。上着着ればよかったな。思わず身震いしてしまう。
「見送りはいいから早く家に入れ」
古橋君が手を動かして促す。
私は手を振って小声でバイバイと言って玄関まで戻った。
家に入る前にもう一度皆を見る。
前は…皆の後ろ姿が遠くに感じていたけど、今は全然遠くに感じない。手を伸ばせば届く場所にいる。
そう感じた。

角を曲がって姿が見えなくなったので家の中に入り、リビングのストーブとコタツを消して貰ったチャームを持って自室に戻ってから改めてチャームを眺める。
どこに付けようか悩む。
やっぱり学校の鞄に付けよう。何も可愛くアレンジしてない自分の鞄が一気に可愛くなった。
テンション上がって写真を撮りまくった。ラメも入っててキラキラとして可愛い。もう可愛いしか言えない。
早く鞄を持って登校したいな。

新学期が待ち遠しい。

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