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□64:一応私が保護者で
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秀徳の試合を観戦後、とりあえず応援しましたの事実だけで皆さんに会わずに会場を出た。会う暇ないだろうし。
一つ目の用事が終わり二つ目の用事を済ませる為目に付いたショップに入る。
明日のクリスマスに遊ぶ約束をした訳だから、やっぱり何かプレゼントでも用意しようかと考えたからね。
でも何を渡そうか全然思い付かない。5人分は今の私のお財布事情では安価な物しか買えない。
店内に並ぶ売り物をゆっくり眺めながら歩く。
ふと、バスケットボールのチャームに目が止まった。様々なアルファベットの大文字が一文字付いている。名前の頭文字っぽい。
値段も手軽だし、これにしようかな?
皆の名前の頭文字を探す。
K.K.K...多いなK。
H.M.…よし、全部あった。
こういう小さい物なら邪魔にならないし貰いやすいだろうしいいよね。
それらを落とさない様に気を付けてレジに向かい一つずつ包んで貰った。クリスマス仕様の包装が可愛い。



***

待ち合わせの時間までダラダラと部屋で過ごして1時間前に仕度を始める。
正直ウキウキしてる。
戸締りを済ませて家を出る頃には空は茜色に染まりつつあった。15時集合は若干遅めで、クリスマスだし今日だけは特別なので良しとしよう。


待ち合わせ場所は家族、カップル、友達等の人達で賑わっていた。そんな中で一際大きく目立つ集団、いとも簡単に見つけた。
「皆、早いね!」
「女の子を待たすなんて出来ないからね〜」
「でもまだ約束の15分前だよ。一体何分前から待ってたの?」
「30分前くらい」
「はやっ」
「寒いから早く移動すんぞ」
相変わらずの不機嫌フェイスの花宮君に促され皆はゾロゾロと動き出す。
「で、何処行く?」
「取り敢えずカラオケでいいんじゃない?」
「ラウワンで。カラオケだけじゃつまらん」
山崎君と原君がパパッと遊ぶ場所を決めて流れに身を任せて後をついて行く。だが、皆の歩幅と私の歩幅は同じじゃない。加えて人混みの多さ。はぐれない様にしなくては。

「みょうじ!」

山崎君に呼ばれたすぐ後、私の手を掴んできた。

「はぐれねぇ様にだからっ!」
「あ、うん。ありがとう」
まるでお兄ちゃんと妹みたいだな。
「……じゃあ、俺も」
「へ、?」

もう片方の手を古橋君が握る。
んんん?何これ?
父・子・母?はたまた捕えられた宇宙人?
「…別に両方握る必要ねぇだろ」
「なら、ザキが離せば?」
「何でだよ!俺が先に握ったし!それに古橋がみょうじの手を握ったらバッグが持ちづらくなるだろっ」
「それなら俺が持てばいい。みょうじさん、バッグ貸して」
古橋君が私の肩から掛けてるバッグを持とうとしてくれる。古橋君の握られた手が離れたので咄嗟にバッグの紐を持った。
「いやいや!そんな、悪いよっ」
「駄目」
「あ」
有無を言わさず肩からバッグを抜き取って古橋君はまた私の手を握った。
「やだ、康次郎クン大胆」
「ふはっ。幼稚園児かよ」
「何かSPっぽいね」
三者三様の感想を述べられ、確かにと納得しかけた。
結局この状況に周りの視線に気恥しさを感じながら目的地まで歩いた。



***


ラウワンで一通り遊びに乗じて、そろそろ21時だ。未成年は帰らなければいけない時間だ。
しかし皆は帰る素振りを見せない。
「ねえ、もう帰らないと21時になるよ」
「何でー?」
「…未成年なんだから」
「え〜俺オールのつもりだったんだけど」
「俺は帰る」
花宮君が帰り支度を始めたが原君がそれを阻止している。瀬戸君は眠そうだ。
「原はオールしとけ。俺みょうじ送る」
「俺も」
「つまんなー。じゃあ俺もなまえチャンと帰ろ」
原君がしぶしぶ帰り支度を初めて全員で外に出る。あ、プレゼントっ。
「か、解散する前に渡したい物があるんだけど」
「え、プレゼント?なまえチャン用意してくれたの?」
「うん。クリスマスだし」
私はバッグからプレゼントを取り出す。一応包装紙に名前を書いておいた。
「……え、あれ?足りない…」
あろう事か1つ入れ忘れてしまった。最悪だ。
「誰のが?」
「花宮君、山崎君、古橋君、瀬戸君、……原君のがない、ですね」
「えー俺〜?ショック!」
「ごめんねっ。原君の都合の良い日に渡すね?」
「やだ。今日欲しい」
「原、我儘言うなっ」
分かりやすく不貞腐れる原君が可哀想に思えてしまった。

「じゃあ、今から家に取りに行こっか?」
「え?」
「だから機嫌直して」
小さい子に言う様に諭す。
すると原君の口の端が上がった。
「行く行く〜!なまえチャン家行っちゃう〜!よし行こう!すぐ行こう!」
テンション高く私の腕を引いて歩き出す原君の首に山崎君が腕を回す。
「何1人で行こうとしてんだよ」
「原、その手を離せ」
「あっれー?ザキも古橋も何怒ってんの?プレゼント取りに行くだけじゃん?」
「みょうじが危ない」
「みょうじさん家行くなら俺も付いて行く」
「俺は帰る」
「眠い」

……何か話がまとまってない。
これはまとまるのを待つべきか、いやあんなデカい人達が騒いでたら目立って仕方ない。
「原君が危険なら皆で行こう」

「「「 え 」」」

あ、ハモった。


「俺は帰る」
「眠い」
さっきからそれしか言ってないな。

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