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□63:ビター?orブラック?
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「みょうじさん!!」


皆で帰る流れになった時名前を呼ばれ振り返ると笑顔で手を大きく振りながら桃井さんが駆けて来た。
「観に来てくれたんですね!嬉しい!今吉さん達にも会って下さい。さ!行きましょー」
有無を言わせず桃井さんが腕を絡ませて会場の方向へと歩き出す。
「お、おいみょうじ…」
「あ。霧崎の皆さん、みょうじさんお借りしますねー」
「み、皆っ、また連絡するね!」

唖然としてる山崎君達に一言告げて桃井さんと一緒に会場に向かった。

「桃井さん…試合終わってすぐに今吉さんに会うのは迷惑じゃ」
「そんな事ないですよー。今吉さんもみょうじさんが観客席に居るの見つけて喜んでましたから」
……よく見つけられたな。
やはり今吉さんは只者じゃない感を身に染みて感じていると桐皇の控え室前に着いた。桃井さんが絡めた腕を離して控え室をノックすると中から声がして桃井さんはドアを開ける。
「今吉さん、みょうじさん連れて来ました」
「お〜、そうか。ご苦労さん」
今吉さんの声が聞こえ桃井さんと入れ替わりに本人が出て来た。
「…お疲れ様です」
「お疲れさん。いや〜、みょうじさんにカッコええトコ観せるつもりが負けてしもたわぁ」
「そんなっ。…カッコ良かったですよ」
「ま、悔いはなし。やな」

微かに今吉さんの目元が赤いのを私は目敏く見つけてしまった。これ以上は何も言葉が出てこない。

「花宮はもう帰ったん?」
「え」
「アレも来てたやろ?」
「はい。帰りました」
私だけじゃなく花宮君達も把握してたとは。

「で、どうや?」

今吉さんの問いに何が言いたいのか悟る。そんな私を見て今吉さんは口角を上げた。
「みょうじさんの顔見とったらそこまで心配はなさそうやな」
「あ、はい。さっきもクリスマスに遊ぶ約束しました」
「ほー。そら楽しそうやなぁ!ワシも参加したいもんや」
「皆で遊べたら楽しそうですよね。でも、」
「人数が多い方がええよなぁ……花宮〜?」
私の後ろへ話し掛ける今吉さんに振り返ると帰った筈の花宮君が立っていた。

「…アンタ受験生なんですから遊ぶ暇ないだろ」
「花宮君…っ、え?」
「痛い所突かれてしもうたわー」
「ちっ。おい、帰るぞ」
私を睨んで踵を返す。え?一緒に?帰るのかな?え?

「早くしろっ」
「は、はい!」
「またな〜お二人さん」
「お、お疲れ様でしたっ」
今吉さんに別れの挨拶をして花宮君の後を追う。
「……花宮、君?今吉さんに何か用があったんじゃ…」
「ある訳ねぇだろ。原からメールでお前が桐皇に連れてかれたって来て、あの人に変な事吹き込まれるのが嫌なんだよ」
「別に何も吹き込まれないよ」
「関わりたくねえんだよ」
「わざわざ戻って来てくれたの…?」
「………」
返事はなかった。
あれかな?ツンデレのデレが来たのかな?思わず小さく笑いが溢れる。
「 余裕こいて笑ってんじゃねえよバァカ」
「ごめんなさい」
誤魔化す様に咳払いをする。
油断してるとまた頬が緩みそう。……お腹空いたな。もう昼時だ。何か食べに行こうかな。
「みょうじ」
「………ん?あ、何?」
お昼ご飯の事を考えていたので反応に遅れた。
前を歩いていた花宮君が立ち止まり私を見る。
「昼メシ付き合え」
「あ、はい」

初めて誘われた………。




***

「で、関わるとは具体的に何処までだ?」

お洒落な空間のカフェでこの場に似合わない黒いオーラを発してる人が居る。…そう、花宮君です。

「具体的にと言われましても、」
「お前の足りない頭で出した結論だろうが。何?マネージャー続けるワケ?」
「…それはまだ考えてない」
「……ふはっ。只の同級生、同じクラスの1人として関わりたいって事かよ」
「うん」
私の返事に何も言わなくなり注文したブラックコーヒーを飲む花宮君。
その横にチョコレートが置かれている。可愛い一面もあるんだなと思ったら違った。カカオ100%のチョコだ。どんだけビター派なんだ…。
考えただけで口の中が苦くなりそれに加えて沈黙に耐え切れず、自分の注文したサンドイッチを食べる。

「まぁ…、アイツらが納得してるなら別に良いんじゃない?」
「…本当?」
「俺はバスケ以外でのアイツらの行動なんて興味ねぇよ」
てっきり関わるなー的な事を言われると思った。

「クリスマス、にさ、皆で遊ぶって聞いた?」
「ヤマからメールで聞いた。俺は行かねえよ」
「あー…やっぱり?」
「大体、古橋の邪魔する為のもんだろ」
「ちょっと何言ってるか分かんない」
「好きなんだもんなぁ?
みょうじなまえって女が」
頬杖をついてニヤニヤしながらわざわざフルネームで私の事を呼ぶ彼に久しぶりにイラッとした。

「い…いいよ、来たくないなら。今吉さん誘うし」
「は?」
つい言い返したくなって花宮君の嫌がるであろう今吉さんの名前を出した。内心ビクビクしてる。
「……へー。そんなに俺に来て欲しいのか?素直じゃねぇな〜?」
「え」
「お前に俺が言い負かされるとでも思ってんのか?ほら、他にも何か言ってみろよ。5秒やるから」
「……すみませんでした」
「ふはっ、バァカ」

花宮君に口喧嘩で勝てる気しない。

……将来本当にハゲればいいのに。

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