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□62:全員集合
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ウィンターカップ開会式後に誠凛と桐皇の試合が始まった。
どちら共強くて、熱くて、接戦だった。結果一点差で誠凛が勝利して1回戦は終わった。今吉さんは3年生なのでこれで引退の筈。やっぱり悔しいだろうなぁ…。顔を出しに行くか悩んだが、そっとしておこうと思う。
後でメールしようかな。
秀徳は明日が1回戦だったので、帰ろうかなと考える。


外に知ってる人達を見つけた。……花宮君達だ。
通るに通れなくて頭を捻る。さて、どうしよう。花宮君達も帰るのかな?
「………あ、」
不意に花宮君と目が合った。
思わずバッグで顔を隠す。いや、絶対バレてる。
バッグの端から覗き見てみた…、ああァッまだ見ておられる……!
そんな花宮君の様子に気付いた山崎君と古橋君と瀬戸君と原君もこちらを見た。私に気づくと山崎君が手を振る。

私は意を決して皆の所へと歩き出した。

「こ、こんにちは」

「よ!もう帰んのか?」
「うん。桐皇の試合観たし」
「…なまえチャンさー、何で桐皇の今吉さんと仲良いわけー?」
「前に、文化祭で会って自然と?」
「えー、危ないよちゃんと危機感持って?男はオオカミなんだからね」
「…原君が言うと説得力あるね…」

普通に原君が会話して来る。
そんな変わらない原君の態度に私も前みたいな態度で接する事が出来た。

「じゃ、俺行くわ」

花宮君が帰ろうとして思わず、え?と言葉が出る。そんな私を見て眉を顰めた。
「は?俺に用はないだろ?嫌いだもんな俺みたいな奴」
「き、嫌いじゃないよ…」
「はぁ?お前矛盾してるだろ。嫌になってマネージャー辞めたんじゃねえか」
「…確かに、花宮君のバスケに対する姿勢は嫌いだけど……、全てを嫌いにはなってなかった。山崎君も古橋君も原君も瀬戸君も他の部員の事も…別に嫌いじゃない!」
「みょうじ……」

山崎君の時の様に自分の思いを伝える。
「だから、…関わらないって言ったのは撤回させて、ほしい、です……」

途切れ途切れに言葉を繋げる。
私の気持ちは届いているだろうか…。

「やっべー。俺チョー感動しちった。なまえチャン抱きしめていい?」
原君が両手を広げながら近付く。
私は1歩後ずさった。
「みょうじに気安く触んじゃねー」
「何?ザキも混ざりたいって?しょうがないなー。俺のあとね」
「ちげーよ!バカ!」
「…古橋も混ざれば?」
「瀬戸、やめろ」

……騒がしい。

「ちっ。…面倒くさっ」
捨て台詞を吐いて花宮君は今度こそ帰ってしまった。
やっぱり都合の良い話だよねぇ………。深い溜め息が出る。
「なまえチャン大丈夫だよ。花宮は、ツンツンデレだから」
「うん。……ありがと」
「なまえチャンまじ可愛いー」
ぎゅっと原君に抱きしめられる。本当に抱きしめたよこの人。
「原ぁ!」
「……セクハラやめて下さい」
「なまえチャンからセクハラ発言聞く為なら何度だってやるよん」
「変態とは原君の為にある言葉だよね」
「もっと言って」
…駄目だこの人。

山崎君が私から原君を引き剥がそうと頑張ってる中、私はまた溜め息を吐いた。いや、マジで苦しい。

「いい加減にしろ原」
隙をついて古橋君が私の手を引いて原君から離した。
「……古橋君」
「みょうじさん…嫌いにならないでくれて…ありがとう」

あ、笑った。
久しぶりに見た古橋君の笑顔に嬉しくなって私も笑顔で頷いた。
「……後、俺はあの時の事は撤回しないから。」
「…………………、っ!?」
「なになに?あの事って?」
「あれ?古橋言ったの?」
「だから何を?」
「原は知らないの?」
「だから聞いてんじゃん」
「ちょ、お前ら2人を無視して勝手に話すんな!」
「ザキ知ってる?」
「知ってるも何も俺もあの時むぐっ……!」
その先を言わせまいと咄嗟に山崎君の口をつま先立ちになって塞いだ。
……って!あの時の事で気づくとは、瀬戸君もか!知らないのは原君だけ?
花宮君は絶対知ってる。100パー知ってる。
「むー!」
「あ、ごめんなさい山崎君っ」
苦しそうに私の手を軽く叩く山崎君に慌てて手をどかした。
「い、いや。悪ぃ」
「えー?俺だけ仲間はずれかよ。古橋教えてよ」
「ん。俺がみょうじさんに告白した事だ」
「え?」
「あらら。すんなり言っちゃったね」

……塞ぐのは古橋君の口もだった。

「マジで?えー?うわー全然ノーマークだったー。えー?ザキー?」
「うるせぇよお前」
何か凄い面白そうに山崎君にちょっかいを出してる原君。小学生か。
「…あの、古橋君。私、友達としてはす、好きだけど、異性として好きとかじゃ……」
「それじゃあ、今から異性として好きになってもらう様に努力する」
「い?!えっ」
「うわー、古橋が攻めてるー。レアだ」
「早速だがみょうじさん。クリスマスの予定はある?」
「え?あの、」
「ないなら一緒に」
「みんなで!遊ぼうぜ!!」
古橋君の言葉を遮って山崎君が割って入って来た。
「あ、いいじゃんソレ。面白そう」
「俺は寝たい」
「よしっ。原と瀬戸は参加な!後は花宮だな!」
「……。みょうじさんは?」
「私、も…皆で遊びたい、かなぁ?」
「そうか」
一応納得した感じで古橋君はそれ以上何も言わなかった。

し、心臓に悪い。

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