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□61:雑談
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「クリスマスが来るぞ」



「クリスマスが来るぞ」
「……それがどーした」
「大事な事なので2回言いました」

いつもの昼休み、すずちゃんと山崎君と他愛もない会話をしていると山崎君の友達のゲンマ君が真剣な顔で話し掛けてきた。
「皆、冬休み入ったら何すんの?」
「私は家族で旅行ー」
「何処?」
「沖縄!」
「イイね〜。みょうじさんは?」
「んー、ウィンターカップの試合を観に行くくらいかなぁ」
「俺達も行くんだよソレ」
「誰かの応援でもすんの?」
「いや、ただ観に行く」
「それぞれクリスマスまでは予定ある様なもんだな。リア充め」
「俺らは男だらけでカラオケにでも行くか」
「ボーリングもね」

カッチン君とミチ君も加わり溜息を吐いて項垂れる。
仲の良い友達とイベントを過ごすのもリア充だと思う。

「あ?カッチン彼女居るじゃねーか。何で男だらけで遊ぶんだよ?」
「………………」
「察して!ザキ察してあげて!」
「ああ、彼女居たら合コン行かねえよな」
「違うんだよザキ、こいつ合コンに参加したのがバレてフラれたんだよ」

「うわ……」

私とすずちゃんの声が同時に重なり合った。
それは流石に引くな。

「そこ!引かないで!反省してるからっ」
「そーそー。この世に女は何人居ると思ってんの?」
「35億」
「それ、男」
「あーもうテメェら散れっ。昼休み終わるから」

山崎君がシッシッと3人に向かって手で払うと予鈴が鳴る。

23日にウィンターカップの開会式の後、桐皇と誠凛の対戦が行われる。
それに間に合う様に行く事と緑間君を探してタオルを返そうと計画した。

……少し自意識過剰だが、山崎君に一緒に行くか誘われるかな?と思ったがそんな事はなかった。実際誘われたとしてもまだちょっと気まずいし…。
花宮君と古橋君にどの面下げて会えと。席替えしたので花宮君の隣ではなくなって話したりもしていない。
このままじゃダメだと考え直したものの現実はそう上手くいかない。
既に煮詰まってる。




***


朝。目覚ましが鳴る前に起きて身支度を整える。
バッグの中身を3回ほど確認して家を出た。
今日は、ウィンターカップ開会式の日。
途中寒くてコンビニで温かいコーヒーを買って飲みながら歩く。電車に揺られてる時に4回目の荷物確認。
緑間君のタオルが入った紙袋はちゃんとバッグの中だ。アイロンもかけたしバッチリだよ。何か差し入れを持って行こうか考えたが、いやいや図々しいわと思いナシにした。

目的地の会場に到着したので取り敢えず秀徳を待つ。会場のスタッフやスポーツ関係の記者やカメラマンや一般人が周りに沢山居て、高校のバスケの試合なのに注目度高いんだなぁと今更ながら思う。近くの耳に入ってきた会話で【キセキの世代】が集合するとか。
それも注目される一つなのだろう。
私は待ってる間、先日買った小説を読む為バッグから本を取り出ししおり部分から読み始めた。



***
キリのいい所で読むのを止めて本から目を離すと、いつの間にか色んな学校のバスケ部達が沢山居た。
小説に集中し過ぎてしまった…。慌てて本をしまい辺りを見回す。
オレンジ…オレンジ…。
居たっ!

「すみません!あの、秀徳の皆さんっ」
「ん?あー!みょうじさん!久しぶりっすねっ」

私に気付いた高尾君が笑顔で反応してくれた。
「おう。ハンバーガーは勿論全部食っただろうな?」
「……家族で美味しく頂きました」
「は?」
「すみません、ハンバーガー代お支払いします」
「いーよ別に。悩みが解決してんなら」
「一部解決しました。頑張ってます…。あの、緑間君は?」
「真ちゃんなら他のキセキの世代に会いに行ってますよ」
「そっか…」

プチ同窓会みたいな楽しいモノなんだろう。

「タオル返しに来たのか?」
「あ、はい。やっぱり悪いなと思って」
「謙虚だなー。そんなみょうじさんにコレをやろう」
大坪さんに紙袋を見せると木村さんがみかんをくれた。いつも何かしら持参してるから遠慮なく受け取れと促され有り難く受け取った。

「お!真ちゃん来た」
高尾君の視線の先に緑間君が歩いて来るのが見えた。
……何でハサミを手に持ってるんだ?
疑問に思いつつも開会式の時間も迫ってるので早くしよう。
「緑間君おはよう。タオル返しに来ました」
「……あげると言いましたよね?」
「結構ですっ、あ、いえ、…私の手元にあるとタンスの肥やしになるので緑間君が存分に使って下さい」
「ぶはっ!タンスの肥やしって!」
「……分かったのだよ」
ぶっきらぼうに紙袋を受け取ってくれた緑間君に胸を撫で下ろす。
「じゃあ、私はこれで」
「もー帰るんすか?」
「ううん、ちょっとだけ試合観てから帰るよ」
「誰の?」
「桐皇の、」
「は?!俺達じゃないんすかー。ショック〜」
「ちゃ、ちゃんと観るよ」
「何だぁ?俺達はついでか?あ?」
「宮地凄むな」
「時間があればウチの試合も観てくれ。大坪、そろそろ行くぞ」
「ああ。それじゃみょうじさん、また。」
「はい、試合頑張って下さい」

大坪さんが手を振り他の皆を引き連れる。高尾君も笑顔で手を振って私もそれに応える。宮地さん怖い。



オレンジの集団を見送った後、辺りを見回したが花宮君達らしき人達は見つけられなかった。

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