main

□57:蓋ーふたー 〜山崎side〜
1ページ/1ページ


みょうじと仲直りした。

別にケンカした訳じゃねーけど、関わらないと言われた瞬間胸んトコが痛くなった。針か何かで刺された様なそんな感じ。
傷付けたくないのに傷付けた。
笑っていて欲しいのに出来なくなった。


俺はみょうじが好きだ。

古橋が告白した日、1人で帰る筈のみょうじを危ない目に遭わない様にコッソリ守るつもりだった。
そんな俺に反して古橋は堂々とした態度で誘っていた。
…俺は臆病者だ。みょうじに拒否られるのが嫌で誘えもしない。なのに古橋が告白したのを見て焦って飛び出す。アイツがみょうじを好きだったなんてちっとも知らなかった。
「…悪い」
「気にするな。みょうじさんを困らせた俺が悪い」
彼女が走り去った方向から視線を動かさずに応える古橋はいつもの表情だが、きっと辛い気持ちなんだろう。
「ザキも彼女の事が好きなんだろ?」
「……ああ」
「そうか…。俺に遠慮するなよ」
そう言って歩き出した古橋を複雑な気持ちで見送った。

恋のライバルが友達で部活の仲間とか何の罰ゲームだよ。

理科室でみょうじと2人っきりにされ、さみしいと本音を言うみょうじが可愛いと思い抱きしめたくなった。そんな欲を理性で抑える。
今の俺には、また友達として仲良くしてくれるだけで良いんだ。またみょうじに隣で笑っていて欲しい。


「俺、みょうじと仲直りした」
部活後の更衣室でスタメンの皆が残ったタイミングで制服のネクタイを絞めながらそう告げた。
「……良かったな」
最初に古橋が口を開く。無表情の顔からは本当にそう思ってるのか良く分からない。俺は小さく、おぅと返事した。
「へー、なまえチャンたら優しいね。俺とも仲良くしてくれっかなぁ」
「お前がふざけた態度で接する限り無理だからな」
「えへぇ〜?」
「締まりの無い声出すんじゃねーよ」
原とやり取りしてる間に花宮が何も言わずに部室から出ようとした所で呼び止めた。
「何だよ…」
「みょうじにウィンターカップ観に行く事言ったら、アイツ桐皇の今吉さんに誘われたから行くかもしれないってよ」
「は?」
眉間にシワを寄せて不愉快な表情を見せる。何であんなに嫌ってるのか謎だ。花宮はそれ以上追及せずに舌打ちだけして出て行った。
「えーなまえチャン来んの?俺も行こっかなぁ。ザキ誘った?」
「誘ってねーし、みょうじからも一緒に行こうとか言われてないし」
「バッカだなぁそんなん男から誘うモンだろー。んじゃ、俺誘っちゃお」
鼻歌混じりに お先〜と手を振って部室を出て行く原にふざけた態度取るなともう一度言いたかったが既に姿はなかった。アイツ逃げ足はえー。
「ザキ」
「んあ?」
「瀬戸起こして出るぞ」
「お、おう。瀬戸!起きろ!帰るぞっ」
「んー」
…ったく。着替え済んだなら寝ないで帰れっつーの。
瀬戸を叩き起こして3人で部室を出て、正門前で2人と別れた。
メールの着信音が鳴りみょうじかな?と淡い期待を持つもカッチンからでガッカリする。メールの内容は【合コン行く人ー?】でイラッとした。
行かないと返信するとまたメールが来て【そっかーザキはみょうじさん一筋だもんねwガンバ!】 知ってて誘ってくる辺りナメてやがる。今すぐ殴りたい。
みょうじが好きだ。
でも想いは伝えない。
友達のままが合ってるから。




今は……トモダチで。




.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ