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□48:別れる
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林間学校からの連休明けの朝練後、山崎君と花宮君とで教室に向かう。
自分の席に着き鞄から教科書等を出して引き出しに入れようとしたら見覚えのないメモ用紙が入っていた。
手紙?
何だろうと思い読んでみる。
『昼休みピロティに来てほしい。』
……呼び出しだ。他に何も書かれてなくて用件のみなんて絶対呼び出しじゃないか。
さて、どうしたものか。
無視して事態が悪化しても嫌なので行こう。
1人決意を固めメモ用紙を教科書と一緒に引き出しに片付けた。



***

昼休みになり お弁当を一緒に食べるすずちゃんに先生に用事があるから先に食べててと告げてピロティに向かった。誰か知らないが相手は私を知ってるからすぐに分かるだろう。

「みょうじさん」
目的の場所に行くと女子に名前を呼ばれた。…3人か。
知らないコ達だな。
「えっと、何かな?」
「……あのさ、正直にこたえてほしいんだけど」
「うん」
「みょうじさんってザキと別れたの?」

「え」

予想外の質問に目が僅かに見開かれた。
「実は林間学校の登山で友達と話してるのが聞こえちゃって」
「バスケ部に好きな人いないのーとか」
「ザキが彼氏ならそんな話しないじゃん?だから別れたのかな〜って皆でウワサしてて」
皆ってどれだけ?てか、あの場に居たのか…。
「あー、そっか…」
「気になるから本人に聞こうと思って」
そんな人の色恋に気になるものなのか。女子高生って。
…でも、もうここまで来たら仕方ないか。そもそもフラグ回避の為だったしな。
「みょうじさん?」
「あ、ごめんなさい。……うんまぁ、そうだね。山崎君とは別れた、よ」
付き合ってもないけど、本当の事話しても面倒くさいので破局した事にしとこう。
「やっぱりかー」
「なんでなんで?」
「えっと、価値観の違い」
「どっちからフッたの?」
「えー、山崎君」
「マジで?!ザキにフラれたの?!」
「あー、はい」

女子高生凄い。ぐいぐい来る。
その後も同じ部で気まずくない?とかザキにフラれたの嫌じゃない?とか、アレコレと報道記者かってくらい聞かれたが無難に返事をしておいた。
彼女達も気がすんだのか、やっと落ち着いてくれた。

「じゃあさ、マネージャー辞めるの?」
「え?」
「いや、だってザキと別れたならマネージャーする意味なくない?」
「……それはそれ、これはこれかな。中途半端に辞めたくないし もうすぐウィンターカップ予選も始まるから」
「ふーん、そう」
何となく面白くなさそうな表情を見せる彼女達。
「…社会に出たらそんな勝手な理由で辞めてたら周りに迷惑かけるよ…」
「え?社会?」
思わず小声で出た言葉の意味が分からず彼女達は無意識な感じで数センチ前のめりになる。
「いや、何でもない。あの、悪いけどもういいかな?友達待たせてるし お弁当食べたい」
「お弁当?あ、うん」
「あなた達もまだ食べてないなら早くしないとお昼休み終わっちゃうよ」
それじゃ、と踵を返して教室まで小走りで歩く。
あー 女子の情報網凄いから放課後辺りには広まってるかな。それか明日辺りかなぁ。


教室に戻った時にすずちゃんに事情を説明したら謝られたが、嘘に付き合ってくれてありがとうとお礼をした。
山崎君には部活の時に話そう。





***
「そんな訳なので、勝手だけど今まで協力してくれてありがとうございました」
「マジかよ…。俺が振った事になったのか……」
「私が山崎君を振るなんて恐れ多いので」
「なんだそれ」
部活終了後、部室に戻ろうとする山崎君を呼び止めて話をした。
一緒に聞いていた原君も珍しく驚いていた。
「なまえチャン、ザキにフラれたなんて不名誉付いちゃってかわいそーに」
「うるせぇな お前は!」
「私はそんな事気にしない方だから平気」
「次は俺の彼女になっちゃう?ガチで」
「すずちゃんに反対されるからいいです」
「高橋さんの許可いるのか〜燃えるな〜」
「燃えカスにでもなってろ」
「それでね山崎君も明日もし聞かれたら、さっき言った通りに言って構わないから」
「あ……、わかった…」
「うん。じゃあ私後片付けしてくるね」
「おう」

これで少しは肩の荷がおりたかな。
嘘をつき続けるのはあまり得意じゃないから。

「他の隠し事は大丈夫なのにね…」

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