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□47:山頂到着
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キングスライムの話をして心が和んだのも束の間。
しばらくして山崎君から花宮君へ交代の時が来てしまった。

「なんだそのツラ」
「…別に」
怪訝な顔の花宮君に真顔で返事をする。
周りに1軍の他に2軍の部員も居て、追いつくの早いなと改めて思う。
季節的に寒い時期だが皆汗ビッショリであまり汗をかいてない楽をしている自分を見て申し訳なく思う。
せめて体調を気遣う事しか出来ない分
林間学校から戻ったら前以上にマネージャー業を頑張ろうと心に誓う。
「そろそろ山頂だ。行くぞ」
花宮君が私の前で無言でしゃがむ。何か変な感じ。
「失礼します…」
一言断りを入れて緊張しながら花宮君の背中に乗る。
そのまま何も会話する事もなく山頂まで走り続けた。



山道の拓けた場所に出た。山頂だ。やっと着いた。やっと解放された。
私達以外には誰も居らず、バスケ部が最初に登頂を果たした。
「あーー超疲れたー。脚が重い」
「すっげぇ筋肉パンパン」
「ここで寝たい」
皆その場に座り込んだり倒れ込んだり。本当にお疲れ様である。
スマホを何となく確認したが圏外の為またポケットにしまう。
すずちゃん、今どの辺だろ…。
他の生徒達が来るまで暫く待機するのか、すぐに下山するのか花宮君の指示を待つ事に。
花宮君は展望用のベンチに座って山頂からの景色を眺めていた。
少し遅れて残りの2軍が登頂したので労いの言葉をかけて回る。
最後に1軍メンバーの方へ向かう。

「お疲れ様でした」
「なまえチャンお疲れ〜。帰ったらマッサージして?」
「う…。ちょっと自信ない。勉強しとく」
「俺がちゃーんと指南してあげるよ」
「今すげえお前を殴りたい」
「ウゼーよザキ」
「テメェだよ!」
「お、落ち着いて?山崎君」
「………おう」
山崎君が困った様に目を逸らした。
どうしたんだろう。

「あれ?古橋君左脚のとこ怪我してる!」
「ん、ああ。多分枝か何かに当たったんだろうな。擦り傷だし大丈夫だ」
古橋君のふくらはぎ部分に確かに引っ掻き傷みたいな傷があった。
私は念の為常備している絆創膏をポケットから1枚出して古橋君に渡した。
「はい、バイ菌入るといけないから 貼っといた方が良いよ」
「……体育祭以来だな」
「え?…あ、そっかその時も絆創膏あげたよね」
「そうだな」
ついこの間なのに懐かしくなってフフッと笑いが溢れる。
「ちょっと2人の世界作んないでよ」
「そんなんじゃないって。ーって瀬戸君、こんな場所で寝ないで」
「う〜〜……」
いつの間にアイマスクを出したんだ。
「あー腹減った」
「俺も。花宮ー、この後どうすんの?戻る?待つ?」

「待つのも怠いから戻るか」
ベンチから立ち上がり此方へと来る。
瀬戸君を何とか起こして元来た道へと向かう。
「みょうじ」
「何?」
「お前此処に居ていいぜ。他の生徒達と一緒に下山しろ」
「え」
「俺達は、また走って下山するからよ」
「あー、そっか分かった。怪我とか気を付けてね」
「じゃあな」
「また後でねなまえチャン」
「ゆっくり下りて来いよ」
「うん」
また走って下りて行く皆を見えなくなるまで見送る。
とうとう見えなくなって1人残された私は展望用のベンチに座り、すずちゃん達が来るのを待つ事にした。


それから幾らか時間が過ぎてチラホラと生徒達が登頂して来た。
やっとすずちゃんを見つけて駆け寄る。
「すずちゃん、お疲れ様」
「お疲れー。ああもう超ダルい。どっかに座っていい?」
「もちろん」
展望用のベンチはすっかり他の生徒達に取られてしまっていたので他の場所を見つけそこに座り込んだ。

「はーやれやれ」
「怪我とかしてない?」
「大丈夫だよー。それにしても途中でザキ達走って戻って来てたし。凄いね〜」
「練習も兼ねてるからね」
「なまえちゃんも一緒に走って疲れたでしょ?」
「そうだね…」
まさかオンブされてましたとは言えない。
「こうやって置いて行くんだったらなまえちゃんは私達と一緒にしても良かったのに」
「や、やっぱり部員の体調とかも心配だし何かあったら私がフォローしないと」
「けなげだねー。彼氏出来たら尽くすタイプでしょ?」
「うーん」
「絶対そうだし」
すずちゃんが可愛く笑う。
「ぶっちゃけさ、バスケ部に好きな人居たりしないの?」
「いやいや、ないない」
「マジで?古橋君とか瀬戸君とか花宮君とか良物件じゃん。ときめいたりしないの?」
「イケメンだなーとか紳士だなーとか思うけど、ないよ。有り得ない」
「えー、なまえちゃん厳しいね」
「そういう訳じゃないけど、友達としてしか見れないって言うか…」

うん。ないない。恋愛感情なんて私には無理。
犯罪臭くてとてもじゃないけど範囲外だ。友達とか仲間って思うのも正直戸惑ってしまうから。

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