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□41:自由参加…?
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窓から聞こえる鳥の鳴き声とスマホのアラーム音で目が覚めた。

アラームを消す為スマホを手に取る。

「…………………………………げっ」

画面を見て思わず低い声がでた。
寝坊ではない。
昨夜、寝オチした時、スマホ画面は今吉さん宛のメール画面のままで
しばらく手に持っていたからなのだろう、デタラメな文字を打っていた。
それだけならまだいい。
不覚にも送信されてしまっていた。

【初めてのメッセージが暗号か?】


【解読出来へん。なんやねん。】


【おーい】


「う、わぁ…。やっちゃった……」

慌てて私は今吉さんに謝罪のメールを送った。

朝から少しブルーな気分で制服に手を伸ばす。



***

朝練を終えて教室に向かう途中
スマホが鳴った。
見てみると今吉さんからだ。

【お早うさん。寝オチはアカンで。】

ごもっともです……!

【はい。すみませんでした。】

返信、

「…今吉さん」

少し頭の上から聞こえた声に肩が跳ね 錆び付いたネジを回す様に後ろを振り返る。

「は、な宮くん…」

「お前、あの人と連絡しあってんのかよ」
「いや、スマホ持ちながら寝ちゃって今吉さんにデタラメな文章のメール送ってしまったから、謝罪文送っただけ…です」
「…………」


え、顔恐いんですけど。
てか無言やめて?

「…………」

「ひ、ひとのけーたいみるなんてさいてー」
「…………」

ねえ、無言やめて?

「ああ!背高いから自然とみえちゃったんだよね!それなら仕方ないかー!」
「…………」

だから、無言
「人の忠告無視してんじゃねぇよバァカ」

やっと喋ったかと思ったら
お馴染みのセリフを吐いて行ってしまった。

な、なんか浮気してしまった気分。

変な罪悪感を覚えながら花宮君と同じ方向へ進む。
またスマホが鳴ったけど、今は見る気がしなかった。



***

HRの時間。
1枚のプリントが配られた。



「冬の林間学校のお知らせ…。」

なんとまぁ、季節外れな。

「参加者は今週中に保護者の同意書を持って来てください」

先生は、そう言い終え教室から出て行った。
これ別に強制じゃないんだ。
何となく目を通していくと、1・2・3年合同らしい。

「ね〜 なまえちゃん!コレ参加する?」
「う〜ん、気乗りしないなぁ」
「私1年の時参加したけど楽しかったよー?」
「じゃあ、今年も参加するんだ?」
「もっちろん!来年も参加するつもり。ね、なまえちゃんも一緒に行こうよー」


BBQのお肉がめちゃウマだったと力説するすずちゃんの話を聞きながら、どうするか考えていた。

「…あ、でも冬休みにバスケの試合があるから練習あるし無理かも…」
そうだ。WCの予選が始まるし、バスケ部員は皆 練習で忙しいから参加はしないだろう。

「そっかー、それじゃ仕方ないね」
「ごめんね」
「いいよいいよ!気にしないで。
んじゃっ私部活行くね」
「うん、頑張ってね」
「なまえちゃんもマネ業頑張って!」


すずちゃんが教室から出て行くのを見送って私も部活に向かう為、さっきのプリントを鞄にしまう。

いつの間にか山崎君と花宮君の姿はなかった。
無意識にスマホを操作すると未読のままのメールを開く。
相手はやっぱり今吉さんで、

【ワシは気の利くコがタイプやで。】



…………は?

話の流れに乗ってない。
既読スルーでいいのだろうか?

返信に困る内容なので、スルーさせていただきます。
スマホも鞄の中に突っ込み急いで教室を出た。




部室でタオルを畳んでいると
原君と山崎君が中に入って来た。

「なまえチャンさ〜、林間学校行く?」
「え?行かないけど」
「なんで?」
「何でって…、部活の練習あるでしょ?」
「自由参加だから気にしなくていいっしょ」
「WC予選も近いし、第一 花宮君が許可しないと思うんだけど」
「花宮は参加するけど?」
「え、」

山崎君の一言に手が止まる。

「クラス委員長は、強制参加だからな」

わお、お気の毒。
「山崎君と原君は参加するの?」
「ミキちゃんに誘われたから行くよ」
誰だよ ミキちゃんって。

「おい、誰だよ。何かよ花宮が山ん中は練習にもなるからつって、1軍2軍参加しろってさ」

私と同じ突っ込みを入れた山崎君が答えてくれた。
1軍2軍も強制参加って、つまり……

「だからなまえチャンも流れ的に参加だねん♪」

…ですよねー。

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