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□40:僅かな不信感
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「ねえ、山崎君聞いてもいいかな?」
「?どーした?」
久しぶりにマジバに山崎君と2人で寄り、向かい合って座るとバニラシェイクを一口飲み 遠慮気味に口を開く。
山崎君はハンバーガーを食べながら視線を私に向ける。

「…ウチのバスケ部が、評判悪いって聞いたんだけ、ど」
「っ!」
少しだけ動揺の色を見せる山崎君に どうやら今吉さんの言葉は本当っぽいなと悟る。
「誰に聞いたの?」
「え、と、桐皇学園バスケ部の今吉さんに」
「今吉?いつの間に会ったんだよ」
「文化祭に来てたよ。花宮君に会いに」
「ふーん…」

再びハンバーガーを食べだす山崎君。
「あの、山崎君?」
「あ!なぁみょうじ!これ超美味いぜ!一口食べてみろよっ」
「え?いや、」
「ほらっ!」

半ば無理矢理に食べかけのハンバーガーを私の口元に押し当てる。
仕方ないので小さく口を開けかじる。
「な?美味いだろ?」
「……うん」
正直バンズの部分しかかじってない為、パンの味しかしないのだが、分かりやすく話を逸らす山崎君にこれ以上は聞くのやめようと思い 再びバニラシェイクに口をつけた。

その後は、他愛のない世間話をして店を出て駅まで向かった。

「じゃあ、山崎君また明日ね」
「おう」
ニカっと笑う彼を背にして帰りの電車に乗る。

揺れる車内で私は、スマホと睨めっこをしている。
一応登録した今吉さんのアドレスを見つめながらメールをしようか考えていた。
あの山崎君が言わないのだから他の部員に聞いても教えて貰えないだろう。
だったら今吉さんなら…。

「あの人に関わるな」

不意に花宮君の言葉が頭をよぎった。
私が今吉さんと連絡し合ったら
怒るだろうか?
いや、バレなきゃいいよね?
でも他校のバスケ部員と仲良くなるのってマズいのかな?
色々考えてると電車が揺れて、立っていた私はバランスを崩してしまい、その拍子にスマホを落としてしまった。

「あ」
下に落ちてそのまま前方にスライドしていく私のスマホは、誰かの靴に当たってしまった。

「すみません!」
私が拾うが先に靴の主に拾われるスマホを慌てて受け取ろうと近づく。
「おーワシの名前が載っとると思っとったらみょうじさんのスマホやったんかぁ」
「い、今吉さん⁈」
まさかの御本人登場である。
タイミング良いな。
「ん?このコが霧崎のマネージャーか?」
「せや。みょうじなまえちゃんや。」
「…どうも」
今吉さんの隣に立つ男の人に小さく会釈すると人の良さそうな笑顔を向けてきた。
「俺は今吉と同じ3年の諏佐佳典だ。宜しく」
「はい、」
「で、ワシに何か用か?」
「へ?」
「ワシのアドレス画面やったし」
「あー…まぁ」
スマホを今吉さんから受け取り
返事を濁しながらホーム画面に戻しポケットにしまう。
「自分トコのバスケ部について聞きたいんやろ?」
「っ!?いや、でも」
「図星かいな。まー教えてやらん事もないけど、折角やからメールせえへん?」
「メールですか?」
「そろそろワシら次で降りるし」
電車の速度が遅くなりアナウンスが流れる。
「….じゃあ、メールしますね」
「おー、そうしてくれ」
すると電車が止まり今吉さん達側のドアが開いた。
「行くぞ今吉」
「ほなみょうじさん待っとるで」
「はい」
「じゃあみょうじさん」
「はい、お疲れさまでした」
諏佐さんにも挨拶をして2人がホームに降りるのを見送る。
再び電車が動き出し姿が見えなくなるまで今吉さんと諏佐さんは此方を見ていた。…紳士か。

聞いてみたいが怖い。
でも、聞いてみたい。
怖いし不安だし悪口だったら非常に不愉快だし、でも自分の学校のバスケ部の評判も知りたい。

家に帰ってもずーっと悩みまくっていた。

結果、寝オチ。

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