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□32:責任感と羞恥心
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今日は丸一日、文化祭の準備の為 いつもと違う雰囲気が学校全体を包む。テスト期間中の時とこうも違うとは。
ウチのクラスは劇の練習は勿論 大道具 小道具 衣装 照明 音響とそれぞれの係である生徒達が集まって準備をしている。

「役者の衣装揃ったよー」
「最終チェックするから更衣室で着替えて来てくださーい」
衣装係の女子が配役の生徒に衣装を渡していく。
「みょうじさん はいコレ全部マジックテープだから」
「ありがとう」
渡された衣装は、薄ピンクの着物だ。ヒロイン役である私は制服と着物を着るので早く着替えられる様に帯や着物の合わせ部分がマジックテープで作ってもらった。
「なまえちゃん更衣室行こー」
すずちゃんと衣装の入った紙袋を抱えて一緒に更衣室へと向かった。


「それ可愛いー、なまえちゃん似合ってる!」
「うわ、すずちゃんもカッコいい…。写メ撮っちゃお」
沖田総司役の衣装とウィッグを着けた すずちゃんの姿に惚れそうになる。スマホをかざしてシャッターを数回押す。すずちゃんも役になりきってポーズをしてくれた。ありがとうございます。
他の役の女子達も混ざってしばらく撮影会を開催していると衣装係の女子が来て 早くしろと怒られてしまった。
やや注目を浴びつつ廊下をすずちゃん達と歩いていると原君と瀬戸君に会った。
「なまえチャンじゃん」
「瀬戸君、原君こんにちは」
「はい こんにちは。着物似合ってんね」
「ありがとう、」
「瀬戸〜、先に言うなよ。なまえチャン可愛いよ」
「あ、りがとう」
ヤバい恥ずかしい。
「原君チャラい」
「おわ!誰かと思ったら高橋さんじゃん。イケメンですね」
「それは どーも」
「2人のクラスは、やきそば屋さんだよね」
「そう、でも特にする事ないからブラブラしてんだよね」
「なまえチャンとこのクラス遊び行っていい?」
「花宮君に怒られちゃうかもよ」
「冷やかしなら他あたってねー、なまえちゃん早く戻ろう」
「あ、うん」
「じゃあ、なまえチャン 高橋さん またねん」
「はあ」
手を振る原君と瀬戸君と別れクラスに慌てて戻る。
すると少しずつ騒がしい声が聞こえてきた。
我がクラスの前に女子の人だかりが出来ていた。
「何だあれ」
すずちゃんが半ば呆れた様に発しながら近づき教室に入ると
土方歳三の衣装を見に纏い黒髪のポニーテールのウィッグを着けた花宮君が直ぐに視界入った。
うわ…、カッコいい。
普段の姿と違う花宮君に思わず息を呑む。
騒いでいる女子の気持ちが分かる。

「あ、高橋さんとみょうじさんも来た。おー高橋さんやべえ」
「みょうじさんもイイね」
「すず!花宮君と並んで!写メ!」
興奮気味の女子がすずちゃんを連れて行って花宮君の横に立たせて写メを撮りだす。
私も撮っちゃおうかな。
「みょうじ」
「あ山崎君、大道具お疲れさま」
「おう。…それ似合ってる」
「ありがとう…」
照れながら言うから、こっちまで顔が熱くなってしまう。
「ザキー、イチャつくなら後にしてー」
「イチャついてねー!」
大道具係の男子にからかわれつつ、山崎君は途中だった作業に戻った。
「みょうじさん最終チェックするから こっち来て〜!」
「はーい」
衣装係の女子の方へ向かい衣装のチェックをされる。
特に不備はなかったので直ぐにOKが出た。

また着替える為、教室を出る。
すずちゃんはまだチェックを受けている。
本番の早着替えちゃんと出来るかな。

「馬子にも衣装」
いきなり後ろからボソリと言われ振り返ると土方歳三姿の花宮君が居た。
「…爽やかに言う台詞じゃないよ」
「これでも誉めてるんだぜ?」
「ありがとうございます!」
「このままラストのシーンの練習する?」
「ここ廊下ですけど、」
「宣伝になるからいいんじゃない」
…ああ、早く更衣室着かないかな。
やや早歩きで花宮君との距離を離そうとするが彼には無意味みたいだ。脚長い自慢ですかっ。

「ふ…お前、可愛いな」
「な!?か、!な!」

「なんて言うわけねェだろ バァカ」
私を追い越して先を歩く花宮君。



将来ハゲてしまえ!

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