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□29:警報〜山崎side〜
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たまに俺の頭の中で警報が鳴る。
よく分からねぇ。

日曜日に行われた 福田総合学園との練習試合前にウォーミングアップしてる間 灰崎祥吾とかいう1年に絡まれるみょうじは心底迷惑そうな顔をしていた。
助けようと思ったが胸ん中がモヤモヤとして振り払おうと練習を再開させる。
集中しているとモヤモヤがなくなった。何となくホッとして横目でみょうじを見た。
未だ灰崎に絡まれている。
イラッとした。
助けようと2人に近付こうとしたら、福田総合の望月が灰崎を呼び 灰崎はダルそうにコート内に入って来た。
すれ違い様目が合えばバカにした様な笑みを浮かべる。ふざけんなよ てめぇ。
みょうじは花宮と何やら雑談している。
…またモヤモヤが沸き起こり 視線を逸せば練習試合開始の合図の笛が鳴る。

集中さえすれば大丈夫だ。
今回はラフプレーは無し。アイツに観せられる。


ーーーおいおい、マジかよ。
試合中それは起こった。

灰崎のヤローに俺のプレイスタイルをそっくりそのままヤラレテしまった。
結果は俺達の負け。
「ザキ最悪だな」
「嬉しそうに言うな」
原の冷やかしを一蹴してベンチに戻る。
タオルで汗を拭いドリンクを飲んで近くに立つみょうじを見上げると福田総合の選手達を険しい顔つきで見つめていた。
視線の先には灰崎が悪態を吐いてる姿が映る。
態度の悪い奴に嫌悪感を持っているのか?

もし俺達のラフプレーを観たらみょうじは嫌悪感を持ってしまうんだろうな…。
そう思ったら頭の中で小さく警報が鳴った。


***

部室で着替えを済ませそれぞれが帰る中、俺を除くスタメンだけが残っていた。
「最後に福田総合の奴等の見送りして帰るぞ」
花宮がそう言い、一緒に正門に向かった。
だが、体育館から何か声が聞こえ何事かと其方に足を向ける。

花宮の後から体育館に入れば、福田総合の主将の石田さんと望月と灰崎、それにみょうじが居た。
何故か石田さんに両肩を掴まれている。またイラッとした。
それに下はスカート 上はTシャツと明らかに着替え途中の格好だ。
花宮の呼びかけにハッキリしない態度のみょうじ。不安が過る。

この後、灰崎の言葉に耳を疑った。
奪う?みょうじを?俺から?怒りが込み上げてくる。
石田さんに止められ灰崎は体育館から出て行った。
古橋が理由をみょうじに聞く。
みょうじは困った様に目線を床に落とす。
警報が鳴る。
「ーーお、おそわれそうになって…、」
小さな声だったが、俺からしたら直ぐ近くで言ったかの様にハッキリと聞こえた。

警報が大きく鳴って、いつの間にか俺は体育館から飛び出していた。

「はいざきぃぃいいぃっ!!」

頭に血が上りあまり細かい事は覚えてないが、これだけは覚えている。

アイツの

みょうじの手が灰崎の胸ぐらを掴む俺の手に触れた事。

そして

「あ?アイツのオンナじゃねーの?」
「違うよ」

俺と自分は関係ないとキッパリ断言するみょうじの言葉。
何故か胸が痛んだ。


奴らが帰った後、微動だにしないみょうじを花宮が呼ぶ。
小さく反応して後ろを振り返り俺達1人1人と目を合わせて、儚げな笑顔を見せた。

俺の頭の中で警報が鳴り響く。

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