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□28:だから誰も争わないで
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「みょうじ?」
花宮君が私を呼ぶ。
「あの、えっと、」

どう説明しようか…。
「なまえセンパイの彼氏って誰?もしかしてアンタ?」
ニヤつきながら灰崎君が花宮君に詰め寄る。
「は?」
花宮君の眉がピクッと動く。
「なまえチャンの彼氏ならザキだけどー?」
原君が山崎君の肩を組みながら灰崎君に紹介した。

「へえ、アンタが」
「な、何だよ」
「何か〜、なまえセンパイ気に入っちゃったから 手ぇ出そうかなって思って?」
「はぁっ?!」
「オレ奪うの大好きだからよ」

挑戦的な言葉を続ける灰崎君を誰か止めて欲しい。
山崎君もそんな挑発に乗って怒りを露わにしている。
「灰崎やめろ、花宮すまない。みょうじさんを怖がらせてしまった。山崎…もすまなかった」
石田さんが深々と頭を下げ謝罪する。望月君も申し訳なさそうな顔をしている。
「……………」
花宮君は黙ったままだ。
「くっだらねぇ」
一言吐きすてると灰崎君は体育館から出て行ってしまった。
「あー、生意気な奴だな」
「…みょうじさんを怖がらせたって何かされたのか?」
灰崎君を見送る瀬戸君と私の心配をして事情を聞いてくる古橋君。

「…更衣室に突然入って来て、お、おそわれそうになって…」
最後の方は凄く小さな声で思わず掌を握りしめる。

「ザキ!!」

原君の声に俯いていた顔を上げると山崎君の姿がなかった。
「あの熱血バカ」
花宮君が舌打ちした後、外へと向かった。
「大丈夫だよん」
原君が私に対して言って瀬戸君と古橋君と出て行く。
石田さんと望月君も後を追う。
私も彼らの後を追って外に出る。

走った先に山崎君が灰崎君の胸ぐらを掴んでいた。花宮君が山崎君の肩に手を置きなだめている。

「灰崎てめぇっみょうじに謝れ!」
「ヒュー♪カッコいいね〜?」
「おい、手を出すなよ」
「花宮…だけど、」
「殴りたきゃ殴れよ。但し試合に出れねぇかもしんねえぞ?」
「てめっ、」
「灰崎やめるんだ!!」

一触即発だ…。
あまり騒いでると学校に来ている先生達に見つかってしまう。
「山崎君!私は大丈夫だから、 やめよう?」
灰崎君の胸ぐらを掴む山崎君の手に触れなだめる。
「みょうじ…けど、」
「ありがとう 私は大丈夫」
もう一度そう言うと納得したのか山崎君は手を離した。

「なまえセンパイやっさしい〜」
「灰崎君、私は誰の物でもないし残念だけど貴方の奪うって趣味には付き合ってあげられないから」
「あ?コイツのオンナじゃねーの?」
「違うよ」
真っ直ぐと灰崎君を見据えて否定した。
これ以上山崎君に迷惑はかけたくない。
「つまんねーの」
そう言うと灰崎君は正門に向かって歩き出した。
「みょうじさん また改めてお詫びする。花宮、俺達はもう帰るよ」
「ええ、そうして下さい」
「それじゃ」
石田さんと望月君も灰崎君の後を追って正門に向かって行った。

マイクロバスの走り去る音を聞きながら私は、正門の方をいつまでも見つめていた。
「みょうじ」
名前を呼ばれてピクリと身体が反応する。
振り返ると花宮君と目が合った。
「…本当に大丈夫なんだな?」
その後ろで心配そうな山崎君と珍しく無表情な原君とやっぱり何処か眠たそうな瀬戸君と色のない目の古橋君が私を見る。

「うん、平気」
私は少しだけ微笑み答えた。
私の事を気遣う花宮君は珍しい。

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