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□27:大嫌い
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花宮君と石田さんが挨拶を交わし
試合前の練習の間の事


「アンタ年上だったの?先輩として色々教えてくんね?それともオレが教えてやろうか?」
「なぁ連絡先教えて」
「この後遊び行かね?」
「なぁ、なまえせ〜んぱい」

…灰崎君が全く練習してくれません。

私に纏わりついて正直 作業の邪魔なんだけど。
石田さんが注意しても全然聞かないし。何しに来たの この人。
「おい 試合始めるぞ。」
スキンヘッドの望月君が呼ぶ。灰崎君は面倒くさそうに私から離れた。…助かった。
「良かったな?モテモテじゃねぇか」
「見てないで助けてよ」
「考えといてやる」
眉を顰めて花宮君を見る。
そういえば今から試合というのに花宮君は準備をしていない。
周りを確認してみると山崎君と原君はユニフォームに着替えていた。やっぱり山崎君出るんだ。
後は2軍の部員達がユニフォームに着替えている。古橋君と瀬戸君は準備をしていない。

「花宮君 試合出ないの?」
「ああ」
「 ? 何で?」
「今日は観察だ」
腕を組み福田総合学園の選手を眺める。
お手並み拝見って事なのか。


審判役の部員が笛を吹く。
目前で繰り広げられるプレーに思わず息を呑む。
霧崎はスタメンのみじゃないものの点を取っていく。
福田総合は…灰崎君は山崎君と全く同じプレーでシュートをした事に目を疑った。
何これ…。

これは本当に高校生のバスケの試合なのだろうか?現実離れしている。
他の人達もプロ並に上手いが灰崎君の比ではない。

試合はあっという間に終了してしまった。
結果としては霧崎は負けたものの花宮君は不敵な笑みを浮かべていた。
チラリと福田総合の選手達を見る。

「ったくよぉ、あんまオレの足引っ張んじゃねーよバカ共が」
…え。
確かに耳に聞こえてきたのは、灰崎君の罵声。
先輩相手にバカって。

態度悪すぎである。

「みょうじ、ドリンクの補充を」
「あ、はいっ」
花宮君の指示に私は急いで部室に向かった。


***


とうとう練習試合が終わり後片付けに取り掛かる。

「今日はありがとう。花宮」
「こちらこそ」
石田さんと花宮君の会話を聞きつつモップ掛けをする。
不意に灰崎君と目が合ったが思いっきり逸らしてしまった。怖いし。また話しかけられても嫌だし。
霧崎の部員達が部室に戻る中、福田総合の人達は体育館の更衣室に入って行く。
今日は居残り練習する人もなく早く帰れそう。私も着替える為 女子更衣室に入った。


制服のスカートのホックを留めて
上着に手を掛けた時、ドアの開く音がして動きを止めた。

「よぉ」

目を見開いた。

「は、灰崎君」
何故、ここに。
「男子更衣室は、アッチだよ?」
「知ってる」
ドアを閉めて鍵を掛ける音がした。
「っ、な、に?」
「なまえセンパイ冷たいからぁ、コミニュケーション?」
ニヤニヤしながら一歩ずつ距離を縮めて来る灰崎君。
身の危険を感じ私は後ずさるが直ぐに壁に阻まれてしまった。
私の目の前まで近づいて来た灰崎君は両手を私の顔の両側に伸ばし挟み込む形で壁に手を置く。

「やめて」
「どーしようかなぁ、」
「私 つ、付き合ってる人居るからっ」
「…へえ?バスケ部?」
「そ、う。だから、ね?」
彼氏が居ると分かれば止めてくれるんじゃないかと思い 灰崎君にそう告げると、喉を鳴らし笑いだした。
「オレさぁ人から物奪うの大好きなんだよね だからなまえセンパイの事 その彼氏から奪ってやろうか?」
「な…っ!」
強引に顎を掴まれ上に向かせられる。
振り払おうにも灰崎君の身体はビクともしない。
ヤバいヤバい、助けを呼ばないと。
「〜っ、いい加減にしてっ!離れて!」
「い、って」
私の足が灰崎君の脛に当たり、隙をついて彼から離れた。
「イッテェな」
灰崎君の表情が変わり怖くて堪らない。
「ふざけんなよ、犯すぞ」

彼の言葉から逃れる様に私はドアの鍵を開けて外に飛び出した。
「うわっと、」
「みょうじさん?」
たたらを踏んで飛び込んだ先は、石田さんの胸板で名前を呼んだのは望月君だった。
「大丈夫?」
「あ、は、はい」
優しい言葉にさっきまでの恐怖が一気に解け出す。…助かった。
「あーあ、邪魔が入っちまった」
悪びれる事なく灰崎君が更衣室から出て来る。
「灰崎?お前…」
石田さんが何かを察して私を見る。
「みょうじさん?!灰崎に何か酷い事でもされたのか?」
「あ、大丈夫です。まだ何も」
「本当か?良かった…」
安堵した表情を浮かべる石田さん。だが、直ぐに灰崎君を睨む。
「灰崎」
「何もねぇって言ってんだろ」
この態度本当に腹が立つ。

「何を騒いでるんだ?」

花宮君達が体育館に入って来た。
…どうしよう。

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