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□24:力なら君にもらった
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「青団勝ってるね。このまま優勝狙えそう」
校舎に貼られている団ごとの点数を見て すずちゃんが嬉しげに話す。青団には有力な生徒が多数居るのだろう。ツイている。

「棒倒し始まるよ」

グラウンドを見れば物凄い光景が広がっている。
男子全員が上半身裸だ。黄色い声援が飛び交う。
お相撲さんみたいなあの人の胸触ってみたいと呟けば、すずちゃんに痴女扱いされてしまった。

正直引き締まった身体は飽きる程見てきて居るので新鮮なのだ。

それぞれの棒の周りに男子が集合する。
女子のほとんどが写真を撮りたがっていたが撮影禁止の為叶わない。ここぞとばかりに目に焼き付けておくのだろう。

パァンッ
ピストルの合図で一斉に男子が動き出す。
1.2.3年生が纏めて争うのでそれぞれの学年と団を応援しなければ。暇があればバスケ部の1年生も応援しよう。

「すご….」
あまりの迫力に息を呑む。
激し過ぎて砂埃が舞う。
棒に登る人を必死に引きずり落としていく。
「あ!ザキ!ザキが登ったよ!」
すずちゃんのテンションも上がって私も山崎君の方を見る。
すると敵の白団に引っ張られ地面に落ちてしまった。
怪我をしてないか心配になる。
だが、めげずに人の山に突っ込んで行く山崎君。熱い。
花宮君の姿はよく見えない。

わあ!っと歓声が大きくなった。
見ると古橋君の居る赤団が棒を倒した様だ。
相手は原君と瀬戸君のクラスだった。
他の所も決着が着いた所がある様でその場に座りまだ争っている団の応援に回っていた。

山崎君、花宮君の所ももうすぐ決着が着きそうだ。

「花宮君だ!」
他の女子の声が色めき立つ。
山崎君のサポートで花宮君が棒に登っていた。何か意外である。
周りの皆から花宮君コールが鳴り響く。
あ、もうすぐ倒れる…。

棒が傾きを増し その隙をつく様に青団が攻め込む。
「倒れた!」
その寸前、花宮君は巻き込まれない内に棒から降り立つ。
山崎君は棒と一緒に倒れちゃったけど。
「やったー!!」
すずちゃんが私にハイタッチを求めてきたので私もそれに応えた。
あまりに凄くて声に出して応援しなかったや。


次々に男子がテントに帰って来て女子から激励される。
山崎君の姿を見つけ声をかける。
「山崎君お疲れさま。怪我してない?」
「サンキュー!落ちたけど大丈夫だぜ」
背中を見たが砂がついてるだけで何処も怪我はしてなかった。良かった。安堵して彼の背中の砂を払ってあげた。

花宮君も戻って来たので声をかけたかったが女子の集団に阻まれてしまったので落ち着いたら声をかけよう。


***

部活対抗リレーが始まる為、花宮君と山崎君と入場ゲートに移動する。途中から古橋君、瀬戸君、原君と合流した。

「古橋君、棒倒し勝ったのおめでとう」
「ああ、ありがとう」
「あーあ。赤団に負けたの悔しかった〜。相手が古橋だから特に」
「原、あの時お前がふざけるからだ」
ふざけたのか原君。不真面目だな。
前を歩く古橋君の手に赤い何かを見つけた。
よく見ると血だった。
「古橋君、手に血が」
「これか?棒倒しの時にちょっとな。既に固まってるから問題ない」
擦りむいたのか手の甲には赤い擦り傷が出来ていた。
私はポケットの中をまさぐる。
…あった!体育祭が始まる前に実は準備して入れておいた絆創膏を取り出し古橋君に差し出した。
「一応貼っといた方がいいよ」
「….ありがとう」
私から絆創膏を受け取ると それを手の甲に貼る。
役に立って何よりだ。

「さあ、最後の種目だ。お前ら気を抜くなよ」
花宮君の言葉にそれぞれ頷く。

私は渡されたプラカードを掲げた。

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