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□23:私の手を取らないで
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すずちゃんと山崎君の声だけが私の耳に入って来た。
やっぱり走るのは苦手だ。
一生懸命 脚を腕を身体を動かす。
結局 追い抜かす事は出来なかったが2位という結果に終わった。


応援団の応援合戦をテントの席から眺める。お腹空いてきた。
もうすぐお昼ご飯だと想いを馳せる。
前半最後の競技は障害物走 すずちゃんの参加種目だ。

「応援してるね」
「ありがとー 行ってくるね」
手を振り合って、すずちゃんは入場ゲートに向かった。
応援団の応援合戦が終了して次の障害物走の準備を係りの人達が始める。
音楽と共に出場選手の皆が入場し出す。途端、女子の声援が大きくなった。 原君が原因だった。

男女混合での障害物走は結構 接戦だ。すずちゃんの姿を固唾を飲んで見守る。
最後の障害物は借り物競争で地面に置かれた紙を裏返した すずちゃんはキョロキョロしている。何が書いてあったんだろう?

急に周りがざわついた。その途端
私の片手が誰かに掴まれ上に持ち上げられる。
「なまえチャン」
「原君?」
すずちゃんの応援に夢中で原君が
近づいて来ていた事に気が付かなかった。
「おいで」
「は、え、え?」
訳が分からぬまま原君に立たされ手首を掴まれたまま走り出す。
「ちょ、原君」
「走りながら喋ると舌噛んじゃうよん」
ニッと笑う原君に言葉を飲み込み黙って走る。
声援と悲鳴が聞こえる中 1着でゴールした。原君は持ってた紙を係りの人に手渡す。早く手離してくんないかな。
「青団 原一哉君、【ちょっかい出したい人】の お題クリアでーす」
マイクから流れた言葉に目を見開く。どういう事ー?!と少しばかしどよめく。
「駄目だよ 原君勘違いされたら困るよ」
「大丈夫じゃない?」
説得力ありませんが…。

「青団 高橋寿々さん、【友達の恋人】の お題クリアでーす」

名前に反応して振り返ると すずちゃんの隣に山崎君が並んでた。
「すずちゃん2位おめでとう」
「ありがとー。原君 なまえちゃん困らせないでよ」
私の腕を引っ張り原君から離す。
「だって、ちょっかい出したいのは本当だし」
「コラッ」
「って」
山崎君が原君の背後に立ち頭を叩いた。
「みょうじで遊ぶんじゃねーよ」
「ヒデーなザキ〜」
戯れる2人を応援席の方から見てる生徒達は、修羅場だ。ケンカしてる。って囁いてる。
早く列に並んで下さ〜いと委員の人に注意され1位2位と並んで座った。
「お昼教室で食べよー」
「うん」
終わったらご飯だ。


昼食時、クラスの女子にさっきの借り物競争での事を聞かれたが
すずちゃんや山崎君が、あれは原のジョークだ。とフォローしてくれて一応 収束した。色々迷惑かけてすみません。原君め。

後半の競技が始まった。

「二人三脚に参加する生徒は速やかに入場ゲートにお集まり下さい。繰り返します…」
アナウンスが流れ私の胸が高鳴る。
いよいよ来てしまった…。
小さく深呼吸して椅子から立ち上がる。
「行こうか?みょうじさん」
ニコリと笑いかける花宮君に若干引きつつ一緒に入場ゲートに向かった。
「…さて、期待してるぜ?」
「ま、任せて」
私の強がりも彼にはバレバレの様で嘲笑われた。


「次!並んで下さい」

委員の合図のもとスタート地点に花宮君と立つ。
足はしっかり紐で固定した。
ウチのクラスは何とか1位をキープしていた。失敗は許されない。

「お待たせ!」
バトンが回って来て花宮君がそれを受け取った。
「行くよみょうじさん」
「うんっ、せーの」
私の掛け声で一歩踏み出す。
何とか最初の出だしは上手くいった。
私はギュッと花宮君の腰の辺りの服を強く握り締めた。


転ぶ事なくアンカーにバトンを回して1位でゴールした。
良かった…。
これで後は、部活対抗リレーを無事にこなせばいい。

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