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□22:体育祭
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10月最初の日曜日 秋晴れの空の中 霧崎第一高等学校の体育祭は開催された。
クラス別にテントの中に自分の椅子を置いて座る。
開会式の合図を前に体操服のズボンのポケットからハチマキを取り出した。
山崎 弘 と書かれた所を見て裏返して着けようかと考える。
「みょうじさん着けられる?私、手鏡持ってるよー」
話しかけて来た女子の頭にはカチューシャの様にハチマキが巻かれており良く見ると別の学年の男子の名前が書かれてあった。と、年下…。
ありがとう大丈夫だよと告げて私もハチマキを巻く。
山崎君の名前部分は、後頭部に隠れた。ふとハチマキを着けて一つの疑問が浮かび すずちゃんに話しかける。
「すずちゃんすずちゃん」
「ん?」
「カップルはハチマキ交換って言ってたけど違う団の場合は?」
「何かー、お互いのハチマキの端っこ部分を切り取って縫い付けて名前を書くんだって」
「凝ってるねえ」
周りを見回すとチラホラとハチマキの端っこの色が違う生徒が居る。これこそ青春だ。


開会式も滞りなく進み、競技が始まった。
大玉転がしの競技の時そういえばと古橋君を探す。
赤いハチマキを着けた彼を見つけた。心の中で応援する。
どんな時でも表情動かないな。
大玉は赤団1位白団2位青団3位に終わった。青団の応援忘れてた…。

学年別対抗リレーの順番が来る為入場ゲートに移動する。
今は長縄の真っ最中だ。
山崎君は縄を回していた。
「あう、」
競技を見ながら歩いていた為前方の何かにぶつかってしまった。
長身の背中に見覚えがある。
「瀬戸君」
「何だみょうじさんか」
「ごめんね、ぶつかって」
「んー別に…」
瀬戸君は相変わらず眠そうな目をしている。髪はオールバックではない。
「次のリレー走れる?髪型」
「あー、順番回って来たらセットするよ」
ん、とポケットからワックスを取り出して見せる。
肩にかけてるハチマキの色は青だ。一緒だったのか。
「あ、長縄終わっちゃった」
いつの間にか山崎君の出番は終わってしまっていた。
入場ゲートに到着して学年別クラス別に並ぶ。緊張してきた。
「リレー頑張ろうね!」
すずちゃんの声に頷くしか出来ない。バトン落としたらどうしようとか転んだらどうしようとか悪い事ばかり考えてしまう。
男子から先に走る為に入場後、第一走者がスタート地点に並ぶ。
パァンとピストルが鳴ると一斉に走り出す。応援の声が辺りを支配する。
我がクラスのアンカーは背の順なので山崎君だ。その前は花宮君。他のクラスも必然的に瀬戸君、古橋君、原君になる。
瀬戸君と原君は同じクラスみたいで同じ列に並んでた。瀬戸君がワックスを髪に撫でつける。
先に原君が走り出し続いて花宮君も走り出した。

「キャ〜!!はなみやくーん!!」
「花宮君がんばってー!!」
「花宮センパーイ!!」
「原くーん!!ファイト〜!!」
「かずやー!!」

一気に声援の声が大きくなる。
何これ凄い。
花宮君が前を走る原君を追い越して山崎君にバトンを渡した。
瀬戸君、古橋君もアンカー同士が競争し合う。
瀬戸君はやっ 古橋君走るの苦手っぽい。

「や、山崎君頑張って!」
私も声を張り上げて応援する。
「ザキ行けー!」
「彼女にカッコイイ姿見せてやれー!」
そんな声援に一睨み効かせる山崎君。
「〜〜っ、せっとぉぉおおぉ!!」
山崎君が叫びラストスパートをかけた。
後ろを振り返り瀬戸君もスピードを上げだした。

並んだ!

また周りが一気に盛り上がり
その中ゴールテープが切られピストルが鳴り響く。
「どっち?!」
そんな声が聞こえドキドキしながら結果を待った。

「判定の結果ーー」
放送委員の声がマイクを通して響き渡る。
思わず掌を握りしめた。

「1位 2年2組、2位 2年3組、3位 2年1組、青 青 赤の順でした」

ワッと男子が山崎君を取り囲む。
ウチのクラスが1位になったのだ。
「やったね!なまえちゃん!」
「うん!山崎君 凄い」
クラスの男子に取り囲まれ笑顔を見せる山崎君。その一歩引いた所からその様子を笑みを浮かべ眺めている花宮君。多分、良くやったじゃねえかヤマ とでも思ってるのかな?それか、当たり前の結果だバァカ だったり。
真顔になった花宮君と目が合った。心読まれた…!

「女子も頑張れよー」
クラスの男子から声が上がり いよいよ私達の出番だ。
とうとうスタートのピストルが鳴った。もうすぐ自分の出番だ。

「次の人!」
呼ばれてスタート地点に立つ。
ヤバい、心臓がうるさい。
「みょうじさん!」
ゆっくり走り出しながら走って来た彼女からバトンを受け取り 全速力で走り出す。
私の横を別の女子が追い越した。
「なまえちゃんがんばってー!!」
「みょうじ!」

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