main

□21:練習練習!
1ページ/1ページ

朝から雨が降っていた。
教室の窓から空を眺めた。
外での体育は無理な為 今日は体育館で練習らしい。
「リレーしたかったなぁ」
「すずちゃん走るのすきなんだね」
「運動好きだし、陸上部だしね」
何度か彼女の部活風景を目にした事がある。本当に楽しそうに練習に励むすずちゃんはキラキラして見えた。
「次体育館だし、早く行こー」
体操服の入ったバッグを持ち廊下に出た。
今日は二人三脚の練習しなくて済みそうだな。


体育館の更衣室で着替えを済ませ準備運動をする。
長縄の競技に出る生徒が体育館の真ん中に集まりだす。
山崎君も長縄に参加した。
競技練習出来ない生徒は他の競技の手伝いか見学だ。
私も手伝いしようかなぁ。

「何ぼーっとしてるのみょうじさん。練習するよ」
「へ?」
花宮君が話しかけてきた。
「二人三脚の練習は外じゃなくても出来るから」
…わーお。
「じゃあ、なまえちゃん頑張ってね!」
「うん」
すずちゃんに見送られ花宮君の後をついていく。
舞台近くに二人三脚のメンバーが集まりペアを組む。
私も花宮君と練習を始めた。
お互いの足を紐で結んで体育館の周りをゆっくり走りだす。

「お前…」
隣の花宮君の口調が変わった。
「チビだよな。走りにくい」
「い、今さら?」
出たよ。嫌味が。
「そんなの分かりきってた事でしょ、文句言わないでよ」
「はいはい…」
何なの?その顔やめて 腹立つから。
眉間に皺を寄せながら練習に励む私を誰か褒めて。


***


部室でタオルを畳んでいると古橋君が入って来た。
「みょうじさん 替えのタオルをくれないか?」
「あ、足りなかった?ごめんね 何枚いるの?」
「俺の分だけだから」
「はい どうぞ」
「ありがとう」
私の手からタオルを受け取ると肩にかけて額の汗を拭う。
再びタオルを畳み始めるが古橋君は出て行かない。チラリと目線だけ彼の方に動かせば目が合った。
「みょうじさんは、」
「え?」
「花宮と二人三脚に出るらしいね」
「え、あ、うん。」
いきなりの体育祭の話題に一瞬わたついてしまった。
彼と世間話的な事は初めてだから。
「調子どう?」
「毎回嫌味言われながら頑張ってるよ」
「そうか。」

少しの沈黙が流れる。
「古橋君は何に出るの?」
耐え切れずに私から話題を提供する。古橋君は無表情のままだ。
「大玉転がしだ」
「へー…頑張ってね」
「ああ」

「…………」

…終わった!話題終わった!
話が続かない…!
彼の扱いに悩む。
すると一歩二歩近づいて来る古橋君が目の前で立ち止まり私を見下ろす。
「……何かな?」
「少しみょうじさんに聞きたい事があるんだが…」
「はい?」
何故か空気が重々しい。
私は唾を飲み込んだ。

「……や
「あっれー?古橋ここに居たの?」
原君が部室に顔を覗かせる。
「ああ。タオルを貰いに来た」
「そ。花宮が呼んでたよん」
「分かった。今行く」
じゃあねなまえチャンと原君が手を振り戻って行く。
古橋君も部室を出る為に踵を返した。
「あの、古橋君 聞きたい事って?」
先程の続きが気になって彼を呼び止めた。
「また今度にするよ」
そう言って出て行ってしまった。
何だろうか?
気にはなるが取り敢えず畳み途中のタオルに意識を向けた。

部活終了後の帰り道、山崎君と2人通学路を歩く。雨は止んでいた。
原君は先に帰った。女の子と遊びにでも行ったのだろう。
「体育祭の練習どーよ?」
「うーん、まあまあかな」
「リレーの練習バトン落としてたな。本番頼むぜ」
「頑張る」
先日、リレーの練習中タイミングが合わずバトンを落としてしまった事を指摘される。プレッシャーかけないで。

「山崎君も棒倒しの時ケガしない様にね。練習見てたら皆凄い気迫で吃驚した」
「アレなー、結構熱はいるんだよな。」
練習であんな感じなら本番は、もっと凄そう。
「みょうじも二人三脚は頑張れよ?花宮の足引っ張るとこえーぞ」
「死ぬ気で引っ張らない様にするつもりだから」
絶対に。

そういえばと花宮君と組んでる時の事を思い出し、隣の山崎君の身体を見つめる。
「どーした?」
山崎君が不思議そうに私を見る。

私は自然な動作で彼の横腹を摘む。
「っ?!な、ちょ、みょうじ?!」
「やっぱり山崎君も鍛えられてるね。花宮君と同じ」
無駄のない彼のウエストは余分な肉がない。羨ましい。
「おまっ!男の身体を勝手に触んな!」
「あ、ごめんね。いきなり」
パッと手を離し謝った。
「免疫ねーんだから俺は…」
「女の子に免疫なくて良いよ山崎君は」
原君みたいなチャラ男になったら嫌だし。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ